NPO法人「移住者と連帯する全国ネットワーク」(移住連)は2026年8月28日、参議院議員会館とオンラインで「永住の厳格化にNO!」と題する院内集会を開催する。出入国在留管理庁が8月4日から意見募集を始めた「永住許可に関するガイドライン」と「永住者の在留資格取消しに関するガイドライン」の改定案に対し、当事者や支援団体の懸念を訴える内容だ。
永住制度の見直しを巡っては、「税金を一度滞納しただけで即座に永住権を失う」「収入が日本人平均を下回れば、現在の永住者も取消しになる」といった不安も広がっている。しかし、公表された政府案を読むと、新たに永住許可を申請する人の審査基準と、すでに永住者である人の在留資格取消しは別の制度である。また、自治体職員などからの通報が、そのまま即時取消しを意味するわけでもない。
新人記者ナルカ


8月28日の院内集会、概要
- 名称:「永住の厳格化にNO!」院内集会
- 日時:2026年8月28日、正午から午後1時
- 会場:参議院議員会館とオンライン
- 主催:NPO法人 移住者と連帯する全国ネットワーク
- 主なテーマ:永住許可ガイドライン案、永住者の在留資格取消しガイドライン案
主催者は、永住者取消し制度が当事者の生活基盤を不安定にすることや、許可要件の厳格化が長年日本で暮らしてきた外国人に過度な負担を課すことを懸念している。集会は、パブリックコメントの期限を前に、当事者の声を国会議員や行政に伝える目的で開かれる。
政府案は2種類、対象も効果も異なる
| 政府案 | 主な対象 | 制度上の意味 |
|---|---|---|
| 永住許可に関するガイドライン改定案 | これから永住許可を申請する人 | 素行、生計、公的義務、日本語能力など、許可審査で考慮する基準を示す |
| 永住者の在留資格取消しに関するガイドライン案 | すでに永住者の在留資格を持つ人 | 改正入管法に基づく新たな取消事由について、調査・判断の考え方を示す |
この2つを混同すると、「新規の許可要件を満たさなくなったら、既存の永住者も自動的に取消しになる」という誤解につながる。政府案では、新規申請時の審査と、取得後の取消しは根拠条文も判断過程も異なる。
永住許可ガイドライン案で何が変わるのか
永住許可は、法律上の要件に加え、出入国在留管理庁のガイドラインに基づいて審査される。改定案は、国益適合要件の考慮事項をより具体化し、安定した生活基盤、公的義務の履行、日本語能力などを審査で確認する方向を示している。
ただし、パブリックコメント段階の案であり、意見募集後に内容が修正される可能性がある。現時点で確定した最終運用として断定してはならない。
収入基準を巡る注意点
新規申請者の生計能力をどのように評価するかは重要な論点である。収入だけでなく、世帯構成、扶養関係、資産、就労の継続性など、個別事情をどこまで考慮するかが問われる。
一方、現在の永住者の所得が日本人の平均を下回ったことだけを理由に、直ちに在留資格を取り消すという内容ではない。失業、病気、出産、介護などによって収入が変動することは日本人にも外国人にもあり、許可審査と取消しを一括して論じるべきではない。
日本語能力をどう評価するか
日本語能力の確認は、地域生活や行政手続き、就労の安定に関係する一方、試験資格だけで実際の生活能力を測れるのかという課題がある。高齢者、障害のある人、日本で育った家族、長期就労者など、多様な事情にどこまで配慮するかが焦点となる。
永住者取消しの新制度とは
2024年に成立した改正入管法では、永住者が入管法上の義務を守らない場合や、税・社会保険料を故意に納付しない場合、一定の犯罪で拘禁刑に処せられた場合などを、新たな取消事由とする仕組みが盛り込まれた。施行は2027年4月が予定されている。
制度の目的について政府は、公的義務を適正に履行する人との公平性を確保し、永住許可制度への信頼を維持するためと説明している。これに対し支援団体などは、「故意」の認定が広がれば、生活困窮や制度理解不足まで処分対象になりかねないと懸念する。
単純な滞納と「故意に納付しない」は同じではない
税金や社会保険料が未納になった事実だけで、直ちに取消しになるわけではない。政府資料は、支払能力があるにもかかわらず意図的に納付しない場合を念頭に置き、本人の経済状況、納付に向けた行動、行政からの案内や督促への対応などを個別に確認するとしている。
病気や失業で支払いが困難になった場合、分割納付や猶予などの制度を利用し、行政窓口と相談することが重要になる。行政側にも、やさしい日本語や多言語で制度と救済手続きを周知し、単なる理解不足を故意と扱わない運用が求められる。
自治体からの通報は「即時取消し」ではない
改正制度では、国や地方公共団体の職員が職務上、取消事由に該当する可能性を把握した場合に、出入国在留管理庁へ情報を提供する仕組みが設けられる。しかし、通報は調査の端緒であり、それだけで永住者資格が失われるものではない。
入管当局は、本人から事情を聴き、資料を確認したうえで、取消しの必要性と相当性を個別に判断する。本人に意見を述べる機会がないまま自治体窓口で即時に取消しが確定する、という制度ではない。
取消し以外の在留資格変更も想定
取消事由に該当する場合でも、生活状況や家族関係などを踏まえ、永住者を取り消したうえで「定住者」など別の在留資格へ変更することが相当なケースも想定されている。制度の運用では、違反内容、悪質性、日本での在留歴、家族への影響などをどう評価するかが重要となる。
主催者の懸念と政府説明を比較
| 論点 | 主催者・支援側の懸念 | 政府案・説明 |
|---|---|---|
| 生活の安定 | 長年日本で暮らす人の地位が不安定になり、家族生活にも影響する | 悪質な義務違反などに対象を限り、個別事情を考慮する |
| 税・社会保険料 | 困窮や制度理解不足まで「故意」と判断されるおそれ | 支払能力や経緯、納付に向けた対応を確認して判断する |
| 行政の通報 | 外国人住民と自治体窓口との信頼関係が損なわれる | 通報は調査の端緒であり、取消しは入管が個別に判断する |
| 新規許可要件 | 所得・日本語要件が過度な障壁になる可能性 | 永住者として安定した生活と社会参加を確認する必要がある |
主催者の懸念は、将来の行政運用が厳格化し過ぎる可能性に向けられている。一方、政府案は、すべての滞納や生活上の変化を機械的に処分対象とする説明ではない。重要なのは、ガイドラインの文言だけでなく、施行後の判断基準、本人への説明、救済手続き、処分事例が透明に公表されるかである。
パブリックコメントは9月4日午前0時まで
出入国在留管理庁は、2つのガイドライン案についてe-Govで意見を募集している。意見募集の締切はいずれも2026年9月4日午前0時。案件番号は、永住許可ガイドライン案が「315000140」、永住者取消しガイドライン案が「315000141」である。
意見を提出する場合は、単に賛否だけを書くのではなく、どの条項・表現が問題なのか、どのような誤認や不利益が起こり得るのか、代替案は何かを具体的に示すと、制度検討の材料になりやすい。
制度を巡る賛成・反対・中立の視点
厳格化を支持する視点
永住者は在留期間の更新がなく、活動内容にも原則として制限がない。安定した地位を認める以上、納税や社会保険料などの公的義務を守り、重大な犯罪に関与しないことを求めるのは公平だという考え方である。
厳格化に反対する視点
永住者には、日本で生まれ育った子どもや日本人家族を持つ人、長年働いて地域を支えてきた人もいる。行政義務の不履行を在留資格取消しに結び付けることは、処分が過重になり、生活基盤や家族の権利を損なうおそれがあるという考え方だ。
運用の透明性を重視する中立的視点
制度目的の是非に加え、「故意」「相当性」「個別事情」を誰がどの資料で判断するかを明確にする必要がある。処分前の聴取、弁明、審査請求や司法審査へのアクセス、多言語案内、統計と事例の公表が制度への信頼を左右する。
クロ助とナルカの視点






編集部まとめ
- 集会:移住連は2026年8月28日、永住許可・取消しガイドライン案に反対する院内集会を開催する。
- 制度の区別:新たな永住許可申請の審査基準と、すでに永住者である人の在留資格取消しは別制度である。
- 取消しの判断:税・社会保険料の単純な未納や自治体からの通報だけで即時取消しになるのではなく、故意性や個別事情を入管が調査する。
- 今後の焦点:故意や相当性の判断、困窮者への配慮、聴取・救済手続き、運用事例の透明性が問われる。
- 意見募集:2つの政府案へのパブリックコメントは2026年9月4日午前0時まで受け付けられる。
出典
- NPO法人 移住者と連帯する全国ネットワーク「8/28『永住の厳格化にNO!』院内集会」
- e-Gov「永住許可に関するガイドライン改定案」意見募集
- e-Gov「永住者の在留資格取消しに関するガイドライン案」意見募集
- 出入国在留管理庁「永住者の在留資格の適正化について」
- 出入国在留管理庁「永住者の在留資格の取消し等に関するQ&A」
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