厚生労働省と出入国在留管理庁は2026年10月23日、駐日ベトナム大使館などと連携した在日ベトナム人向けの支援案内を公式Xに投稿した。技能実習の相談窓口、元実習生の自主的な帰国、旅券の手続きなどを日本語とベトナム語のチラシで知らせている。
注目されるのは、出国命令によって帰国した場合の上陸拒否期間を「5年から1年」とする説明だ。ただし、出頭だけで誰にでも適用されるわけではない。国籍を限定した新しい制度なのか、帰国後にすぐ戻れるのか。案内の内容と法律上の条件を整理する。
新人記者ナルカ


今回の案内で分かること
| 公式Xでの周知 | 2026年10月23日 |
|---|---|
| 連携する機関 | 出入国在留管理庁、厚生労働省、外国人技能実習機構(OTIT)、駐日ベトナム大使館 |
| 主な案内 | 技能実習の相談、出国命令制度、元技能実習生の旅券手続支援 |
| 「1年」の意味 | チラシが案内する出国命令による出国後の上陸拒否期間。「1年だけ短縮」という意味ではない |
| 制度の対象 | 法律上の要件を満たす外国人。出国命令制度自体にベトナム国籍への限定はない |
実習の相談と、帰国に向けた手続きを案内
共同チラシは、実習先で暴行やハラスメントを受けたり、重大な法令・契約違反があったりする場合の相談先を示す。やむを得ない事情があれば実習先を変更できるとし、実習を中断している人についてもOTITへの相談を案内している。
ベトナム語の電話番号は0120-250-168。チラシ記載の受付時間は月~金曜11時~19時、土曜9時~17時となっている。
帰国する元実習生に対しては、ベトナム大使館・総領事館による臨時旅券の迅速な発給も案内する。オンライン申請に加えて必要書類の持参が必要で、旅券を失った場合などは書類が異なる。旅券支援の欄には、入管に収容中の人はこの支援を受けられないとの注意書きがある。
自主出頭だけでは決まらない チラシが示す5つの要件
不法残留となった元技能実習生向けの案内では、「不法滞在者ゼロプラン」の下で摘発を強化していると説明したうえで、自ら入管へ出頭するよう促している。出国命令を利用すれば、収容されずに帰国できるとしているが、裏面には次の要件が示されている。
- 早く帰国する意思を持ち、自ら地方入管に出頭したこと
- 不法残留以外の退去強制事由に当たらないこと
- 窃盗など一定の罪で拘禁刑に処せられたものでないこと
- 過去に日本から退去強制されたり、出国命令を受けて出国したりしていないこと
- 速やかに日本を出国することが確実と見込まれること
これは、今回のチラシが自主出頭する人向けに説明している条件である。入管法第24条の3には、違反調査の開始後でも、入国審査官の所定の通知を受ける前に速やかな出国の意思を表明した人を対象とする別の類型もある。その類型では、再来日の目的が短期滞在である場合、同法第5条により上陸拒否期間は5年となる。どの手続きでも一律に1年になるとはいえない。
ベトナム人向けの案内と、国籍を限定しない制度
今回の周知と旅券支援は、ベトナム人を対象としている。一方、出国命令の対象を定める入管法第24条の3に、ベトナム国籍だけを対象とする規定はない。ベトナム人向けの案内を見て、出国命令そのものが同国籍の人に限る新たな特例と受け取るのは正確ではない。
また、チラシが示す1年は、出国命令によって出国した日から数える上陸拒否期間である。満了後の来日を保証するものではなく、改めて上陸条件の審査を受ける。入管法第7条は、旅券や必要な査証の有効性、日本で行う活動などを審査するよう定めている。






令和6年の失踪者の59.4% 不法残留者数とは別の数字
宮城労働局が公開する仙台出入国在留管理局の資料では、2024年(令和6年)の技能実習生の失踪者は6,510人、うちベトナム人は3,865人で59.4%だった。資料上はいずれも速報値で、ベトナム人の人数は前年の5,481人から29.5%減っている。
この失踪者数は、監理団体などからOTITに行方不明の届出があった人の集計である。その後に所在が確認された人も含み、現在の不法残留者数や、ベトナム人全体に占める違反者の割合を表した数字ではない。
よくある疑問
出国命令の上陸拒否期間1年は、ベトナム人だけの制度ですか。
国籍をベトナムに限定した制度ではありません。今回のチラシはベトナム人向けですが、出国命令の対象は入管法に定められています。
入管に自ら出頭すれば、必ず収容されずに帰国できますか。
出頭だけで決まるものではありません。チラシは、不法残留以外の退去強制事由がないこと、過去の退去歴がないことなどの要件も示しています。
上陸拒否期間の1年が過ぎれば、必ず日本に戻れますか。
必ず戻れるという意味ではありません。期間の経過とは別に、有効な旅券や必要な査証、活動内容など、上陸の条件について審査を受けます。
みんなの反応
これを読んで恐怖を感じました。
– 入管に収容されずに帰国することが可能
– 日本に入れない期間が「5年」から「1年」に短縮
– その他諸々の支援(取締りでなく支援)
ちゃんと取り締まるんじゃなかったでしたっけ? https://t.co/Rhu6M4sWKW— ニホンモニター (@nihon_monitor) October 23, 2026
オーバーステイ優遇じゃなくて早めに出頭したらすく帰国させてやるぞッていう最後の慈悲ぞ
意訳「手伝うからさっさと帰れ」 https://t.co/dHj9QhxSwt pic.twitter.com/A35NIqrIKc— かんごむ (@kangomusubsub) October 23, 2026
お困りなら帰国するサポートをするべきでは? https://t.co/bndhJgbLvx— Naniwanokazu🏴 (@Naniwanokazu1) October 23, 2026
編集部まとめ
今回確認できたのは、実習上の相談、出国命令、旅券手続をまとめたベトナム人向けの周知である。出国命令は法律上の条件を満たす人の帰国手続であり、出頭者全員の収容免除や、1年後の再来日を一律に保証するものではない。
編集部としては、国内で暮らす人の安心と制度への信頼のため、政府には帰国の実績や適用条件を分かりやすく示してほしい。同時に、実習先の違法行為への相談と、不法残留からの帰国手続は、それぞれの目的に沿って説明する必要があると考える。
出典
- 厚生労働省掲載・関係機関共同チラシ「お困りのベトナム人の皆様へ」(日本語面1~2ページ)
- 厚生労働省公式X「お困りのベトナム人の皆さまへ」2026年10月23日
- 出入国在留管理庁公式X・支援案内 2026年10月23日
- e-Gov法令検索「出入国管理及び難民認定法」第5条、第7条、第24条の3(法令APIの本文も照合)
- 宮城労働局掲載・仙台出入国在留管理局「技能実習制度の現状と課題について」(資料内7~8、13ページ)
- 外国人技能実習機構「母国語相談(メール・電話)」
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