技能実習制度に代わる新制度「育成就労」が2027年4月1日から始まる。
新制度では、外国人を単に働かせるだけでなく、3年間の就労を通じて「特定技能1号」水準の人材へ育成することを制度目的に明記した。
特に注目されるのが、日本語能力を就労開始前、開始1年目、育成就労終了時と段階的に確認する仕組みだ。
出入国在留管理庁の制度資料によると、原則として就労開始前に日本語教育の参照枠A1相当の試験合格、または相当する講習の受講を求める。
開始から1年以内にはA1相当の日本語能力試験を受験させ、3年間の育成就労終了までにA2相当の日本語能力試験合格を目標とする。
技能実習制度で長年問題となってきた「日本語が十分でないまま職場に配置される」「生活ルールや安全指示を理解できない」「失踪・転籍時に相談できない」といった問題を、制度上の教育目標で改善できるかが問われる。
新人記者ナルカ


育成就労は2027年4月1日開始
2024年6月に公布された改正法により、技能実習制度は発展的に解消され、新たに育成就労制度が創設された。
施行日は2027年4月1日。
2026年4月15日から監理支援機関の許可申請、9月1日から育成就労計画の施行日前申請を受け付けるなど、制度開始前の準備が進んでいる。
日本語能力を3段階で確認
| 時点 | 日本語能力の基本要件 |
|---|---|
| 就労開始前 | A1相当の試験合格、または相当する講習受講 |
| 開始1年以内 | A1相当の試験を受験 |
| 育成就労中 | A2相当の日本語講習受講 |
| 終了まで | A2相当の試験合格を目標 |
分野によってはA2より高い日本語水準を設定することも可能だ。
A1・A2とはどの程度か
日本語教育の参照枠で、A1は基礎的な表現を理解し、簡単なやり取りができる初級水準。
A2は、日常生活や仕事に関係する身近な情報を理解し、簡単なコミュニケーションができる水準とされる。
育成就労は、来日時点で高度な日本語力を要求する制度ではない。
しかし「来日後も日本語がほとんど伸びない」状態を放置せず、3年間で一定水準へ到達させる仕組みに変わる。
1年目試験は「不合格なら即帰国」ではない
制度資料では、開始1年以内に技能試験と日本語能力試験を受験させる義務がある。
ただし、1年目試験に合格できなくても、それだけで育成就労を継続できなくなるわけではない。
1年目試験は中間評価の位置付けであり、最終的な目標達成へ向けて教育・指導を行う。
終了時はA2相当が原則
育成就労制度の目標となる日本語能力は、原則としてA2相当。
育成就労終了までに試験合格で確認する。
制度は「3年働けば自動的に特定技能1号へ移行できる」というものではなく、技能・日本語の目標達成が重要になる。
特定技能1号への移行を前提に設計
育成就労の基本的な考え方は、3年間で特定技能1号水準の技能を持つ人材に育てることだ。
技能実習では「国際貢献・技能移転」という建前と、日本企業の人手不足を埋める実態の乖離が批判されてきた。
育成就労では、人材確保と人材育成を制度目的として明示し、特定技能へのキャリアパスを制度上つなぐ。
転籍も技能実習より柔軟化
技能実習では本人都合による転籍が非常に難しく、職場で問題があっても逃げ場がないとの批判があった。
育成就労では、一定期間の就労、日本語・技能水準、転籍先の要件などを満たした場合に、本人意向による転籍を認める仕組みが導入される。
ただし完全な自由転職ではなく、分野ごとの制限や一定期間の要件がある。
日本語教育は企業・監理支援機関の責任に
育成就労では、日本語能力を制度目標に入れたことで、受け入れ企業や監理支援機関が「仕事だけさせればよい」という運用は難しくなる。
日本語講習の受講、試験受験、学習機会の確保を育成就労計画へ組み込む必要がある。
外国人本人の努力だけでなく、受け入れ側の教育体制も審査対象になる。
「日本語を話せない外国人を大量受け入れ」への対策になるか
外国人受け入れ拡大を巡っては、日本語能力が十分でないまま地域・職場へ配置されることへの懸念がある。
育成就労ではA1→A2という段階的な基準を設けることで、一定の改善が期待できる。
一方、A2は高度な日本語水準ではない。
安全指示、医療、災害、労働法、行政手続などを正確に理解するためには、業種や職務によってさらに高い日本語能力が必要になる場合もある。
分野別に「上乗せ」可能
政府は、育成就労産業分野ごとにA2相当より高い日本語能力を求めることを認めている。
安全上のリスクが高い業務や、日本人とのコミュニケーションが重要な分野では、より高い水準が設定される可能性がある。
一律基準と分野別上乗せを組み合わせる設計だ。
日本語教育費は誰が負担するのか
制度が実効性を持つには、教材、講師、受講時間、試験費用を誰が負担するかも重要になる。
外国人本人だけに費用を押し付ければ、送り出し時の借金や手数料負担が再び膨らむ可能性がある。
育成就労が「人材育成」を目的とする以上、受け入れ企業側にも教育コストを人件費の一部として認識する必要がある。
技能実習からの経過措置
2027年4月1日時点ですでに日本で技能実習をしている外国人は、原則として認定計画に基づく技能実習を継続できる。
施行前に技能実習計画申請を行い、一定期限までに入国するケースにも経過措置がある。
制度開始日を境に全技能実習生が一斉に育成就労へ切り替わるわけではない。
技能実習生から育成就労へ直接変更はできない
入管庁の経過措置資料では、技能実習生が在留資格を「育成就労」へ直接変更することはできないとしている。
既存技能実習は経過措置の中で終了し、新制度として育成就労が並行して立ち上がる。
受け入れ上限は42万6200人
政府は2028年度末までの育成就労の受入れ見込数を42万6200人としている。
特定技能80万5700人と合わせると123万1900人。
新制度は数万人規模の小規模試行ではなく、日本の労働市場を大きく左右する制度になる。
日本語だけで制度問題は解決しない
日本語能力の向上は重要だが、技能実習で問題となった高額手数料、賃金不払い、暴力、長時間労働、相談機能の不足まで日本語教育だけで解決できるわけではない。
育成就労では監理支援機関への監督、転籍制度、労働法令順守、受け入れ人数枠などを合わせて機能させる必要がある。
クロ助とナルカの視点






編集部まとめ
- 育成就労制度は2027年4月1日開始。
- 技能実習制度を発展的に解消し、人材育成・人材確保を目的化。
- 就労開始前はA1相当の試験合格または講習受講が基本。
- 開始1年以内にA1相当試験を受験。
- 育成就労終了までに原則A2相当試験合格を目標。
- 分野別にA2より高い日本語水準を設定可能。
- 1年目試験不合格だけで直ちに育成就労終了ではない。
- 3年間で特定技能1号水準への育成を目指す。
- 本人意向による転籍も一定条件で認める。
出典
内部関連記事













コメント