厚生労働省が公表した2025年の監督指導結果で、外国人技能実習生を使用する事業場では、立入調査した1万3148事業場のうち9619事業場、73.2%で労働基準関係法令違反が確認された。特定技能外国人を使用する事業場では、8082事業場のうち6179事業場、76.5%だった。
数字は深刻だが、「技能実習・特定技能の受け入れ先全体の4分の3が違反」という意味ではない。監督対象は、労働基準関係法令違反の疑いがあるとして労働基準監督署などが立入調査した事業場である。対象の選び方を無視して全受け入れ先へ一般化するのは不正確だ。一方、調査対象の多数で、機械の安全基準、健康診断後の医師意見聴取、割増賃金の支払いなどの違反が見つかった事実は重い。
新人記者ナルカ


2025年の監督指導結果
| 区分 | 監督事業場 | 違反事業場 | 違反率 | 送検 |
|---|---|---|---|---|
| 技能実習 | 1万3148 | 9619 | 73.2% | 26件 |
| 特定技能 | 8082 | 6179 | 76.5% | 9件 |
厚労省は2026年9月15日に集計を公表し、9月16日に外国人雇用・労務分野のメディアやXで内容が広がった。送検件数は、技能実習生または特定技能外国人に関する重大・悪質な労働基準関係法令違反として扱われた事案である。違反が確認された事業場の全てが送検されたわけではない。
最も多いのは機械の安全基準違反
| 主な違反事項 | 技能実習 | 特定技能 |
|---|---|---|
| 使用する機械などの安全基準 | 22.8% | 20.7% |
| 健康診断結果について医師などから意見聴取 | 15.7% | 16.7% |
| 割増賃金の支払い | 15.6% | 16.3% |
両制度とも、最多は機械や設備の安全基準に関する違反だった。外国人労働者に限らず、プレス機、クレーン、切断機などを扱う現場では、安全装置、作業手順、資格、合図、保護具の整備が事故防止の基本となる。
技能実習関係の公表資料には、クレーン作業中のけがを受けて、合図方法を図入り資料で周知した事例や、プレス機の安全装置が不十分だった事例が掲載されている。未払い残業代約110万円を支払わせた事例、業務災害を健康保険で処理していたため本人負担分を返還させた事例もある。
技能実習では相談108件、賃金関係が93件
技能実習生から労働基準監督機関へ寄せられた申告は108件で、そのうち賃金・割増賃金関係が93件を占めた。申告は同一案件に複数の違反が含まれることがあるため、内訳を単純合計して相談件数と同じにすることはできない。
公表された送検事例には、資格を持たない技能実習生にガス溶断作業をさせ、労働災害の発生を隠したとされる事案や、虚偽の労働時間記録を作成して違法な時間外労働をさせたとされる事案が含まれる。これらは制度論だけでなく、労働者の生命、安全、賃金に直結する問題である。
「73.2%」「76.5%」を読む際の注意点
受け入れ先全体の違反率ではない
厚労省は、労働基準関係法令違反の疑いがある事業場に対して監督指導を行っている。無作為抽出ではないため、73.2%と76.5%を全受け入れ先に当てはめることはできない。特定技能の所属機関は2025年末時点で6万2996機関とされ、監督した8082事業場と母集団も同一ではない。
違反が外国人本人への違反とは限らない
厚労省資料は、監督した事業場で確認された労働基準関係法令違反を集計している。事業場内の日本人を含む労働者への違反が含まれる場合があり、全てが技能実習生や特定技能外国人への直接的な権利侵害だったとまでは言えない。
選定バイアスがあっても放置できる数字ではない
対象が絞られた調査だから数字が高くなるとしても、監督した事業場の7割超で実際に違反が確認された点は軽視できない。とりわけ、機械安全と割増賃金は事故や生活に直結する。受け入れ拡大を進めるなら、悪質事業者の排除、再発確認、相談窓口、転籍・転職時の保護を一体で強化する必要がある。
Xでは「ブラック企業が多すぎる」と反応
Xでは9月16日以降、「違反が多すぎる」「外国人を受け入れる前に企業側を監督すべきだ」といった反応が見られた。物流・労務系アカウントによる紹介も拡散した。一方、「受け入れ企業の4分の3が違反」と読める表現もあり、調査対象が違反の疑いのある事業場だった点を補足する投稿も出ている。
SNSの反応は問題意識を把握する材料にはなるが、母集団の説明を省いた数字だけで制度全体を評価すると誤解を招く。この記事では、厚労省の一次資料を基準に事実関係を整理した。
賛成・反対・中立の視点
受け入れ拡大に慎重な視点
現行制度でも安全・賃金違反が高率で確認される中、受け入れ人数だけを増やせば被害が拡大しかねない。監督官の増員、受け入れ停止、事業者名公表などを先行させるべきだという考え方である。
人手不足への対応を重視する視点
介護、建設、製造、農業などでは人手不足が深刻で、外国人材が現場を支えている。制度を止めるのではなく、法令を守る企業が人材を確保できるよう、違反事業者を厳格に排除するべきだとの考え方がある。
データの分母を重視する中立的視点
監督対象の違反率と、受け入れ先全体の違反率を分ける必要がある。無作為調査や業種別、地域別、違反の対象となった労働者別の集計を追加すれば、制度改善の優先順位をより正確に判断できる。
クロ助とナルカの視点












編集部まとめ
- 技能実習:監督した1万3148事業場のうち9619事業場、73.2%で違反が確認された。
- 特定技能:監督した8082事業場のうち6179事業場、76.5%で違反が確認された。
- 主な違反:機械安全、健康診断後の意見聴取、割増賃金の支払いだった。
- 注意点:違反の疑いがある事業場への監督結果であり、受け入れ先全体の違反率ではない。
- 課題:人手不足対策と並行し、悪質事業者の排除、監督、相談・救済を強化する必要がある。
出典
- 厚生労働省「外国人技能実習生又は特定技能外国人を使用する事業場に対して行った令和7年の監督指導、送検等の状況」2026年9月15日
- 厚生労働省「技能実習生を使用する事業場に対する監督指導、送検等の状況」PDF
- 厚生労働省「特定技能外国人を使用する事業場に対する監督指導、送検等の状況」PDF
- 日本の人事部「外国人技能実習生・特定技能外国人を使用する事業場への監督指導等の状況」2026年9月16日
- X・LOGISTICS TODAYによる紹介投稿
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