タイとマレーシアで、日本人を標的にしたとみられる特殊詐欺拠点が相次いで摘発された。タイ・バンコクでは日本人4人を含むグループが、マレーシア西部ペラ州では日本人6人と中国籍の男1人が現地当局に拘束された。両事件を合わせると、拘束された日本人は少なくとも10人に上る。
タイの拠点からは偽の警察官制服や警察手帳、詐欺マニュアルなどが押収され、中国人が指示役、日本人が日本国内へ電話をかける「かけ子」を担っていた疑いが報じられている。マレーシアの拠点でも携帯電話やノートパソコンが押収され、2026年8月中旬ごろから日本人を狙った詐欺を行っていた可能性がある。外国人が日本へ入国して行う犯罪とは反対に、日本人が海外へ移動し、日本向け犯罪の実行役になる構図が浮かぶ。
新人記者ナルカ


タイとマレーシアの摘発概要
| 項目 | タイ・バンコク | マレーシア・ペラ州 |
|---|---|---|
| 摘発日 | 2026年9月16日 | 2026年9月16日 |
| 拠点 | 高級住宅 | 住宅 |
| 日本人 | 4人 | 6人 |
| 外国籍の関係者 | 中国人などを含むグループ | 中国籍の男1人 |
| 標的 | 日本人とみられる | 日本人とみられる |
| 押収物 | 偽制服、偽警察手帳、携帯電話、詐欺マニュアルなど | 携帯電話、ノートパソコンなど |
| 捜査状況 | 指示役や役割分担を捜査 | 詐欺の実態と関係者を捜査 |
タイ事件の拘束者総数については、主要報道でも「14人」「15人」と表記が分かれている。本記事では報道各社が共通して伝えている「日本人4人が拘束された」という部分を確定的な情報として扱い、総数は断定しない。刑事事件では、初期報道後に身柄の扱いや人数が訂正されることもあるため、続報を確認する必要がある。
タイの高級住宅に偽警察官の制服
タイ警察は9月16日、バンコクにある高級住宅を特殊詐欺の拠点とみて捜索した。報道によると、日本人4人、中国人5人などが現場で拘束され、住宅内から偽の警察官制服、警察手帳、かつら、携帯電話、詐欺の台本とみられる資料などが見つかった。
グループは日本の配送業者や警察官を装い、日本国内の相手へ「不正な小包に関与している」「あなたの口座が犯罪に使われている」と不安をあおる電話をかけていた疑いがある。中国人が運営や指示を担い、日本語を話す日本人が電話役を担当した可能性も報じられた。
拠点となった住宅は月額約420万円とされ、外観や設備は犯罪拠点とは分かりにくい豪華な物件だった。犯罪組織がホテルではなく、警備やプライバシーを確保しやすい高級住宅を短期間借り、通信機器を持ち込む手法が使われた可能性がある。
マレーシアでは日本人6人と中国籍男を拘束
マレーシア警察は同じ9月16日、西部ペラ州にある住宅を捜索し、日本人6人と中国籍の男1人を拘束した。7人は22歳から58歳で、8月中旬ごろから住宅を拠点として、日本人を狙う特殊詐欺に関与した疑いが持たれている。
現場からは携帯電話やノートパソコンが押収された。電話番号、通信アプリの履歴、送金先、暗号資産口座、航空券、住宅の賃貸契約などを分析することで、指示役、名簿の入手先、被害額、日本国内の資金回収役とのつながりが捜査されるとみられる。
タイとマレーシアの摘発日が同じである一方、二つのグループが直接つながっていると断定できる情報は、現時点で確認されていない。ただし、日本人を狙い、日本語を話す実行役を海外拠点へ集める点は共通している。
なぜ特殊詐欺拠点は海外へ移るのか
特殊詐欺グループが海外に拠点を置く理由として、日本国内の捜査から距離を置けること、通信アプリやインターネット電話を使えば発信地を分かりにくくできること、現地で住宅や通信環境を確保できることが考えられる。
一方で、犯罪者にとって海外拠点が安全とは限らない。現地で不法就労、詐欺、薬物、旅券・在留違反などが発覚すれば、その国の法律で拘束・起訴される可能性がある。日本へ送還された後、日本国内の被害について捜査を受ける場合もある。
日本人を海外へ勧誘する際には、「コールセンターの仕事」「高額報酬の営業」「航空券と住居を用意する」といった求人を装う可能性がある。渡航後に旅券やスマートフォンを取り上げられ、監視下で詐欺電話を強要される事例も海外では確認されている。自ら進んで参加したのか、だまされて連れて行かれたのかは、個々の関係者について証拠に基づいて判断する必要がある。
日本人が日本人を狙う国際分業型犯罪
今回注目されるのは、単純な「外国人犯罪」ではなく、複数国籍の人物が役割を分担し、日本人が日本人へ電話をかける構造である。日本語の自然さ、日本の行政機関や配送業者に関する知識、日本人名義の口座や通信契約が犯罪組織に利用される。
| 役割 | 想定される行為 |
|---|---|
| 指示・運営役 | 拠点、機器、名簿、台本を用意し、実行役を管理する。 |
| かけ子 | 警察官や配送業者を装い、被害者へ電話をかける。 |
| 送金誘導役 | ネットバンキング、暗号資産、指定口座への送金を指示する。 |
| 受け子・回収役 | 日本国内で現金、カード、貴金属などを受け取る。 |
| 資金洗浄役 | 複数口座や暗号資産を経由させ、犯罪収益の出所を隠す。 |
末端の電話役や受け子だけを摘発しても、名簿、資金、通信環境を提供する中核が残れば犯罪は続く。日本と現地当局が、端末解析、口座凍結、渡航記録、住宅契約、暗号資産の移動を一体で追跡することが重要になる。
被害を防ぐための確認ポイント
- 警察官が電話やビデオ通話で現金の送金を求めることはない。
- 警察官がSNSで逮捕状や警察手帳の画像を送って信用させる手口がある。
- 「口座を調査する」「資金を安全な口座へ移す」という要求には応じない。
- 電話に表示された番号を信用せず、いったん切って警察署の公式番号へ確認する。
- 不審な電話は警察相談専用電話「#9110」や家族へ相談する。
- 海外の高額求人で仕事内容、雇用主、勤務地が曖昧な場合は渡航しない。
賛成・反対・中立の視点
国際捜査の強化を求める視点
海外拠点から日本人を狙う以上、日本国内の電話や口座対策だけでは不十分である。東南アジア各国との合同捜査、犯罪収益の凍結、実行役の送還を迅速化すべきだという立場である。
若者の勧誘防止を重視する視点
高額報酬や海外勤務を強調する求人から犯罪へ取り込まれる危険がある。学校、求人サイト、空港、SNS事業者が、海外詐欺拠点への勧誘手口を具体的に周知する必要がある。
事実確認を重視する中立的視点
拘束された全員が同じ役割や認識を持っていたとは限らない。現地当局の捜査と司法手続を確認し、拘束段階で有罪と断定せず、組織内での役割や強要の有無を分けて報じる必要がある。
クロ助とナルカの視点


















編集部まとめ
- 相次ぐ摘発:タイとマレーシアで、日本人を標的にした疑いのある特殊詐欺拠点が摘発された。
- 日本人10人:タイで4人、マレーシアで6人の日本人が拘束された。
- 国際分業:中国人指示役、日本人かけ子、日本国内の回収役など、国境をまたぐ役割分担が疑われている。
- 被害防止:警察官や配送業者を名乗っても、送金や口座移動を求める電話は切り、公式窓口へ確認する。
- 今後の焦点:二つの拠点の関係、被害額、実行役の勧誘経緯、犯罪収益の流れを各国当局が解明できるかが焦点となる。
出典
- TBS CROSS DIG「マレーシアの住宅拠点に日本人狙う特殊詐欺か 日本人6人拘束」2026年9月19日
- TBS CROSS DIG「タイで特殊詐欺拠点とみられる住宅摘発 日本人4人拘束」2026年9月17日
- TBS CROSS DIG「家賃は月420万円 タイ・バンコクで高級住宅摘発」2026年9月17日
- 警察庁・SOS47「特殊詐欺に関する注意喚起」
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