タイ政府は2026年7月14日の閣議で、外国人の国外退去手続きを定める初の規程案を承認した。newsclip.beやKhaosod Englishの報道によると、対象となるのは、不法入国、不法滞在、不法就労、外国人事業法に反する事業経営、公文書偽造または偽造文書の使用、禁錮3年以上に当たる重大犯罪などに関与した外国人である。
タイにはこれまで、外国人の国外退去に関する統一的な行政規程が存在せず、関係機関の連携が課題となっていた。今回の規程案は、外国人受刑者の釈放前から国外退去手続きを開始できるようにし、内務省など関係機関の情報共有と送還命令の発出を迅速化する狙いがある。
日本でも、不法残留、在留資格悪用、外国人犯罪、強制退去手続きの実効性をめぐる議論が続いている。タイの制度整備は、観光立国と入国管理強化を両立しようとする海外事例として、日本の外国人政策を考える上でも参考になる。
新人記者ナルカ


報道の概要
- 決定日:2026年7月14日
- 決定機関:タイ政府閣議
- 内容:外国人の国外退去手続きを定める首相府規程案を承認
- 目的:不法入国、不法滞在、重大犯罪などに関与した外国人の送還迅速化
- 背景:タイに外国人の国外退去に関する統一的な行政規程が存在しなかったこと
- 対象類型:不法入国、不法滞在、不法就労、不法経営、公文書偽造、禁錮3年以上に当たる犯罪など
- 手続き:外国人受刑者の釈放前から情報共有し、内相による国外退去命令へつなげる
- 送還先:原則として国籍国。国籍不明の場合は入国前に最後に滞在していた国など
newsclip.beは、首相府が提出した規程案により、不法入国や重大犯罪を犯した外国人の送還を迅速化し、関係機関の連携を強化すると報じている。
Khaosod Englishも、タイ内閣が外国人の国外退去に関する初の規程案を承認し、対象となる6類型を定めたと報じた。報道によると、今回の枠組みは公共の秩序や公序良俗を守るために必要な場合、外国人の国外退去を可能にする手続きとして設計されている。
時系列で見る制度整備の流れ
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 2026年5月19日 | タイ政府が、2024年7月に拡大された60日間ノービザ制度の見直し方針を承認したと報じられる。 |
| 2026年6月16日 | アヌティン首相が、外国人送還に関する法律・規程・行政手続きの見直しを進めるよう、副首相を調整役に任命。 |
| 2026年7月14日 | タイ政府閣議が、外国人の国外退去手続きを定める初の首相府規程案を承認。 |
| 今後 | 関係機関が具体的な手続きに基づき、不法滞在者や重大犯罪者の送還実務を進める見通し。 |
国外退去対象となる6類型
| 類型 | 内容 | 制度上の意味 |
|---|---|---|
| 不法入国 | 正規の入国手続きを経ずにタイへ入国する行為 | 国境管理と入国審査の実効性に関わる |
| 不法滞在 | 認められた滞在期間を超えて滞在する行為 | 在留管理の基礎を損なう |
| 不法就労 | 外国人雇用関連法令に反して働く行為 | 国内労働市場と税・社会保障に影響する |
| 不法な事業経営 | 外国人事業法などに反して事業を行う行為 | 名義貸しや灰色資本対策につながる |
| 公文書偽造・偽造文書使用 | 身分証、許可証、行政文書などの偽造・使用 | 入国・就労・事業許可制度への信頼を損なう |
| 禁錮3年以上相当の犯罪 | 重大犯罪、またはこれらの指示・支援を含む行為 | 治安・公共秩序維持の観点から送還対象となる |
重要なのは、単に滞在期限を超えた外国人だけでなく、不法就労、不法事業、公文書偽造、重大犯罪の指示・支援まで対象に含めている点である。これは、個人の単発違反だけでなく、組織的な制度悪用や越境犯罪を意識した設計とみられる。
手続きの焦点:釈放前から国外退去準備へ
今回の規程案では、法務省刑務局長が、外国人受刑者の氏名、国籍、事件記録などの情報を内務省事務次官へ通知し、釈放前に国外退去手続きを開始できるようにするとされている。
その後、事務次官が内相に報告し、国外退去命令の発出を求める。命令が出された外国人は、内務省が国籍国へ送還する。国籍が確認できない場合は、本人がタイ入国前に最後に滞在していた国へ送還する仕組みも示されている。
これは、刑の執行が終わった後に送還手続きが遅れ、対象者が国内に長期滞留する事態を防ぐための制度整備といえる。犯罪者の処罰と送還を別々に扱うのではなく、釈放前から連動させる点が特徴である。
第三国や国際機関への移送条件
規程案では、外国人が国籍国以外の国や国際機関への受け入れを希望し、相手国または国際機関が受け入れを認めた場合の手続きも定めている。
その場合、外交ルートを通じた正式な要請文書、受け入れ側が送還・保護に伴う費用を負担する意思の表明、本人の書面による同意が必要とされる。これは、国籍国へ直ちに送還できない事案や、第三国受け入れが関係する事案を想定した規定とみられる。
送還は単なる国外追放ではなく、相手国の受け入れ、費用負担、本人の同意、人権上の配慮などが絡む行政手続きである。そのため、迅速化と同時に、手続きの透明性や国際ルールとの整合性も問われる。
タイが制度強化を進める背景
タイは観光立国であり、外国人観光客、長期滞在者、外国人投資家を積極的に受け入れてきた。一方で、ノービザ制度の長期化や出入国を繰り返す「ボーダーラン」、不法就労、名義貸しによる事業経営、オンライン詐欺拠点、資金洗浄などへの懸念が高まっている。
2026年には、タイ政府が60日間ノービザ制度の見直しや、国別の30日・15日枠への再編を進める方針も報じられている。これらの動きは、観光客数の拡大だけを追う政策から、治安と制度の持続性を重視する方向へ軸足を移していることを示している。
外国人を広く受け入れる国ほど、適法に滞在する人と制度を悪用する人を明確に分ける必要がある。真面目に観光、就労、投資を行う外国人にとっても、不法滞在者や犯罪者を放置すれば、外国人全体への不信が高まるため、制度の信頼性を守る意味がある。
日本への示唆:強制退去と在留管理の実効性
日本でも、退去強制、出国命令、不法残留、不法就労、在留資格の取消し、難民申請中の扱いなどをめぐり、制度運用の実効性が議論されている。特に、退去命令が出ても送還に時間がかかるケース、収容の長期化、人権上の配慮、送還忌避への対応は政治・社会問題となってきた。
タイの今回の規程案は、重大犯罪者や不法滞在者への対応を関係機関で統一し、釈放前から送還準備を行う点に特徴がある。日本でも、警察、検察、刑務所、入管、自治体が情報共有し、刑事処分後の在留管理を一体的に行う仕組みが重要となる。
ただし、単に「すぐ送還すればよい」という話ではない。国籍確認、旅券発給、相手国の受け入れ、本人の異議申し立て、難民条約上のノン・ルフールマン原則、家族関係や人道配慮など、送還には複数の要素がある。重要なのは、手続きを曖昧にせず、対象者、要件、審査、異議申立て、送還費用を明文化することである。
受け入れ拡大には送還制度の整備が不可欠
外国人を受け入れる政策は、入口だけでなく出口の制度と一体でなければならない。入国時の審査、滞在中の監督、就労・事業の適法性確認、犯罪時の処罰、刑事処分後の退去手続きまで、一本の制度として機能して初めて、国民の信頼を得られる。
日本でも、外国人労働者や観光客の増加、JESTA導入、在留手数料引き上げ、社会統合政策などが議論されている。これらを進めるのであれば、不法滞在、偽造文書、不法就労、重大犯罪への厳正な対応も同時に整備しなければならない。
受け入れ拡大だけを先行させ、問題が起きた後の退去・送還手続きが遅れれば、地域社会の不安は増大する。国民生活への影響を抑えるには、適法な外国人には明確なルールと支援を用意し、違法行為には迅速かつ透明な手続きで対応するという線引きが必要である。
賛成・反対・中立の視点
制度強化を支持する視点
不法入国、不法滞在、不法就労、重大犯罪に関与した外国人を迅速に退去させる制度は、治安維持と在留管理の信頼性を守るうえで必要だという考え方である。適法に滞在する外国人を守る意味でも、違法行為への対応を明確にする必要がある。
人権・手続き保障を重視する視点
国外退去は本人の生活や家族関係、迫害リスクにも関わるため、行政の判断だけで拙速に進めるべきではないという立場である。異議申立て、国籍確認、第三国受け入れ、人道配慮などを適切に確認する必要がある。
制度設計を重視する中立的視点
迅速化と手続き保障は対立するものではない。対象者の類型、判断基準、関係機関の役割、送還費用、異議申立ての期限を明確にすれば、恣意的な運用を避けながら実効性を高めることができる。
今後確認すべきポイント
- 規程案の正式施行時期
- 国外退去命令の対象者数と実際の送還件数
- 不法滞在者、重大犯罪者、外国人受刑者の運用実績
- 第三国・国際機関への移送手続きの具体例
- 人権団体や外国人コミュニティからの反応
- ノービザ制度見直しとの連動
- 日本の入管制度や退去強制手続きへの示唆
よくある質問
タイは外国人観光客を減らそうとしているのですか?
報道を見る限り、観光客全体を拒否する政策ではなく、制度悪用や犯罪への対応を強化する政策である。観光促進と治安確保を両立するため、ノービザ制度や送還手続きを見直していると整理できる。
対象になるのは不法滞在者だけですか?
不法滞在だけでなく、不法入国、不法就労、不法な事業経営、公文書偽造、禁錮3年以上に当たる犯罪、これらへの指示・支援も対象類型とされている。
日本でも同じ制度が必要ですか?
制度の詳細をそのまま移植する必要はないが、刑事処分後の在留管理、退去手続きの迅速化、関係機関の情報共有は日本でも重要な論点である。日本の場合は、難民認定制度、人道配慮、家族関係などとの整合性を含めて検討する必要がある。
クロ助とナルカの視点


















編集部まとめ
- 制度の要点:タイ政府は2026年7月14日、外国人の国外退去手続きを定める初の首相府規程案を承認した。
- 対象類型:不法入国、不法滞在、不法就労、不法経営、公文書偽造、禁錮3年以上相当の犯罪などが国外退去対象に整理された。
- 手続きの特徴:外国人受刑者について、釈放前から刑務当局と内務省が情報共有し、国外退去命令につなげる仕組みが示された。
- 日本への示唆:外国人受け入れを拡大する国ほど、退去・送還制度の実効性と手続き保障を同時に整備する必要がある。
- 国益的視点:適法な外国人を守るためにも、制度悪用や重大犯罪には迅速で透明な対応が不可欠である。
出典
- newsclip.be「タイ首相府が『外国人国外退去』規程案 不法滞在・重大犯罪の外国人を迅速送還へ」2026年7月15日
- Khaosod English「Cabinet Approves Thailand’s First Deportation Regulations, Identifying Six Grounds for Removal」2026年7月14日
- newsclip.be「タイのノービザ制度を全面再編 国別に30日・15日に再構築」2026年7月15日
- The Star「Thailand moves to speed up deportations of foreign criminals」2026年6月23日













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