出入国在留管理庁が公表した速報値によると、2025年に「失踪」として届け出られた技能実習生は3950人だった。2024年の6510人から2560人、率にして約39.3%減少した。過去最多だった2023年の9753人と比べると5803人少なく、2年間で約59.5%減少したことになる。
技能実習生の受入れ規模が拡大する一方、失踪者数と技能実習生数に対する割合はともに低下した。2025年の失踪割合は0.6%で、2023年の1.9%から3分の1以下になっている。ただし、「失踪者数」は公表時点で現在も全員が行方不明であることを意味しない。統計の定義と限界を理解し、不法残留者数や犯罪統計と混同しないことが重要である。
新人記者ナルカ


2025年の技能実習生失踪者数は3950人
- 2025年失踪者数:3950人(速報値)
- 2024年:6510人
- 2023年:9753人
- 2025年の前年比:2560人減、約39.3%減
- 2023年との比較:5803人減、約59.5%減
- 技能実習生数に対する2025年の割合:0.6%
2023年までは失踪者数が増加し、制度の人権問題や不法就労との関係が大きく取り上げられた。しかし、2024年と2025年は連続して減少した。人数だけでなく、母数に対する割合も下がっており、単に技能実習生の総数が減ったためとは説明できない。
5年間の推移
| 年 | 技能実習生数 | 失踪者数 | 割合 |
|---|---|---|---|
| 2021年 | ― | 7167人 | ― |
| 2022年 | 46万3188人 | 9006人 | 1.9% |
| 2023年 | 50万9373人 | 9753人 | 1.9% |
| 2024年 | 55万2936人 | 6510人 | 1.2% |
| 2025年 | 61万4517人 | 3950人 | 0.6% |
入管庁資料における「技能実習生数」は、単純な年末時点の在留者数とは異なる。前年末の在留技能実習生に、当年中に新たに入国した人や在留資格変更許可を受けた人を加えた対象者数を使っている。異なる統計の在留者数を分母にして独自計算すると、公式の割合と一致しない可能性がある。
「失踪者数」は現在の行方不明者数ではない
この統計は、監理団体や実習実施者などから提出された「技能実習実施困難時届出書」のうち、行方不明を理由とする届出を集計したものとされる。届け出られた後に所在が判明した人、帰国した人、別の在留状態になった人が含まれる可能性があり、公表された3950人全員が現在も行方不明という意味ではない。
同様に、失踪した全員が犯罪を行った、あるいは不法残留を続けていると断定することもできない。失踪者数、不法残留者数、不法就労の検挙人員、刑法犯の検挙人員は、それぞれ集計対象と期間が異なる別の統計である。
一方、実習先から離れた後、正規の在留資格や就労資格を持たないまま働けば、不法残留や資格外活動、不法就労の問題につながる。失踪後の所在確認と生活相談、悪質な仲介者や雇用主への取り締まりは引き続き必要である。
国籍別ではベトナムが最多
公表資料を引用した関係機関などの集計では、2025年の国籍別失踪者数はベトナムが2593人で最多となり、全体の約65.6%を占めた。ベトナム人技能実習生の受入れ規模が大きいことも考慮する必要があるが、全体に占める割合は高い。
ベトナム人の失踪者数も2023年の5481人、2024年の3865人、2025年の2593人へ減少している。人数だけを見れば改善している一方、送出機関への高額な費用、来日前の借金、求人条件と実際の手取りの差など、失踪につながり得る構造的問題が解消したとまでは断定できない。
なぜ2年連続で減少したのか
統計だけから特定の原因を断定することはできない。ただし、政府と外国人技能実習機構は、監理団体や実習実施者への指導、失踪率が高い送出機関への対応、本人負担費用の確認、適正な賃金支払い、相談窓口の周知などを進めてきた。
また、特定技能制度の拡大により、技能実習を終えた外国人が正規の在留資格で転職・就労を継続する経路が広がったことも、環境変化の一つとして考えられる。もっとも、失踪者数の減少と特定技能への移行拡大の因果関係は、今回の集計だけでは確認できない。
2027年4月には技能実習制度に代わる育成就労制度が始まる。新制度では、人材育成と人材確保を目的として明記し、一定条件の下で本人意向による転籍を認める。実習先を原則変更できなかったことが失踪の一因と指摘されてきただけに、転籍制度が失踪抑止につながるかが焦点となる。
3950人を「少ない」と評価してよいのか
割合が0.6%まで低下したことは改善を示す一つの指標である。しかし、1年間に3950人が予定された実習を継続できず、行方不明として届け出られた事実は軽視できない。1日平均に単純換算すると10人を超える規模である。
受入れ企業にとっては、人材不足、採用費用の損失、取引先への影響が生じる。本人側も、在留資格を失い、違法な低賃金労働や搾取、犯罪被害に巻き込まれる危険が高まる。数字の改善を評価しながら、失踪を生む職場や送出しの構造を個別に検証する必要がある。
失踪防止で確認すべき項目
- 来日前に送出機関や仲介者へ支払った費用と借金額
- 基本給だけでなく控除後の手取り額の事前説明
- 残業時間、寮費、光熱費、食費などの条件
- 母国語で利用できる相談窓口
- 暴力、ハラスメント、旅券・在留カード保管の有無
- 実習継続が困難になった場合の転籍・帰国支援
- SNSで勧誘する違法な仕事や仲介者への注意喚起
賛成・反対・中立の視点
対策の成果を評価する視点
受入れ人数が増える中で失踪者数と失踪割合が同時に低下したことは、監理強化や相談体制、特定技能への移行経路の整備が一定の効果を上げた可能性を示す。増加局面の数字だけで制度全体を評価するのは適切ではない。
依然として制度に問題があるとする視点
3950人という絶対数は大きく、ベトナム国籍への集中も続いている。借金、転籍制限、低賃金、労働条件の相違といった問題が残る以上、減少だけを理由に制度が正常化したと判断するのは早い。
統計の継続検証を求める視点
速報値は後日修正される可能性がある。育成就労制度への移行後も同じ定義で統計を接続できるのか、失踪後に所在が判明した人数、原因、国籍別・職種別の割合を継続して公表する必要がある。
クロ助とナルカの視点












編集部まとめ
- 最新値:2025年の技能実習生失踪者数は3950人、失踪割合は0.6%だった。
- 減少幅:2024年比で約39.3%減、2023年比で約59.5%減となった。
- 統計の注意:失踪者数は行方不明を理由とする届出の集計で、現在の行方不明者数や犯罪者数とは一致しない。
- 残る課題:送出費用、借金、労働条件、相談体制、失踪後の不法就労リスクへの対策が必要である。
- 今後:2027年4月に始まる育成就労制度で、転籍ルールや監理強化が失踪抑止につながるか注視される。
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