東京都町田市で、新たなイスラム教礼拝施設「Machida Central Mosque(町田中央モスク)」の整備に向け、一般社団法人「東京イスラーム文化アンド教育センター(Tokyo Islamic Culture and Education Center)」が寄付を募っている。
2026年8月、X上では「町田市木曽東3丁目にモスクを建てるため、約8500万円の寄付を募っている」「バングラデシュ人主体の団体」とする投稿が拡散した。
しかし、団体の公式サイトを確認すると、2026年8月17日時点の計画はさらに大きい。
公式サイトでは、土地取得費8000万円、礼拝室・教育文化施設・図書館・コミュニティセンター・ハラールショップ・駐車場・管理区域などの建設費1億2000万円を合わせ、総事業費は約2億円とされている。
第1段階の土地取得については8000万円を目標とし、現在500万円を調達済み。期限は2026年12月としている。単純計算では、土地取得だけでも残り約7500万円が必要となる。
一方、X投稿で「バングラデシュ人主体」と説明されている点について、団体公式サイトでは運営メンバーの国籍構成を明示しておらず、現時点で公式情報として確認することはできない。
今回の計画は、信教の自由が保障される日本で宗教施設を建設する事業であり、モスクという理由だけで行政が建設を拒否できるものではない。一方、宗教施設であっても、用途地域、建築基準、消防、近隣説明、交通・駐車場など日本の法令・条例に従う必要がある。
新人記者ナルカ


町田市で「Machida Central Mosque」計画
計画を進めているのは、一般社団法人東京イスラーム文化アンド教育センター。
団体公式サイトでは「Machida Central Mosque」の名称で、町田市に恒久的なイスラム教礼拝施設を整備する計画を公開している。
団体によると、町田市ではイスラム教徒のコミュニティが拡大する一方、近隣に十分なモスクがないことから、礼拝と交流の拠点を設置することを目指している。
2023年から小規模礼拝所を運営
団体公式サイトによると、活動は2023年9月29日に小規模な礼拝所「Musalla」を開設したことから始まった。
当初は限られた時間帯の礼拝から始め、2024年2月には金曜礼拝と毎日の夜間礼拝、同年12月1日からは1日5回の礼拝を行うようになったとしている。
つまり、今回の計画は全く新しい団体が突然施設を建設するものではなく、既に町田市で礼拝活動を続けてきた団体が恒久施設の取得・整備を進めるものと説明されている。
総事業費は約2億円
団体公式サイトに掲載された「Land Acquisition Project for Machida Central Mosque」では、事業費を次のように示している。
| 段階 | 内容 | 目標額 | 期限 |
|---|---|---|---|
| 第1段階 | 土地取得 | 8000万円 | 2026年12月 |
| 第2段階 | 礼拝・教育・文化施設等の建設 | 1億2000万円 | 2028年12月 |
| 総額 | 土地+施設整備 | 約2億円 | ― |
土地取得資金については、公式サイト上で500万円を調達済みとしている。
したがって、8月17日時点の表示が最新であれば、第1段階では残り約7500万円が必要となる。
SNSの「約8500万円」と公式数字に差
X投稿では「約8500万円必要」と説明されている。
しかし、現在の公式サイトでは土地取得費を8000万円、総事業費を約2億円としている。
投稿時点の古い募集資料や別の計算に基づく可能性もあるが、現在確認できる公式数字とは一致していない。
そのため、本記事では「8500万円のモスク」と断定せず、2026年8月17日時点で団体が公開している最新の約2億円計画を基準とする。
建設予定施設は礼拝所だけではない
公式計画によると、第2段階で想定される施設は単なる礼拝室だけではない。
- 礼拝ホール
- 教育施設
- 文化施設
- 図書館
- コミュニティセンター
- ハラールショップ
- 駐車場
- 管理区域
複数の機能を持つ宗教・文化複合施設を想定していることが分かる。
地域住民にとっては、建物そのものだけでなく、通常時・金曜礼拝・ラマダン・宗教行事時の利用人数、車両数、利用時間などが生活環境に直接関係する。
「葬儀サービス」は検討中
団体公式サイトのサービス案内では、礼拝・教育以外にも複数の活動が掲載されている。
- 子ども・成人向けコーラン学習
- イスラム教・文化学習
- イスラム式婚姻(Nikah)に関するサービス
- 慈善・福祉活動
- 家族・学生等への相談支援
- 日本の法律・文化・社会規範に関する教育
- 言語・文化交流
さらに「Funeral Service(葬儀サービス)」については「Proposed, Under Consideration(提案・検討中)」と記載されている。
ただし、これは将来の葬儀関連サービスを検討していることを示すものであり、町田市内で土葬墓地を設置する計画があることを意味しない。
葬儀、遺体安置、洗浄、埋葬、墓地運営はそれぞれ別の法的論点であり、現時点で土葬墓地計画まで確認できる資料はない。
団体は「日本法・社会規範の教育」も掲げる
注目すべきなのは、団体自身が公式サービスとして、日本の法律、文化、社会規範をコミュニティに教育し、調和と法令遵守を図ることを掲げている点である。
また、言語・文化交流を通じて地域社会への統合を進めるとしている。
日本国内で宗教施設を長期運営する以上、こうした法令遵守方針が実際の施設運営、交通、騒音、近隣対応でも具体化されるかが重要となる。
ハディースを使った寄付呼び掛け
SNSで拡散された募集資料では、イスラム教の伝承であるハディースから、モスク建設への寄付を宗教的功徳として位置付ける趣旨の言葉が紹介されている。
イスラム教では、モスク建設や維持への寄進は宗教的な善行として重視される。
一方、現在確認できる団体公式トップページでは同じハディースの文言そのものは確認できなかった。
したがって、当該引用はSNS上の募集資料に掲載された内容として扱い、現在の公式ウェブページに掲載中とまでは断定しない。
「バングラデシュ人主体」は公式確認できず
X投稿では、運営団体について「バングラデシュ人主体」と説明している。
しかし、団体公式サイトの紹介ページでは、代表者・理事・参加者の国籍構成を確認できる情報は掲載されていない。
公式サイトや関連SNSにはベンガル語での発信も確認できるが、それだけで団体全体を「バングラデシュ人主体」と断定するのは慎重であるべきだ。
今後、法人登記や団体自身の説明などで構成が確認できれば、追加情報として更新できる。
町田市木曽東3丁目という情報はSNS由来
今回のX投稿では建設予定地を「東京都町田市木曽東3丁目」としている。
一方、今回確認した団体公式トップページでは、新モスク用地の具体的な地番・住所までは掲載されていない。
そのため、木曽東3丁目という所在地については現時点ではSNS投稿を情報源とする。
実際の土地取得が完了しているのか、契約前の候補地なのか、具体的な地番はどこかについても、公式サイトからは確認できない。
まだ「建設確定」とは限らない
公式計画は現在、第1段階を「土地取得」として寄付を募っている。
つまり、少なくとも公式サイトの表現上は、土地取得資金を集めている段階である。
土地を取得した後も、建築計画、設計、用途地域、建築確認、必要に応じた開発手続、消防・安全対策などを経る必要がある。
したがって、「町田市木曽東3丁目に2億円の大型モスク建設が既に決定し、工事が始まる」と断定するのは早い。
町田市では建築前に用途地域を確認
町田市は、用途地域ごとに建築できる建物の用途や規模が建築基準法で制限されると案内している。
モスクも宗教施設という建築物である以上、予定地の用途地域、建ぺい率、容積率、高さ、防火・準防火地域などの規制を受ける。
信教の自由があるから自由にどこへでも建設できるという制度ではない。
規模によっては町田市との事前協議が必要
町田市には「中高層建築物等に関する指導要綱」がある。
市によると、次のいずれかに該当する建築物では、建築確認申請前に町田市との事前協議が必要となる。
- 高さ10メートルを超える建築物(一戸建て住宅を除く)
- 9戸以上の集合住宅等
- 延べ面積1000平方メートルを超える建築物
今回のモスクについて建物の高さや延べ面積はまだ公表されていないため、この要綱の対象になるかは現時点では判断できない。
町田市には「建築紛争予防条例」もある
町田市は、中高層建築物等を巡る近隣トラブルを防ぐため、「町田市中高層建築物等の建築に係る紛争の予防と調整に関する条例」を運用している。
対象となる計画では、標識設置や近隣関係住民への説明、報告などの手続きが発生する場合がある。
これはモスクだけを対象にした制度ではなく、一定規模の建築物一般に適用されるルールである。
モスクだから住民同意が必要というわけではない
一方、近隣住民が反対すれば宗教施設を建設できない、という仕組みでもない。
建築計画は原則として、建築基準法、都市計画法、条例などの法令に適合しているかによって判断される。
宗教の種類や外国人が利用するという理由だけで、行政が建設を拒否することは信教の自由との関係から問題となる。
重要なのは「イスラム教だから反対」ではなく、通常時・行事時の利用人数、駐車場、道路混雑、騒音、消防、防災、ごみ、夜間利用など具体的な生活環境上の論点を確認することである。
地域住民が確認すべきポイント
今回の計画が具体化する場合、地域住民や行政が確認すべき事項は多い。
- 正式な建設予定地・地番
- 土地取得が完了しているか
- 建物の延べ床面積・階数・高さ
- 通常時の利用者数
- 金曜礼拝時の最大利用者数
- ラマダン・祝祭時の最大利用人数
- 駐車場の収容台数
- 路上駐車への対応
- 送迎車両の動線
- 屋外スピーカー・アザーンの運用予定
- 早朝・夜間の利用時間
- 飲食を伴う行事のごみ処理
- 防犯・消防・避難計画
- 苦情窓口と責任者
- 将来的な葬儀サービスの具体的内容
こうした情報が早期に開示されれば、宗教そのものを巡る感情的対立ではなく、地域施設としての運営条件を具体的に議論できる。
約2億円の寄付事業、資金の透明性も重要
今回の計画は、総額約2億円という大規模な寄付プロジェクトである。
団体公式サイトでは、GMOあおぞらネット銀行の一般社団法人名義口座やオンライン寄付サービスを公開している。
宗教団体や一般社団法人が寄付を募ること自体は違法ではない。
一方、大規模な寄付を集める以上、調達額、土地取得額、建設費、海外からの寄付を含む資金源、完成後の維持費などを継続的に公開することは、地域や寄付者からの信頼確保にもつながる。
藤沢・川越など各地でモスク建設が論点に
JP News Focusでは、神奈川県藤沢市、埼玉県川越市、岐阜県美濃加茂市など、各地のモスク計画・施設問題を継続的に取り上げている。
藤沢市では、建設計画を巡って住民説明や交通、宗教活動の範囲などが論点となった。
川越市では、パキスタン人コミュニティが利用していた建物について、市が都市計画法上必要な許可を受けていないとして是正指導を行い、駐日パキスタン大使館も日本法遵守を呼び掛ける事態となった。
こうした事例からも、新しい宗教施設では「完成してから問題に対応する」のではなく、計画段階から行政・運営者・地域住民が具体的な条件を共有することが重要である。
モスク建設そのものと法令違反を混同しない
日本では憲法20条で信教の自由が保障されている。
モスクを建設すること、宗教的寄付を集めること、イスラム教徒が礼拝すること自体は違法行為ではない。
一方、宗教施設であっても、日本の都市計画、建築、消防、道路交通、騒音などのルールから免除されるわけではない。
行政は特定宗教を優遇・排除するのではなく、同じ建築・土地利用ルールを公平に適用する必要がある。
クロ助とナルカの視点


















編集部まとめ
- 計画主体:一般社団法人東京イスラーム文化アンド教育センター。
- 名称:「Machida Central Mosque」の恒久施設整備を計画。
- 総事業費:公式サイトでは約2億円。
- 第1段階:土地取得8000万円、2026年12月までを目標。
- 調達済み:公式サイト表示では500万円。
- 第2段階:礼拝ホール、教育文化施設、図書館、コミュニティセンター、ハラールショップ、駐車場等に1億2000万円。
- SNS情報との差:「約8500万円必要」という投稿と現在の公式計画は一致しない。
- 所在地:木曽東3丁目という情報はSNS由来で、公式サイトでは具体的予定地を確認できない。
- 国籍:「バングラデシュ人主体」はSNS投稿の説明で、公式サイトでは構成国籍を明示していない。
- 葬儀:Funeral Serviceは「検討中」。土葬墓地計画が確認されたわけではない。
- 法令:モスクも用途地域、建築基準、消防、町田市条例などの適用を受ける。
- 今後:土地取得、建物規模、利用人数、駐車場、夜間利用、住民説明等の具体化を注視する必要がある。
出典
- Tokyo Islamic Culture and Education Center「Machida Central Mosque / Land Acquisition Project」
- Tokyo Islamic Culture and Education Center「Services」
- X投稿「町田市に新モスク」2026年8月
- 町田市「用途地域」
- 町田市「中高層建築物等に関する指導要綱」
- 町田市「中高層建築物等の建築に係る紛争の予防と調整に関する条例」
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