茨城県は2026年4月2日の知事定例記者会見で、「不法就労外国人に関する通報報奨金制度に反対する会長声明」などに対する県の見解を公表した。制度をめぐっては、茨城県弁護士会が2026年3月11日付で反対声明を出し、外国につながる人々への偏見や差別を助長するとして撤回を求めていた。
これに対し、大井川和彦知事は、茨城県内の不法就労者数が4年連続で全国最多となっている現状を示し、制度は外国人個人を対象にしたものではなく、不法就労者を雇用する事業者に焦点を当てたものだと説明した。県は、不法就労などの違法行為へ厳格に対応する姿勢を示すことが、むしろ適正に働く外国人への偏見や不信感を抑えるために必要だとしている。
新人記者ナルカ


茨城県の通報報奨金制度をめぐる対立
- 発表日:2026年4月2日
- 発表主体:茨城県、大井川和彦知事
- 対象:不法就労に関する通報報奨金制度への反対声明等
- 反対声明:茨城県弁護士会が2026年3月11日に公表
- 県の主張:制度は外国人個人ではなく、不法就労者を雇用する事業者を対象にする
- 弁護士会の主張:制度は外国につながる人々への偏見、差別、社会の分断を招く恐れがある
- 主な論点:不法就労対策、事業者責任、外国人労働者保護、差別助長リスク、地域治安への不安
経緯・時系列
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 2026年3月11日 | 茨城県弁護士会が「不法就労外国人に関する通報報奨金制度に反対する会長声明」を公表 |
| 2026年4月2日 | 茨城県が知事定例記者会見で、反対声明等に対する県の見解を表明 |
| 2026年4月2日 | 茨城県が「『不法就労外国人に関する通報報奨金制度に反対する会長声明』等への茨城県の見解」を文書で公表 |
| 2026年4月24日 | 知事定例会見で、制度設計の狙い、本人確認、不当な通報防止策について追加説明 |
茨城県の現状認識「不法就労者数が4年連続全国最多」
茨城県は、県内の不法就労者数が4年連続で全国最多であると説明している。さらに、直近5年間における外国人の摘発人数について、ピーク時である2001年から2005年と比べ、全国では約4割減少している一方、茨城県では45%増えているとした。
県は、こうした状況が、県内に住む外国人や働く外国人に対する不信感、複雑な感情を招いている可能性が高いと分析している。知事は、人口減少社会の中で外国人材の活用は地域社会の未来を左右する課題であり、社会の分断が起きそうな状況を軌道修正する必要があるとの認識を示した。
| 項目 | 茨城県の説明 |
|---|---|
| 不法就労者数 | 4年連続で全国最多 |
| 外国人の摘発人数 | 直近5年間で、ピーク時比45%増 |
| 全国傾向 | 同時期に約4割減少 |
| 県民の不安 | 不法就労が治安悪化の温床ではないかとの声がある |
| 県の問題意識 | 不法就労の放置が、適正に働く外国人への偏見や排斥につながる恐れ |
県の反論「対象は外国人個人ではなく事業者」
茨城県が最も強調しているのは、通報報奨金制度の対象は不法就労外国人個人ではなく、不法就労者を雇用する事業者だという点である。
県の見解文書では、制度は「不法就労を認識しながら、または十分な確認を怠り、違法な雇用行為を行っている事業者」を対象とするものだと説明している。また、国籍、外見、言語などの属性による通報を想定するものではなく、「外国人が働いていること」自体を問題視する制度でもないとしている。






弁護士会の反対理由「差別と分断を招く」
一方、茨城県弁護士会は2026年3月11日付の会長声明で、制度は不法就労問題の本質的解決にならないだけでなく、外国ルーツ、外国籍者、無国籍者など外国につながる人々に対する差別と偏見を助長するとして反対した。
弁護士会は、不法就労かどうかは在留資格や資格外活動許可の有無などを確認しなければ判断できず、就労しているという外形的な事実だけでは分からないと指摘している。そのため、報奨金付きの情報提供制度を設ければ、外国につながる人々が働いているだけで疑いの目を向けられる恐れがあるとしている。
また、不法就労の背景には農業分野の人手不足や、技能実習生などが劣悪な労働環境から逃げ出すケースもあるとして、通報制度ではなく、労働環境改善や相談体制の整備、制度改正が必要だと主張している。
| 立場 | 主張の要点 |
|---|---|
| 茨城県 | 不法就労者を雇う事業者を対象にし、違法雇用を抑止する制度。不法就労の放置こそ、適正に働く外国人への偏見を助長する。 |
| 茨城県弁護士会 | 報奨金付き通報制度は、外国につながる人々への疑いの目を広げ、偏見、差別、社会の分断を招く恐れがある。 |
| 中立的整理 | 制度目的が事業者責任の追及であっても、運用次第では属性による通報や誹謗中傷を招く可能性があるため、対象範囲と審査基準の明確化が不可欠。 |
県は「国の制度を補完するもの」と説明
茨城県は、国にはすでに不法滞在や不法就労などの情報提供に対する報奨金制度が存在していると説明している。その上で、県の制度は国の制度を否定したり逸脱したりするものではなく、県として独自に整理し、補完的に位置づけたものだとしている。
知事は会見で、国の制度では個人に関する通報が想定されている一方、県が行おうとしているのは、不法就労者を雇う事業者に対する情報提供を求める制度だと説明した。不法就労がなくならない背景には「雇う人がいる」ことがあるとして、事業者側の抑止を狙う制度だとした。
4月24日会見で示された不当通報防止策
2026年4月24日の知事定例記者会見では、制度設計に関する追加説明も行われた。知事は、不法就労情報提供システムなどを通じて提供された情報に限定し、通報者の住所、氏名、連絡先を必ず明記してもらうと説明した。
また、運転免許証など本人確認が可能な書類の添付を求めることで、単なる誹謗中傷や無責任な通報を防ぐ制度設計にするとしている。
| 不当通報防止策 | 内容 |
|---|---|
| 通報手段の限定 | 不法就労情報提供システムなど、県が整備する手段に限定 |
| 通報者情報 | 住所、氏名、連絡先の明記を求める |
| 本人確認 | 運転免許証など本人確認書類の添付を求める |
| 目的 | 誹謗中傷や属性に基づく無責任な通報の防止 |
制度の焦点は「外国人排除」ではなく「違法雇用の抑止」
今回の制度をめぐる議論で重要なのは、外国人労働者全体と、不法就労や違法雇用を分けて考えることだ。人口減少と人手不足が進む中で、茨城県自身も、意欲と能力のある外国人材は県にとって重要な存在だとしている。
その一方で、不法就労や違法雇用を放置すれば、適正な在留資格で働く外国人、法令を守る事業者、日本人労働者のいずれにとっても不公平が生じる。違法雇用を抑止する仕組みは、外国人排除ではなく、労働市場の公正性を守る観点からも必要になる。
クロ助とナルカの視点


















賛否・中立の見方
| 立場 | 主な見方 |
|---|---|
| 肯定的な見方 | 不法就労者を雇う事業者への抑止策として、通報報奨金制度は一定の実効性が期待できる。違法雇用を放置すれば、適正に働く外国人や法令順守の事業者が不利益を受ける。 |
| 慎重な見方 | 報奨金付きの通報制度は、外国につながる人々への疑念や偏見を広げる恐れがある。不法就労の背景にある人手不足、劣悪な労働環境、相談体制不足への対策も必要。 |
| 中立的な見方 | 不法就労対策は必要だが、対象を事業者に限定し、属性による通報を排除する運用設計が不可欠。制度の透明性、通報審査、虚偽通報対策、外国人労働者保護を同時に進める必要がある。 |
編集部でまとめ
- 事実確認:茨城県は2026年4月2日、茨城県弁護士会の反対声明などに対し、通報報奨金制度に関する県の見解を公表した。
- 県の主張:制度は不法就労外国人個人を摘発するものではなく、不法就労者を雇用する事業者に焦点を当てたものだと説明している。
- 反対側の主張:茨城県弁護士会は、報奨金付き通報制度が外国につながる人々への偏見や差別、社会の分断を招くとして撤回を求めている。
- 国益的示唆:外国人材を受け入れる社会を維持するには、適正に働く外国人を守る一方、不法就労や違法雇用には厳格に対応する制度運用が必要である。











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