出入国在留管理庁は2026年9月16日、就労系在留資格「医療」の対象に「歯科技工士」と「言語聴覚士」を加える省令改正案について、パブリックコメントを開始した。意見募集は10月16日午前0時までで、実務上は10月15日中の提出が必要となる。
改正案は、高齢化で増える地域医療需要への対応を目的としている。施行されれば、日本の法令に基づく資格を持つ外国人が、医療機関、薬局、歯科技工所などに招へいされ、歯科技工士または言語聴覚士として働く場合に「医療」の在留資格を利用できるようになる。公布・施行は2026年11月が予定されている。
新人記者ナルカ


改正案の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象の在留資格 | 医療 |
| 追加する職種 | 歯科技工士、言語聴覚士 |
| 受け入れ先 | 医療機関、薬局、その他の医療サービス施設、歯科技工所など |
| 報酬要件 | 日本人が従事する場合と同等額以上 |
| 意見募集 | 2026年9月16日~10月16日午前0時 |
| 公布・施行予定 | 2026年11月 |
現在の「医療」は、医師、歯科医師、薬剤師、保健師、助産師、看護師、准看護師、歯科衛生士、診療放射線技師、理学療法士、作業療法士、視能訓練士、臨床工学技士、義肢装具士など、法律上の資格を持つ専門職の活動を対象としている。今回の案は、この範囲に2職種を加えるものだ。
歯科技工士と言語聴覚士は何をする職種か
歯科技工士
歯科医師の指示書に基づき、入れ歯、差し歯、矯正装置などを製作・修理・加工する国家資格職である。高齢者の口腔機能維持や補綴治療を支える一方、就業者の高齢化や人材確保が課題とされている。
言語聴覚士
ことば、聞こえ、発声、飲み込みに障害がある人へ検査・訓練・助言を行う国家資格職である。脳卒中後のリハビリ、発達支援、高齢者の嚥下機能支援などで役割が大きい。
在留資格の追加と資格要件は別
今回の改正案は、外国人が対象職種で働くための在留資格上の受け皿を設けるものである。日本で歯科技工士または言語聴覚士として業務を行うには、それぞれの根拠法に基づく免許や要件を満たす必要がある。省令改正だけで、海外資格が自動的に日本資格へ置き換わるわけではない。
また、改正概要には日本人と同等額以上の報酬を受けることが要件として示されている。外国人を安価な労働力として雇うための制度ではなく、資格職として同等処遇を確保する建て付けである。
人数目標や受け入れ上限は示されていない
公開された改正案は、対象職種、受け入れ機関、報酬要件などを定める内容で、歯科技工士・言語聴覚士を何人受け入れるかという数値目標や上限は記載していない。施行後の人数は、資格取得者、求人、雇用契約、在留審査の積み重ねで決まる。
地域医療の担い手不足に対応する政策である一方、どの地域・施設で需要があるのか、日本語能力をどう確認するのか、専門用語や患者への説明をどう担保するのかは、運用段階で重要になる。
医療安全と患者との意思疎通が焦点
歯科技工士は歯科医師の指示内容を正確に読み取り、材料や形状を管理する必要がある。言語聴覚士は患者本人や家族との細かな意思疎通が業務の中心となる。国家資格の有無だけでなく、専門日本語、記録、安全手順、個人情報保護、文化的背景への理解も欠かせない。
受け入れ側には、資格と在留カードの確認、同等報酬、研修、相談窓口、医療事故時の責任分担を明確にする責任がある。外国人本人だけに適応を求めるのではなく、施設側の教育と監督体制も審査・評価の対象とする必要がある。
X上の反応は現時点で限定的
9月17日午前5時時点で、今回の省令改正案に関するX上の大規模な反応は確認できなかった。報道より先にe-Govで意見募集が始まった段階であり、制度関係者以外にはまだ広く知られていない可能性がある。
今後、医療人材不足、外国人資格者の受け入れ、医療安全、日本語能力をめぐって議論が広がる可能性がある。ただし、現時点で「大量受け入れが決まった」「日本の免許なしで働ける」とするのは事実と異なる。
パブリックコメントで確認したい点
- 海外で教育を受けた人が日本の国家資格を取得するまでの経路
- 患者対応に必要な日本語能力の確認方法
- 同等報酬をどの賃金項目で比較するのか
- 都市部と地方での人材偏在をどう防ぐか
- 医療事故、個人情報、説明責任に関する研修
- 施行後の在留人数、勤務先、定着状況の公表
意見はe-Govの案件ページから提出できる。募集期間終了後、行政機関は提出意見とそれに対する考え方を公示する。意見数だけで採否が決まる制度ではなく、具体的な条文、運用、費用、安全上の根拠を示すことが重要となる。
賛成・反対・中立の視点
受け入れ拡大を支持する視点
高齢化で歯科・嚥下・リハビリ需要が増える中、資格を持つ人材の選択肢を広げることは、患者の待機や地域格差の改善につながる可能性がある。日本人と同等以上の報酬を条件とする点も重要である。
医療安全を懸念する視点
医療では言語や指示の誤解が事故につながり得る。国家資格に加え、職種別の日本語基準、実地研修、監督者、苦情対応を整えないまま対象職種だけを増やすべきではないとの考え方である。
効果検証を重視する中立的視点
在留資格を追加しても、人材不足地域へ実際に定着するとは限らない。施行後に人数、勤務地、離職、賃金、事故・苦情などを公表し、政策効果を検証する必要がある。
クロ助とナルカの視点












編集部まとめ
- 改正案:在留資格「医療」に歯科技工士と言語聴覚士を追加する。
- 時期:意見募集は2026年10月16日午前0時まで、公布・施行は11月予定。
- 条件:日本人と同等額以上の報酬、日本法上の資格・免許が必要となる。
- 誤解注意:海外資格だけで自動的に働ける制度ではなく、人数目標や上限も示されていない。
- 論点:専門日本語、医療安全、地域定着、同等処遇、施行後の情報公開が焦点となる。
出典
- e-Govパブリック・コメント「出入国管理及び難民認定法施行規則の一部を改正する省令案」2026年9月16日
- 出入国在留管理庁「改正概要」PDF
- 出入国在留管理庁「省令案」PDF
- 出入国在留管理庁「在留資格『医療』」
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