イタリアのジョルジャ・メローニ首相は2026年9月20日、学校のクラスごとに外国人児童・生徒数の上限を設け、ブルカやニカブなど顔を覆う衣服の着用を学校で禁止する措置を政府へ提出する方針を表明した。
ロイター通信やAP通信によると、提案には、学校制度への統合に深刻な困難を抱える外国人児童・生徒の保護者にイタリア語学習を求める内容も含まれる。メローニ首相は、イタリア語を理解できない子供がクラス内で多数になれば、迅速な言語習得や統合が難しくなるとの考えを示した。
ただし、2026年9月22日時点でこれは成立済みの法律ではない。具体的な人数上限も示されておらず、政府の承認と議会手続きが必要となる。EU加盟国出身の児童への適用、居住地域による学校間格差、宗教の自由との調整など、制度設計上の課題も残る。
新人記者ナルカ


メローニ首相が示した三つの方針
- クラスごとに外国人児童・生徒数の法的な上限を設ける
- 統合に深刻な困難がある外国人児童・生徒の保護者にイタリア語学習を求める
- 学校でブルカやニカブなど顔を覆う衣服を禁止する
メローニ首相は、右派政党「イタリアの同胞」の青年組織が開いたイベントで方針を説明した。イタリアで将来を築こうとする人は、イタリア語を学び、文化を理解し、法律を尊重しなければならないという趣旨の発言をしている。
また、イタリア語を理解できない児童がクラスに1人であれば、教師や同級生の助けで言語を学び統合しやすいが、その人数が多くなったり多数を占めたりすれば、統合ではなく「放置」になるとの考えを示した。
現時点で確定していること・していないこと
| 項目 | 2026年9月22日時点 |
|---|---|
| 首相の方針表明 | 確認されている |
| 政府への措置提出 | 近く行う方針 |
| 外国人児童数の具体的上限 | 未発表 |
| ブルカ・ニカブの学校内禁止 | 提案内容に含まれる |
| ヒジャブの禁止 | 今回の発言では明示されていない |
| 法律としての成立 | 未成立 |
ブルカは顔を含めて全身を覆う衣服、ニカブは主に目の周囲を残して顔を覆う衣服を指す。一方、髪や首を覆い顔は見えるヒジャブについて、メローニ首相は今回の発言で禁止対象として明示していない。ブルカ、ニカブ、ヒジャブを一括して「イスラム教の衣服」と扱い、すべて禁止されると報じるのは正確ではない。
背景にある外国人児童・生徒の増加
報道では、イタリアの学校に在籍する児童・生徒のうち、イタリア国籍を持たない者は11.6%で、およそ100人に12人とされる。国籍を持たないことと、イタリア語を話せないことは同じではない。イタリアで生まれ育ち、イタリア語を母語同様に使う子供も含まれる可能性がある。
このため、国籍だけを基準にクラスの人数を制限すると、言語支援が必要な児童を把握する目的と合わない可能性がある。政策の目的が言語統合であるなら、出生地、居住年数、イタリア語能力、保護者の支援状況などを組み合わせる必要がある。
既存の30%目安と実施上の難しさ
スペイン紙エル・パイスは、イタリアでは外国人児童・生徒の割合をクラスの30%程度に抑える既存の指針があるものの、外国人住民が集中する地域では実施が難しいと報じている。子供の就学を拒むことはできず、近隣校にも同様の集中があれば、機械的な分散は困難になる。
新たな措置が法的上限を設ける場合、どの学校が受け入れるのか、通学距離が延びた場合の負担を誰が負うのか、EU加盟国出身者を同じ基準で扱えるのかといった問題が生じる。学校現場からは、制度を実行するための教師、教室、言語支援員、交通手段がなければ、数字だけの上限になるとの懸念も想定される。
外国人児童数の上限を設ける利点
上限を支持する立場からは、特定の学校やクラスに言語支援が必要な児童が集中するのを防ぎ、教師が一人ひとりへ対応しやすくなるとの主張がある。イタリア語を使う同級生との交流が増え、子供の言語習得や社会参加を促進できる可能性もある。
また、外国人家庭が一部地域へ集中すると、学校選択をめぐってイタリア人家庭が別の学校へ移り、さらに偏りが拡大する場合がある。一定の分散策は、学校間格差を抑える手段になり得る。
上限政策への懸念
最大の問題は、外国人という国籍区分と、実際の言語能力や支援の必要性が一致しないことである。イタリア生まれで流暢に話す子供を人数枠へ算入し、来たばかりで集中的な支援が必要な子供と同じに扱えば、制度目的が曖昧になる。
さらに、上限を超えた子供が遠方の学校へ振り分けられれば、通学や家族生活に負担がかかる。学校側に受け入れ余力がなければ、実質的な就学制限や地域分断につながるおそれもある。政策を実施するなら、上限だけでなく追加教員、日本語に相当する第二言語教育、保護者通訳、就学前支援への予算が不可欠となる。
保護者へのイタリア語学習義務
保護者が学校からの連絡や教育制度を理解できれば、欠席、進路、宿題、健康、安全に関する意思疎通が改善する。家庭でも子供の言語習得や学習を支えやすくなるため、保護者向け言語教育には一定の合理性がある。
一方、義務とする場合には、仕事や育児を抱える保護者が受講できる時間帯、費用、託児、オンライン受講、障害への配慮を整えなければならない。学習機会を提供せず、未受講だけを理由に不利益を与える制度になれば、統合を進めるどころか孤立を深める可能性がある。
ブルカ・ニカブ禁止と宗教の自由
メローニ首相は、学校では顔を見せるべきであり、伝統を理由に若い女性へ顔を隠すことを強いるべきではないとの趣旨を述べた。本人確認、教師と生徒の意思疎通、表情を含む授業参加、強制からの保護が禁止を支持する論拠となる。
反対する立場からは、対象者が少ない場合に全国的禁止が必要なのか、本人の自発的な信仰実践まで排除しないか、宗教を理由とした差別にならないかという懸念がある。顔を覆う衣服と、顔を見せるヒジャブを区別し、禁止目的と対象範囲を明確にする必要がある。
日本の外国人児童教育との比較
日本でも外国人児童・生徒や日本語指導が必要な子供が増え、特定の自治体や学校へ集中する課題がある。公立義務教育諸学校への就学を希望する外国人の子供は、日本人児童生徒と同様に無償で受け入れられ、日本語指導、適応支援、母語による案内などが行われている。
日本でイタリア型の国籍別上限をそのまま導入するのは、通学区域、居住の自由、学校の受け入れ余力との調整が難しい。一方、特定校への負担集中を放置すれば、教師の負担や授業進度、地域間格差に影響する。必要なのは、国籍だけで一律に分けることではなく、日本語能力に応じた支援員配置、初期集中教室、保護者への日本語教育、自治体を越えた財政支援である。
賛成・反対・中立の視点
提案を支持する視点
移民の統合には受け入れ国の言語、文化、法律の理解が不可欠であり、学校の負担を一定範囲に抑える必要がある。顔を覆う衣服の禁止も、本人確認と女子生徒の自由を守る措置だと評価する。
提案に反対する視点
国籍で子供を分類する上限は差別につながり、教育を受ける権利や宗教の自由を損なうおそれがある。必要なのは排除や分散ではなく、学校への予算、人員、言語教育の充実だとする。
制度設計を重視する中立的視点
特定校への集中を緩和する目的には理解できる面があるが、国籍ではなく言語支援の必要度を基準にすべきである。上限、例外、EU出身者の扱い、通学支援、教師増員を法案で明確にし、効果を検証する必要がある。
クロ助とナルカの視点












編集部まとめ
- 提案の要点:メローニ首相は、クラス内の外国人児童数上限、保護者のイタリア語学習、学校でのブルカ・ニカブ禁止を盛り込む措置を示した。
- 現在の段階:成立済みの法律ではなく、具体的上限も未発表。政府・議会の手続きが必要となる。
- 背景:イタリア国籍を持たない児童・生徒は全体の11.6%とされ、移民統合と学校負担が政治課題となっている。
- 主な論点:国籍と言語能力の違い、学校間の分散、EU出身者の扱い、宗教の自由、教育予算。
- 日本への示唆:外国人児童の増加には、人数制限だけでなく、日本語支援、保護者教育、支援員と財源の配置が必要である。
出典
- Reuters「Italy to ban veils in schools, limit foreign students per class, Meloni says」2026年9月20日
- AP「Meloni plans to ban burqas and niqabs in Italian schools, and cap foreign students in classrooms」2026年9月20日
- テレビ朝日「イタリア、学校の外国人児童数に上限へ ブルカ禁止も」2026年9月22日
- El País「Italia se plantea prohibir el uso del burka y el niqab en la escuela」2026年9月20日
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