「日本に住む外国人が増えると、社会にとって良いことが多い」という考えに否定的な中学生が、2025年の調査で41.5%となった。2022年の22.2%と比べ、3年間で19.3ポイント上昇した。共同通信などが2026年11月7日、東京大学の仁平典宏教授(社会学)の分析として報じた。
調査の舞台は、首都圏の一自治体にある公立中学校10校。2012年から続く調査で、報道によると対象は約2,000人に上る。一方、寛容性や民主主義を重視する意識は高水準を維持している。外国人の増加に慎重な回答が増えた理由として、インターネット上の言説やルールを重視する価値観との関係が注目されているが、今回の数値だけで原因を断定することはできない。
新人記者ナルカ


調査の概要|2022年22.2%から2025年41.5%へ


| 報道日 | 2026年11月7日 |
|---|---|
| 分析者 | 東京大学・仁平典宏教授(社会学) |
| 調査対象 | 首都圏の一自治体の公立中学校10校、生徒約2,000人と報道 |
| 調査の開始 | 2012年から継続 |
| 今回の主な分析年 | 2018年、2019年、2022年、2025年 |
| 2022年の否定的回答 | 22.2% |
| 2025年の否定的回答 | 41.5% |
| 変化 | 19.3ポイント増/約1.87倍 |
| 注意点 | 全国の中学生から無作為抽出した調査ではない。実際の外国人犯罪数や学校でのトラブル件数を測った調査でもない |
2025年の調査は参議院議員選挙後の10~11月に行われたと報じられている。日本社会学会の公式サイトでは、第99回大会の報告要旨として、仁平教授による「中学生の社会意識における『リベラル化』と『保守化』——2025年の転換をめぐって」が公開されている。
41.5%は何に「否定的」だったのか
報道で示された設問は「日本に住む外国人が増えると社会にとって良いことが多い」という趣旨のもの。これに「あまり当てはまらない」「まったく当てはまらない」と回答した割合が2025年に41.5%となった。
大切なのは、外国人の増加がもたらす社会的なメリットへの評価と、外国人個人への好悪・差別意識を混同しないことだ。「良いことが多い」という見方に同意しなかったとしても、その理由が治安への懸念なのか、学校や地域の負担への不安なのか、経済的な理由なのか、この設問の集計だけでは分からない。
また、41.5%を「すべての外国人に反対する生徒の割合」「外国人との共生を拒否する生徒の割合」と言い換えるのは不正確だ。現時点で確認できた報道と学会の公開要旨には、否定的回答者全員の理由を分類した詳しい内訳は示されていない。
ルールを重視する生徒の意識に変化
共同通信の報道によると、ルールを破った人への厳しい処罰を支持する生徒ほど、2025年は外国人の増加を否定的に見る傾向があった。これまでの調査では、ルールを重視する生徒は外国人増加に肯定的な傾向を示しており、両者の関係が変わったと説明されている。
日本社会学会の報告要旨では、研究者が「ルール厳格性」と呼ぶ態度を分析に含め、学校への適応度、民主主義志向、寛容性、愛国心重視などの関係を検討している。したがって、今回の結果は「規律を重視する生徒が一様に外国人を嫌う」といった単純な説明にはなじまない。
学校でのルールを誰に対しても平等に適用することと、国籍を理由に人を一括りに判断することは別の問題だ。日本人・外国人を問わず、校則や生活上の決まりを分かりやすく伝え、違反した具体的な行為に適切に対応するという原則が問われる。
寛容性は高水準|「外国人増加への慎重さ」と矛盾するのか
同じ調査では、他者への寛容性や民主主義志向、自律志向など、研究上「リベラル的志向」と分類される項目も確認された。共同通信は寛容性などを示す傾向が9割超と報道。日本社会学会の要旨は、こうした価値観が全体として上昇し、民主主義志向や寛容性は高水準に達していると説明する。
一方、学会要旨は、2021年以降に上昇の勢いが鈍り、寛容性には微減傾向も見られたと記す。したがって「全項目で9割以上」「以前より必ず寛容になった」と一括するのも適切ではない。
外国人受け入れを慎重に考えることと、異なる価値観を持つ相手の権利を尊重することは両立し得る。仁平教授は、2025年の変化を一方向の「保守化」と決めつけず、複数の価値観が併存する現象として捉える必要があると分析している。






教授はネット上の言説の影響を指摘|因果関係はどこまで分かる?
仁平教授は共同通信の取材に対し、2025年の参院選前後にインターネット上で外国人への批判的な言説が増えたことに言及し、ネットの影響が回答に反映された可能性を示した。
ただし、インターネット上の言説が41.5%という結果を直接生んだと証明されたわけではない。今回公開された学会要旨では、排外主義関連意識の上昇が、民主主義志向や寛容性、学校適応度などの構成変化だけでは説明されにくいことから、社会全体の言説環境との関係が示唆されている。
ネットの情報は、現実の出来事を知るきっかけにも、誤情報や過度な一般化を広める経路にもなる。影響を検証するには、生徒が何を見聞きしたのか、情報源の違い、日常生活での接点、地域の状況などを分けて調べる必要がある。
学校での実体験が原因という見方は検証できるのか
外国人住民の増加を巡っては、日本語での意思疎通、学校生活のルール、授業への参加、保護者との連絡など、教育現場の課題がある。実際、自治体によっては日本語指導のための教室や支援体制の拡充が進められている。
一方、「外国籍の生徒がルールを守らない」「言葉が通じないという実害が今回の調査結果を生んだ」といった説明について、今回の公表資料からは、それを裏付ける学校別の事例数や因果分析を確認できない。個々の経験を軽視するべきではないが、調査対象の学校全体にそのような問題が広がっていると断定する根拠にもならない。
判断に必要なのは、現場で具体的に何が起きているかを把握することだ。トラブルの有無と内容、日本語指導の必要人数、教員の負担、保護者との連絡体制、児童生徒同士の交流などを継続して確認すれば、実際の課題と単なるイメージを分けられる。
同じ東京大学の別調査でも外国人受け入れへの慎重意見が増加
東京大学社会科学研究所の別研究チームは2026年8月、全国調査の結果として、外国人のさらなる受け入れに反対する割合が2024年の35.6%から2026年の56.3%に上昇したと発表した。社会への不安や不満を強く感じる人ほど反対に転じやすいという分析も示している。
ただし、これは仁平教授が分析した中学生調査とは別の調査である。対象者、設問、期間、調査方法が異なり、56.3%と41.5%を比較して「大人の方が排外的だ」「中学生は何年遅れだ」と判断することはできない。異なる調査でも受け入れを巡る意識の変化がテーマとなっている、という参考情報にとどめたい。
この調査を読む際の4つの注意点
| 論点 | 確認できること | 断定できないこと |
|---|---|---|
| 対象 | 首都圏の一自治体・公立中10校の生徒を調査 | 全国の中学生全体の割合 |
| 設問 | 外国人増加の「社会への良いことが多い」との見方への賛否 | 外国人個人への敵意や一律の共生拒否 |
| 時系列 | 2022年22.2%から2025年41.5%へ増加 | 同一の生徒一人ひとりが態度を変えたということ |
| 理由 | ルール厳格性との関連や情報環境の影響の可能性が報告されている | ネットだけ、または学校での実体験だけが原因だという結論 |
同じ中学校群の経年調査であっても、2022年と2025年に在籍する生徒は入れ替わる。数字の増加は集団の回答傾向の変化を示すもので、2022年に回答した同一人物を全員追跡した結果だとは限らない点にも注意が必要だ。
よくある質問(FAQ)
Q. 中学生の41.5%が外国人嫌いになったのですか?
A. いいえ。そのように読める設問ではありません。「外国人が増えると社会にとって良いことが多い」という意見に否定的だった割合です。個人への好悪を直接測った数字ではありません。
Q. 2022年と比べてどれほど増えましたか?
A. 22.2%から41.5%になり、19.3ポイント増加しました。割合の比では約1.87倍です。
Q. 全国の中学生を対象にした調査ですか?
A. いいえ。報告要旨によると、首都圏の一自治体にある公立中学校10校を対象にした調査です。全国を代表する数値として扱うことはできません。
Q. 外国人による犯罪や学校での問題が増えた証拠になりますか?
A. なりません。調査は意識を測ったもので、犯罪件数、トラブル件数、外国籍生徒の問題行動の実数を集計したものではありません。具体的な実態は別の統計や学校・自治体の資料で検証する必要があります。
Q. ネットが原因だと判明したのですか?
A. いいえ。仁平教授は社会的な言説環境の影響の可能性を指摘していますが、今回確認できた公表資料だけでは直接的な因果関係を確定できません。
Q. 寛容な生徒が9割超なら、外国人増加への否定的回答は間違いですか?
A. どちらかが間違いということではありません。受け入れ拡大への評価と、異なる立場の人を尊重する姿勢は別の価値観であり、同時に持つこともあります。
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編集部まとめ
今回の調査で注目すべきなのは、外国人増加による社会的なメリットに否定的な中学生の回答が、2022年の22.2%から2025年の41.5%へ増えたことだ。身近な社会の変化をどう受け止めているか、若い世代の意識を知るうえで重要な資料となる。
ただし、その理由を「インターネットの影響だけ」「外国人によるトラブルの実体験だけ」と決めつければ、実際の問題を見失う。学校や地域で困りごとがあるなら、日本人・外国人の区別なく具体的な事実を調べ、公平なルール運用、日本語指導、相談・連絡体制の整備につなげるべきだ。
また、受け入れ政策に疑問を持つことと、特定の国籍の人を排除することは同じではない。社会の負担や教育資源、地域の安全への懸念を根拠とともに議論しながら、誰もが法令やルールの下で生活できる条件を検証していくことが重要だ。
出典・参考資料
- 共同通信配信/神戸新聞NEXT「中学生4割が外国人増に否定的 22年比ほぼ倍、ネットの影響か」(2026年11月7日)
- 日本社会学会「第99回日本社会学会大会 報告番号155:中学生の社会意識における『リベラル化』と『保守化』——2025年の転換をめぐって」(仁平典宏)
- Межа「日本の中学生で外国人増加への否定的回答が3年で約2倍に」(2026年11月7日、41.5%・22.2%の詳細を報道)
- 東京大学社会科学研究所パネル調査「外国人の受け入れに対する意識はどう変化しているのか?」(2026年8月7日、別調査の参考資料)










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