MENU
目次
カテゴリー

茨城県の不法就労防止条例が可決 外国人雇用の課題を整理

茨城県の外国人不法就労防止条例が可決
  • URLをコピーしました!
項目内容
条例名茨城県外国人の不法就労活動の防止に関する条例
議案番号令和8年第2回茨城県議会定例会・第82号議案
可決日2026年6月16日(ANN報道)
施行予定令和8年7月1日(議案上の付則)
主な対象県、事業者、県民、不法就労活動防止施策
主な目的外国人の不法就労活動の防止、県経済の健全な発展、秩序ある共生社会の実現

茨城県議会は2026年6月16日、外国人の不法就労防止に向けた条例案を可決した。ANN報道によると、茨城県内で摘発された不法就労者数は2022年から4年連続で全国最多となり、その数は4年で2.7倍以上に増えているという。

県が提出した議案名は「茨城県外国人の不法就労活動の防止に関する条例」。県、事業者、県民の責務を明らかにし、不法就労活動防止施策への協力を求める内容で、議案上の施行日は令和8年7月1日とされている。

一方で、この条例は外国人への差別や相互監視を助長するのではないかという懸念も出ている。県は、真面目に働いている外国人への不当な差別や排斥を防ぐためにも、不法就労を放置すべきではないとの考えを示している。本記事では、条例の内容、背景となる統計、賛否の論点、そして編集部としての見解を整理する。

新人記者ナルカ
茨城県で不法就労防止の条例が可決されたんだね。

編集長クロ助
そうにゃ。ポイントは「外国人を排除する条例」ではなく、不法就労を生む雇用主や仲介構造にどう対応するかにゃ。

目次

茨城県議会で不法就労防止条例が可決

テレビ朝日系ANNの報道によると、茨城県は外国人の不法就労防止に向けた条例案を提出し、2026年6月16日の県議会で可決された。条例案には、県民に対して「県が実施する不法就労活動防止施策に協力するよう努めなければならない」といった規定が盛り込まれている。

県議会に提出された第82号議案では、条例の目的について、急激な人口減少に伴い外国人により不足する人材を確保する必要が生じている一方で、外国人の適正な雇用を推進する必要があると説明している。そのうえで、県、事業者、県民の責務を明らかにし、不法就労活動の防止を図り、県経済の健全な発展と秩序ある共生社会の実現を目的とするとしている。

条例で定められた主な内容

県議会提出議案によると、条例は全9条で構成されている。県の責務、事業者の責務、県民の責務、広報啓発、不法就労防止推進月間、事業者調査、警察への通報、連携協力体制などが柱となる。

事業者の責務

第4条では、事業者に対し、事業活動を行うに当たって外国人の不法就労活動防止のために必要な措置を講じるよう努めること、さらに県が実施する不法就労活動防止施策に協力するよう努めることを求めている。

これは、外国人本人だけでなく、雇用主側の確認責任を明確にする意味を持つ。不法就労助長罪は、就労資格のない外国人を雇った事業主や、不法就労をあっせんした者を処罰対象とする。警視庁も、在留カードの確認をしていないなどの過失がある場合、事業主が処罰対象となり得ると説明している。

県民の責務

第5条では、県民に対して「外国人の不法就労活動の防止に積極的に努める」とともに、県の施策に協力するよう努めることを定めている。この規定は、今回の条例で最も議論を呼びやすい部分である。

不法就労を知りながら放置しない社会的意識は重要である。しかし、外国人らしい外見、言語、職場の雰囲気だけで疑いを向けるような運用になれば、適法に働く外国人への偏見や地域の分断につながる。行政は「何を根拠に、どのような情報を、どこへ届けるのか」を明確にし、曖昧な通報や感情的な監視を抑える運用設計を行う必要がある。

不法就労防止推進月間は毎年11月

条例第7条では、不法就労防止推進月間を設け、毎年11月とするとしている。県のパブリックコメント結果では、11月頃は露地物農作物の収穫時期などに当たり、県内の不法就労活動の70%を占める農業で不法就労活動が多いとされる時期だと説明されている。

茨城県は農業県であり、外国人労働力への依存度が高い地域でもある。だからこそ、不法就労対策は摘発だけで完結しない。適法な雇用ルート、短期・繁忙期に対応できる就労制度、悪質なブローカー排除、事業者の確認負担を下げる支援が不可欠となる。

雇用状況調査と警察への通報

第8条では、知事が外国人を雇用する事業者を対象に、県内で就労する外国人の雇用状況に関する調査を行うと定めている。また、調査の事務に従事する職員が、入管法の不法就労助長罪に該当すると思われる者があるときは、その旨を警察官に通報するものとしている。

県のパブリックコメント結果では、県職員に取締り権限を与えるわけではなく、取締権限は警察官や入国警備官等に限られると説明されている。つまり、県の役割は直接摘発ではなく、雇用状況の把握、啓発、警察・入管との連携に置かれている。

背景にある統計:茨城県は不法就労者数が全国最多

出入国在留管理庁の「令和7年における入管法違反事件について」によると、2025年に退去強制手続等を執った外国人のうち、不法就労事実が認められた者は1万3,435人で、全体の72.9%だった。

就労場所の都道府県別では、茨城県が3,518人で最多となった。関東1都6県では1万268人で、全国の76.4%を占めた。職種別では農業従事者が5,227人、建設作業者が4,011人で、この2業種が全体の68.8%を占めている。

統計項目2025年の数値出典
不法就労事実が認められた者1万3,435人出入国在留管理庁
退去強制手続等を執った外国人に占める割合72.9%出入国在留管理庁
茨城県の不法就労者数3,518人出入国在留管理庁
関東1都6県の不法就労者数1万268人出入国在留管理庁
農業従事者5,227人出入国在留管理庁
建設作業者4,011人出入国在留管理庁

この数字から見えるのは、不法就労が単なる個人の問題ではなく、地域産業の人手不足、農業・建設分野の労働需要、仲介業者や雇用主の確認責任と結びついているという構図である。

県の説明:差別防止のためにも放置しない

茨城県はパブリックコメント結果の中で、県内の不法就労者数が4年連続で全国最多であること、直近5年間における外国人の摘発人数が全国では4割減少する一方、茨城県では45%増えていることを挙げている。

また、県民の中に外国人全体への偏見や不信感が生まれつつあり、このまま不法就労を放置すれば、真面目に働いている外国人への不当な差別や排斥につながることを懸念していると説明している。

不法就労を放置すれば、適法に働く外国人にまで疑いの目が向かう。県の説明は、この点で一定の合理性がある。不法就労を取り締まることは、適法に働く外国人の信頼を守る側面も持つ。

ただし、その目的を実現するには、条例の運用が厳格でなければならない。「外国人が働いているから怪しい」という感覚的な通報ではなく、在留資格を確認しない事業者、虚偽の雇用契約、違法な派遣・あっせん、賃金未払い、ブローカー関与など、具体的な根拠に基づく情報提供に限定する必要がある。

反対・懸念の声:差別や相互監視への不安

条例案には反対意見もある。関東弁護士会連合会は、通報報奨金制度や条例案について、差別と偏見を助長するおそれがあるとして撤回を求める声明を出している。同声明では、不法就労に至る背景として、技能実習制度などで劣悪な労働条件や相談体制の不足があると指摘している。

この懸念は軽視できない。不法就労の背景には、在留資格の失効、ブローカーによる搾取、借金、賃金未払い、転職制限、相談窓口の不足など、制度と現場の複合的な問題がある。本人を摘発するだけでは、同じ構造が別の人に置き換わるだけになる可能性がある。

また、県民に努力義務を課す規定は、受け止め方によっては地域社会の相互監視を強める恐れがある。県は、外国人個人ではなく事業者情報を対象とする、匿名通報は受け付けない、情報提供者への聴取や事業者への個別訪問を通じて確認する、という運用上の説明をしている。こうした歯止めを制度上どこまで明確化できるかが、条例の信頼性を左右する。

賛成・反対・中立の視点

賛成の視点:不法就労を放置すれば制度が崩れる

不法就労を放置すれば、在留資格制度、適正な雇用、地域の治安、税・社会保険制度への信頼が損なわれる。正規に手続きをして外国人を雇う企業ほどコストを負担し、違法に安く雇う事業者が利益を得る構図は、公正な競争を壊す。

茨城県が全国最多という状況で、県として対策を明文化すること自体は理解できる。特に雇用主やブローカー、不正な仲介業者を対象にした情報収集と警察・入管との連携は必要である。

反対の視点:差別や通報社会化の懸念

一方で、条例名や県民責務の規定が、外国人全体への監視や疑念を広げるのではないかという懸念がある。不法就労に至った背景には、劣悪な労働環境や相談先の不足がある場合もあり、摘発中心の対策だけでは根本解決にならないという指摘も妥当である。

不法就労対策を名目に、外国人住民、外国人労働者、留学生、その家族への偏見が強まれば、条例の目的である「秩序ある共生社会」と逆方向に進むことになる。

中立の視点:雇用主対策と労働者保護を同時に進める

現実的な解は、不法就労の摘発と外国人労働者の保護を対立させないことである。違法雇用を行う事業者には厳格に対応する一方、適法に働く外国人には相談窓口、日本語支援、労働法教育、在留資格更新の案内を届ける必要がある。

不法就労を減らすには、入口での雇用確認、在留カード確認、外国人雇用状況届出、悪質仲介業者の排除、正規就労ルートの拡大を組み合わせる必要がある。

編集部社説:茨城県条例は必要性がある。ただし運用の歯止めが不可欠だ

JP News Focus編集部は、茨城県が不法就労防止条例を制定する必要性はあると見る。県内の不法就労者数が全国最多であり、農業や建設など地域産業と深く結びついている以上、県が「国任せ」にせず、地域の実情に応じた対策を打ち出すことは合理的である。

とくに重要なのは、不法就労を外国人本人だけの問題として扱わないことである。不法就労は、多くの場合、雇用主、仲介業者、ブローカー、偽装契約、賃金未払い、住居提供、送迎、現場管理といった仕組みの中で発生する。表に出るのは働く外国人だが、利益を得るのは背後の雇用側である場合が少なくない。

したがって、条例の実効性は「外国人をどれだけ摘発するか」ではなく、「不法就労を利用して利益を得る事業者と仲介構造をどこまで断てるか」で評価されるべきである。

同時に、県民への協力要請には強い歯止めが必要だ。地域住民が外国人労働者を見た目や言葉だけで疑うような社会になれば、適法に働く外国人は茨城県を避ける。人手不足の地域にとって、それは経済的にも損失である。

国益と地域経済の観点から見ても、必要なのは「排除」ではなく「適正化」である。正規の在留資格を持ち、税と社会保険を負担し、地域で生活する外国人には安心して働いてもらう。その一方で、違法雇用、資格外活動の常態化、虚偽契約、ブローカー搾取には厳格に対応する。この線引きを明確にできるかが、茨城県条例の成否を決める。

企業・事業者が確認すべき実務ポイント

外国人を雇用する事業者は、少なくとも次の点を確認する必要がある。

  • 在留カードの有効期限を確認する
  • 在留資格で就労できる業務内容か確認する
  • 資格外活動許可の有無と労働時間上限を確認する
  • 外国人雇用状況届出をハローワークに提出する
  • 派遣・請負・紹介業者を使う場合も、契約と実態を確認する
  • 在留カードの偽造確認には、入管庁の在留カード等読取アプリなどの活用を検討する
  • 確認記録を社内で保管し、担当者任せにしない

「知らなかった」では済まないケースがある。事業者側に在留カード確認などの過失がある場合、不法就労助長罪に問われる可能性があるため、現場の人手不足を理由に確認を省略することはリスクが大きい。

クロ助とナルカの視点

新人記者ナルカ
不法就労防止って聞くと、外国人への取り締まりだけに見えちゃうけど、実際は雇う側も重要なんだね。

編集長クロ助
そこが核心にゃ。不法就労は、働く本人だけでなく、雇用主や仲介業者が利益を得る構造があるにゃ。

新人記者ナルカ
でも県民に協力義務ってなると、外国人を見かけただけで疑う人も出ないかな。

編集長クロ助
その懸念はあるにゃ。だから県は、通報や調査の対象を事業者側の具体的な違法雇用情報に絞り、見た目や国籍だけで判断しない運用を徹底する必要があるにゃ。

新人記者ナルカ
真面目に働く外国人を守るためにも、違法雇用の仕組みを断つことが必要なんだね。

編集長クロ助
そうにゃ。適法に働く外国人と、違法に利益を得る雇用主・ブローカーを分けて考えることが、冷静な議論につながるにゃ。

編集部まとめ

  1. 事実確認:茨城県議会は2026年6月16日、外国人の不法就労活動防止に関する条例案を可決した。
  2. 背景:2025年の入管庁統計では、不法就労事実が認められた外国人は全国で1万3,435人、茨城県は3,518人で最多だった。
  3. 制度内容:条例は県、事業者、県民の責務を定め、雇用状況調査、警察への通報、不法就労防止推進月間などを盛り込む。
  4. 国益的示唆:不法就労を放置すれば、適正雇用を行う企業と外国人労働者の信頼が損なわれる。違法雇用を利用する事業者やブローカー対策が重要である。
  5. 注意点:外国人全体への疑念や地域の相互監視につながらないよう、通報対象・調査基準・情報管理を明確化する必要がある。

出典

茨城県の外国人不法就労防止条例が可決

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次