電動アシスト自転車にスロットルを取り付け、運転免許が必要なペダル付き電動バイク、いわゆる「モペット」として客に公道を走行させた事件で、堺簡易裁判所は2026年7月31日、大阪府高石市に住むベトナム国籍の男性会社員2人に罰金の略式命令を出した。
MBSの報道によると、罰金額は27歳の男性が27万5000円、26歳の男性が5万円。2人は、電動アシスト自転車にスロットルなどを取り付け、時速約30キロで走行できる状態に改造し、ミラーやナンバープレートなどがない状態でベトナム国籍の客3人に運転させたとして逮捕・送検されていた。
堺区検察庁は、2人の罪名を「道路交通法違反ほう助」に変更して略式起訴した。今回の処分は、自転車の改造行為だけを問題にしたものではなく、原動機付自転車として必要な装備や手続きを満たさない車両を客に公道で運転させ、交通違反を助けた点が司法処分の中心となっている。
新人記者ナルカ


事件と略式命令の概要
- 略式命令日:2026年7月31日
- 裁判所:堺簡易裁判所
- 対象者:大阪府高石市に住むベトナム国籍の男性会社員2人
- 年齢:27歳と26歳
- 罪名:道路交通法違反ほう助
- 罰金:27歳の男性に27万5000円、26歳の男性に5万円
- 改造時期:2026年1月から2月にかけて
- 主な改造:ハンドル部分へのスロットル取り付けなど
- 改造後の性能:時速約30キロで走行できる状態
- 料金:1台当たり約2万円から4万円
- 運転者:ベトナム国籍の客3人
- 車両の状態:本来必要なミラーやナンバープレートがない状態と報道
- 認否:逮捕時の警察の取り調べに対し、2人は容疑を認めていたとされる
MBSによると、2人は客のもとへ出向き、電動アシスト自転車をモペットへ改造していた。ハンドル部分にスロットルを取り付けることで、ペダルをこがなくてもモーターの力だけで走行できるようにし、時速約30キロの速度を出せる状態にしていたという。
その後、2人は入管難民法違反の疑いでも再逮捕された。堺区検察庁は7月31日、26歳の男性について入管難民法違反を不起訴とし、理由を「捜査の結果、諸事情を考慮した」と説明している
事件の経緯を時系列で整理
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 2023年以降 | 捜査段階の警察説明では、27歳の男性が約170台を改造した可能性があると報じられた。ただし、今回の略式命令が約170台すべてを対象としたことを示すものではない。 |
| 2026年1月~2月 | 電動アシスト自転車3台をモペットへ改造し、ベトナム国籍の客3人に運転させた疑い。 |
| 2026年7月31日まで | 大阪府警が道路交通法違反の疑いで2人を逮捕・送検。警察の取り調べに対し容疑を認めたとされる。 |
| 逮捕後 | 2人は入管難民法違反の疑いでも再逮捕。 |
| 2026年7月31日 | 堺区検が道路交通法違反ほう助で略式起訴。堺簡裁が27歳の男性に罰金27万5000円、26歳の男性に罰金5万円の略式命令。 |
| 同日 | 26歳の男性の入管難民法違反について、堺区検が不起訴処分。 |
| 2026年8月4日 | MBSが略式命令と不起訴処分を報道。 |
電動アシスト自転車とモペットの違い
今回の事件を理解するには、「電動アシスト自転車」と「ペダル付き電動バイク」を区別する必要がある。
電動アシスト自転車は、運転者がペダルをこぐ力をモーターが補助する自転車である。道路交通法施行規則では、速度に応じたアシスト比率が定められ、時速24キロ以上ではモーターによる補助が加わらない構造でなければならない。
一方、スロットル操作だけでモーターにより走行できる車両や、法定のアシスト比率を超える車両は、一般に「モペット」「フル電動自転車」などと呼ばれる。法律上は自転車ではなく、構造や出力に応じて一般原動機付自転車または自動車として扱われる。
| 比較項目 | 電動アシスト自転車 | ペダル付き電動バイク・モペット |
|---|---|---|
| 動力の仕組み | 人がペダルをこぐ力をモーターが補助 | スロットルなどによりモーターだけでも走行可能 |
| 法律上の区分 | 基準を満たせば自転車 | 一般原動機付自転車または自動車 |
| 運転免許 | 不要 | 車両区分に応じた免許が必要 |
| 走行場所 | 自転車の交通ルールに従う | 原則として車道。歩道は走行不可 |
| ナンバープレート | 不要 | 必要 |
| 自賠責保険 | 不要 | 必要 |
| ヘルメット | 着用は努力義務 | 乗車用ヘルメットの着用義務 |
| 必要な装備 | 自転車としての制動装置、灯火など | 制動装置、前照灯、尾灯、ミラー、方向指示器など保安基準に応じた装備 |
大阪府警は、スロットルを備えてモーターのみで走行できるものや、電動アシスト自転車のアシスト比率基準を超えるものは、ペダル付き電動バイクに該当すると説明している。
また、2024年11月1日に施行された改正道路交通法により、モーターを切り、ペダルだけで走行した場合でも、ペダル付き電動バイクを「運転」したことになると明確化された。電源を切れば自転車として扱われるわけではない。
なぜ「道路交通法違反ほう助」になったのか
報道によると、2人は当初、道路交通法違反の疑いで逮捕・送検され、その後、堺区検察庁が罪名を「道路交通法違反ほう助」に変更して略式起訴した。
刑法上の「ほう助」とは、他人が犯罪を実行するのを手助けする行為を指す。今回の事件では、客が公道上で道路交通法などに違反する状態を作り出すため、車両を改造し、運転できる状態で提供した行為が問題とされたとみられる。
ただし、略式命令の詳細な事実認定や、客3人に成立した個別の違反内容は報道で全文が明らかにされていない。無免許運転、整備不良、ナンバープレート未装着など、一般に考えられる違反を、今回の客3人すべてに成立した事実として断定することはできない。
確認できるのは、ミラーやナンバープレートがない状態の改造車を客3人に運転させたとして、改造した2人が道路交通法違反ほう助で略式起訴され、罰金の略式命令を受けたという点である。
モペットを公道で運転するために必要な条件
ペダル付き電動バイクを公道で運転する場合、見た目が自転車であっても、原動機付自転車などとして法令上の条件を満たさなければならない。
- 車両区分に対応する運転免許を取得していること
- ナンバープレートを取り付けていること
- 自賠責保険または共済に加入していること
- 乗車用ヘルメットを着用すること
- 車道を走行し、歩道を走行しないこと
- 前後の制動装置を備えること
- 前照灯、尾灯、制動灯、番号灯を備えること
- 後写鏡、方向指示器、警音器などを備えること
- 道路運送車両法の保安基準に適合していること
大阪府警は、無免許運転には3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金、整備不良車両の運転には3か月以下の拘禁刑または5万円以下の罰金、無保険運行には1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科される可能性があると案内している。
車両を販売、貸与、改造する側も無関係ではない。大阪府警は、販売事業者が「運転免許がなくても公道で乗れる」などと虚偽の宣伝や説明をした場合、刑事責任を問われる可能性があると注意を促している。
1台2万~4万円、約170台を改造した可能性
関西テレビは、警察の説明として、27歳の男性が2023年から約170台を改造した可能性があると報じている。改造料金は1台約2万円から4万円で、SNSを通じてベトナム人向けに客を集めていたとする報道もある。
仮に約170台がすでに利用者へ渡っていた場合、同様の改造車が現在も公道を走っている可能性がある。ミラー、方向指示器、制動灯などの保安装置が不十分で、ナンバーや自賠責保険もない車両が事故を起こせば、被害者救済が困難になるおそれがある。
ただし、約170台という数字は捜査段階で警察が示した改造実績の可能性であり、今回の略式命令で約170台すべてについて違法性が認定されたとまでは報道されていない。記事では、処分対象として確認できる3台と、捜査上の余罪・実績情報を分けて扱う必要がある。
略式命令とは何か
略式命令は、公開の法廷で通常の公判を開かず、簡易裁判所が書面で審理し、罰金または科料を科す刑事手続である。
裁判所によると、略式手続を利用するには被疑者の異議がないことが必要で、検察官が提出した証拠を裁判官が検討し、相当と判断した場合に略式命令を出す。略式命令で科すことができるのは100万円以下の罰金または科料である。
略式命令は単なる行政上の注意や交通反則金ではなく、刑事裁判上の処分である。ただし、当事者が一定期間内に正式裁判を申し立てた場合、通常の公判手続へ移行する。
罰金と反則金は異なる
交通反則金は、比較的軽微な道路交通法違反について一定の手続で納付する行政上の金銭である。今回の罰金は、検察官の略式起訴を受け、簡易裁判所が出した刑事処分であり、同じ「お金を支払う処分」でも法的性質が異なる。
26歳男性の入管難民法違反は不起訴
2人は道路交通法違反事件の後、入管難民法違反の疑いでも再逮捕された。MBSによると、堺区検察庁は26歳の男性について不起訴とし、「捜査の結果、諸事情を考慮した」と説明した。
不起訴には、犯罪の疑いがない場合、証拠が不十分な場合、嫌疑があっても事情を考慮して起訴を見送る場合などがある。しかし、検察は今回、具体的にどの類型の不起訴だったかを公表していない。
そのため、「無実が確定した」「在留資格に問題がなかった」「起訴猶予だった」などと断定することはできない。確認できる事実は、26歳の男性の入管難民法違反が不起訴となり、理由は諸事情を考慮したと説明されたことに限られる。
外国人向けの違法改造サービスが抱える問題
今回の事件では、改造者と客がいずれもベトナム国籍だったと報じられている。警察の説明では、SNSなどを通じて同じ言語圏の利用者を対象に改造を受注していた可能性がある。
外国人同士の口コミやSNSで、「自転車として乗れる」「免許は必要ない」「ペダルを使えば問題ない」といった誤った情報が広がれば、利用者本人が違法性を十分に理解しないまま購入・改造を依頼する可能性がある。
一方、日本で公道を走行する以上、国籍を問わず日本の交通法規が適用される。言葉や制度への理解不足があったとしても、無免許運転や無保険運行、保安基準を満たさない車両の走行が認められるわけではない。
再発防止には、外国人向けの多言語啓発だけでなく、改造を請け負う業者や個人、輸入販売サイト、SNS広告、部品販売経路への監視が必要となる。利用者だけを摘発しても、改造サービスの供給側が残れば同様の車両が増え続けるためである。
利用者と販売・改造業者に必要な確認
利用者側の確認
- スロットルだけで走行できないか
- 時速24キロ以上でもモーターの補助が続かないか
- 警察庁の型式認定TSマークが付いているか
- 販売者が「免許不要」「歩道走行可能」と説明していないか
- ナンバー登録、自賠責保険、保安部品が必要な車両ではないか
販売・改造する側の確認
- 改造後の車両区分を利用者へ正確に説明する
- 公道走行に必要な免許、登録、保険、装備を説明する
- 法令上必要な装備を外したり、作動しない状態にしたりしない
- 外国語広告でも「自転車扱い」「免許不要」などの虚偽表示をしない
- 違法走行を前提とした改造依頼を受けない
見た目や商品名だけでは、電動アシスト自転車かモペットかを判断できない場合がある。特に海外製品や個人改造車では、スペック表示が不十分なケースがあり、購入者が自ら法令適合性を確認する必要がある。
取り締まり強化を求める視点
時速約30キロで走行する車両が、ナンバープレートやミラーなどを備えず、歩道や自転車通行帯を走れば、歩行者や通常の自転車に大きな危険を及ぼす。事故が起きた際に自賠責保険へ加入していなければ、被害者への補償が不十分になる可能性もある。
利用者だけでなく、違法走行を可能にする改造業者、無許可販売、SNS上の勧誘、部品供給まで捜査対象を広げる必要がある。特に多数の車両を継続的に改造して利益を得ていた場合、単発の交通違反とは異なる供給型の問題として対応すべきである。
周知と制度改善を重視する視点
モペットは外観が自転車に似ており、電動アシスト自転車との違いを一般の利用者が見分けにくい。インターネット上では「フル電動自転車」「電動自転車」「特定小型」など、法的区分と一致しない商品名も使われている。
警察、自治体、販売事業者、外国人雇用企業、登録支援機関、日本語学校などが連携し、免許、ナンバー、自賠責保険、ヘルメット、走行場所を多言語で周知する必要がある。
同時に、型式認定を受けていない車両や改造部品について、販売段階での説明義務、広告表示、オンライン販売者の本人確認などを強化し、購入後に利用者だけが処罰される構造を防ぐことも重要となる。
クロ助とナルカの視点


















編集部まとめ
- 司法処分:堺簡裁は2026年7月31日、ベトナム国籍の男性会社員2人に、道路交通法違反ほう助で罰金27万5000円と5万円の略式命令を出した。
- 事件内容:2人は電動アシスト自転車にスロットルを取り付け、時速約30キロで走れるモペットへ改造し、ミラーやナンバープレートがない状態で客3人に運転させたとされた。
- 法的区分:モーターだけで走行できるペダル付き電動バイクは自転車ではなく、一般原動機付自転車などに該当する。免許、ナンバー、自賠責保険、ヘルメット、保安部品が必要となる。
- 供給側の責任:違法状態での公道走行を可能にする改造や提供は、運転者の違反を助けたとして刑事責任を問われる可能性がある。
- 捜査情報の注意:約170台を改造した可能性が報じられているが、今回の略式命令で約170台すべての違法性が認定されたとは確認できない。
- 入管事件:26歳の男性の入管難民法違反は不起訴となったが、具体的な不起訴理由は公表されていない。
- 再発防止:外国人向けの多言語周知に加え、SNS上の違法改造サービス、販売広告、改造部品の流通を含めた供給側対策が必要である。
出典
- MBS NEWS/TBS NEWS DIG「電動自転車を『モペット』に違法改造して客に運転 ベトナム国籍の男性会社員2人に罰金の略式命令 堺簡易裁判所」2026年8月4日
- 関西テレビ/FNNプライムオンライン「『時速30キロ』出るように改造か 電動アシスト自転車を『モペット』に違法改造した疑い」2026年7月31日
- 大阪府警察「『ペダル付き電動バイク』について」
- 警察庁「ペダル付き電動バイクは自転車ではなくバイクです」
- 裁判所「簡易裁判所の刑事事件について」
- e-Gov法令検索「道路交通法」













コメント