山口県とインドネシア共和国労働省は2026年8月27日、技能実習生の送出し・受入れ促進に関する協力覚書を締結した。県内企業の人手不足対策と外国人材の確保・定着を目的に、現地での人材育成、日本語教育、相談拠点の設置、企業とのマッチングなどを共同で進める。
一方、日本では技能実習制度を発展的に解消し、2027年4月から育成就労制度を開始する。制度移行まで約7か月という時期に「技能実習生」の受入れ覚書が結ばれたため、既存制度で来日する人の扱い、育成就労への引継ぎ、送出し費用、転籍、就労条件をどのように管理するのかが焦点となる。
新人記者ナルカ


協力覚書の概要
- 締結日:2026年8月27日
- 公表日:2026年8月28日
- 締結者:山口県、インドネシア共和国労働省
- 目的:県内企業の外国人材確保・定着と人手不足対策
- 対象:インドネシアから山口県への技能実習生の送出し・受入れ
- 主な施策:情報共有、現地人材育成、日本語教育、相談拠点、企業とのマッチング
山口県の公式発表は、受入れ人数、対象業種、事業予算、開始時期、具体的な送出し機関名について記載していない。覚書は協力の枠組みであり、直ちに一定人数の来日や雇用が確定したことを意味しない。
4つの主な協力内容
| 項目 | 内容 | 今後確認すべき点 |
|---|---|---|
| 情報共有 | 技能実習生の送出し・受入れに関する制度・求人情報を共有 | 個人情報と求人条件の管理 |
| 現地人材育成 | インドネシア国内で就労前の育成プログラムを実施 | 教育費の負担者とカリキュラム |
| 日本語教育支援 | 受入れ企業などの日本語教育の取組を支援 | 来日前後の到達目標と学習時間 |
| 相談・マッチング | 相談対応を行うサポート拠点を設け、県内企業と人材をつなぐ | 苦情相談の独立性と転職・転籍支援 |
山口県がインドネシア人材を求める背景
地方では製造、建設、介護、農業、宿泊、食品などで人手不足が続き、若年人口の減少も進んでいる。企業が個別に海外採用を行うには、現地機関の選定、日本語教育、在留手続き、住居、生活支援などの負担が大きい。
自治体が相手国政府と協力枠組みを作れば、信頼できる窓口を通じた採用、求人条件の共有、来日前教育、トラブル時の連絡を標準化できる可能性がある。県内企業だけでは難しい現地ネットワークを行政が補う点が今回の狙いとみられる。
2027年4月に技能実習から育成就労へ
技能実習制度は、技能移転による国際貢献を目的としてきたが、実態として人手不足を補う労働力として利用されること、転籍制限、賃金、失踪、送出し費用などが問題となった。新しい育成就労制度は、人手不足分野での人材育成と確保を正面から目的に掲げる。
| 項目 | 技能実習 | 育成就労 |
|---|---|---|
| 主な目的 | 技能移転を通じた国際貢献 | 人手不足分野の人材育成・確保 |
| 施行状況 | 現行制度、順次移行 | 2027年4月開始 |
| 育成目標 | 技能実習計画に基づく技能修得 | 原則3年で特定技能1号水準を目指す |
| 転籍 | 原則制限が強い | 一定条件で本人意向による転籍を認める |
| 監理 | 監理団体・技能実習機構 | 監理支援機関・外国人育成就労機構 |
覚書に基づく人材がいつ来日し、どちらの制度を利用するかで、必要な認定、監理、転籍、日本語、技能評価のルールは変わる。山口県には、技能実習だけでなく育成就労を見据えたロードマップの公表が求められる。
「政府間覚書」と同じではない
今回の覚書は山口県とインドネシア労働省の地域的な協力枠組みである。日本国政府と送出し国政府が締結する技能実習・育成就労制度上の二国間取決めと、法的役割が同一とは限らない。
覚書があるから在留資格が自動的に許可されるわけではなく、受入れ企業、監理団体、送出し機関、本人は、日本の入管法や労働法、技能実習法、新制度の要件を満たす必要がある。「県のお墨付き」が個別企業や送出し機関の適法性を全面保証するものでもない。
送出し費用と本人負担の透明化
外国人材受入れで繰り返し問題になるのが、来日前に本人が負担する仲介料、保証金、借金である。高額な債務を抱えて来日すると、低賃金や職場トラブルがあっても離職できず、失踪や不法就労につながるリスクが高まる。
現地人材育成プログラムを実施するなら、授業料、渡航費、健康診断、書類作成費、仲介料を誰が負担するのか公開する必要がある。本人が理解できる言語で費用総額と返済条件を示し、不当な保証金や違約金がないことを確認すべきだ。
日本語教育は勤務時間・費用も重要
日本語教育支援を掲げても、仕事の後に本人負担で学ばせるだけでは継続が難しい。県と企業は、勤務時間内の学習、教材、講師、試験料、目標レベルを具体化する必要がある。
安全指示、労働条件、税・社会保険、防災、医療、交通ルールを理解できる日本語は、本人のためだけでなく企業と地域の安全にもつながる。教育の実施回数ではなく、理解度や資格取得、職場定着を成果指標にすべきだ。
相談拠点の独立性が問われる
企業とのマッチングと労働相談を同じ拠点が担当する場合、雇用主との関係を優先し、実習生が被害を訴えにくくなるおそれがある。賃金未払い、暴力、ハラスメント、旅券保管などの相談は、受入れ企業や仲介事業者から独立した窓口につなぐ必要がある。
インドネシア語で相談できる体制、夜間・休日対応、匿名相談、労働局や警察、入管との連携、転籍支援を明示できれば、定着だけでなく権利保護にも役立つ。
賛成・慎重・中立の視点
覚書を評価する視点
相手国政府と直接連携し、来日前教育から就労後支援まで一貫させれば、悪質仲介業者を排除し、地方企業が安定して人材を確保できるという期待がある。
安易な人手不足対策を懸念する視点
低賃金や労働環境を改善しないまま外国人を増やせば、地域との摩擦や離職を招く。日本人を含む賃上げ、省力化、働き方改善を先に進めるべきだという意見もある。
成果公開を求める中立的視点
受入れ人数、定着率、賃金、送出し費用、日本語到達度、相談件数、転籍件数を継続して公開し、覚書が本人と企業双方に有効だったか検証する必要がある。
クロ助とナルカの視点












編集部まとめ
- 山口県とインドネシア労働省は2026年8月27日、技能実習生受入れの協力覚書を締結した。
- 現地人材育成、日本語教育、相談拠点、企業とのマッチングを進める。
- 受入れ人数、業種、予算、具体的な送出し機関は公式発表で示されていない。
- 2027年4月の育成就労開始を踏まえ、経過措置と新制度への引継ぎを明確にする必要がある。
- 送出し費用、賃金、相談窓口、定着率などの透明な検証が求められる。
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