投資資金にかかる税金を支払う必要があるとうそを言い、京都市山科区の78歳女性から現金800万円をだまし取ったとして、京都府警山科署は2026年7月21日、ベトナム国籍の34歳の男を詐欺の疑いで逮捕した。
逮捕されたのは、東京都三鷹市に住むベトナム国籍で無職の男(34)。警察は、特殊詐欺グループの指示を受け、被害者から現金を直接受け取る「受け子」の役割を担ったとみて、共犯者や指示役、被害金の流れを調べている。
逮捕容疑は、2025年12月3日から8日にかけて、氏名不詳者らと共謀し、山科区に住む無職の女性(78)を証券会社を装ったサイトへ誘導したうえ、投資資金の税金を支払う必要があると信じ込ませ、同月8日に山科区内の路上で現金800万円をだまし取ったというもの。
男は警察の調べに対し、「覚えていません」と供述し、容疑を否認している。男がどのような経緯で現場へ向かったのか、被害女性とどのような言葉を交わしたのか、現金を誰へ渡したのかなどは、報道された範囲では明らかになっていない。
新人記者ナルカ


事件の概要
- 逮捕日:2026年7月21日
- 逮捕した警察署:京都府警山科署
- 逮捕容疑:詐欺の疑い
- 逮捕者:東京都三鷹市在住、ベトナム国籍、無職の男(34)
- 被害者:京都市山科区の無職女性(78)
- 犯行時期:2025年12月3日~8日
- 被害額:現金800万円
- 主な手口:証券会社を装ったサイトへ誘導し、投資資金の税金名目で現金を要求
- 現金の受け渡し:2025年12月8日、山科区内の路上
- 警察の見立て:特殊詐欺グループの「受け子」
- 供述:「覚えていません」と容疑を否認
- 共犯者:氏名不詳者らとされ、人数や役割は不明
警察は、被害女性を偽の証券会社サイトへ誘導した人物、電話やSNSなどで連絡を続けた人物、現金回収を指示した人物、被害金を最終的に受け取った人物が別々に存在する可能性があるとみて、組織的な犯行の全容を調べるとみられる。
時系列で見る被害の経緯
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 2025年12月3日ごろ | 被害女性が、証券会社を装ったサイトへ誘導されたとされる。 |
| 12月3~8日 | 氏名不詳者らが、投資資金に関する税金を支払う必要があるなどと説明した疑い。 |
| 12月8日 | 山科区内の路上で、被害女性が現金800万円を男へ渡したとされる。 |
| 被害発覚後 | 山科署が、サイトへの誘導経路、連絡履歴、現金受け渡し場所などを捜査。 |
| 2026年7月21日 | ベトナム国籍の34歳男を詐欺の疑いで逮捕。 |
| 取り調べ | 男は「覚えていません」と供述し、容疑を否認。 |
被害が発生した2025年12月から逮捕まで約7カ月が経過している。警察が防犯カメラ映像、通信履歴、交通記録、関係者の供述などをどのように積み重ねて男を特定したかは公表されていない。
「投資資金の税金」を要求する詐欺
投資詐欺では、偽サイトや偽アプリ上で利益が増えているように見せ、被害者が出金を求めた段階で、追加の金銭を要求する手口が使われる。
犯人が使う名目には、次のようなものがある。
- 投資利益に対する税金
- 出金手数料
- 保証金
- 口座凍結の解除費用
- マネーロンダリング審査費用
- 本人確認費用
- 違約金や追証
偽サイト上では高額な利益が表示されていても、実際に投資運用されているとは限らない。被害者が追加料金を払うたびに、別の名目を付けてさらに送金や現金交付を求める場合がある。
今回の事件では、証券会社を装ったサイトへ誘導し、「投資資金の税金」として現金800万円を要求したとされる。税金の支払いを理由に、見知らぬ人物と路上で待ち合わせて現金を渡す仕組みは、正規の証券取引や納税手続きとは考えにくい。
正規の証券会社や税務手続きとの違い
正規の証券会社では、顧客との取引記録、本人確認、口座管理などが制度化されている。投資利益への課税がある場合でも、税金の処理は金融機関の口座や税務申告を通じて行われる。
少なくとも、次のような要求があった場合は詐欺を疑う必要がある。
- 利益を出金する前に現金で税金を払うよう求められる
- 税金を会社の担当者へ直接渡すよう指示される
- 路上、駅、駐車場などで現金を受け渡すよう求められる
- 会社名義ではなく個人名義の口座へ送金を求められる
- 支払わなければ投資利益が没収されると脅される
- 家族や金融機関へ相談しないよう口止めされる
- 金融庁や税務署を名乗る人物から追加支払いを要求される
証券会社を名乗る相手から金銭を要求された場合、相手が送ってきたリンクや電話番号を使わず、金融庁の登録情報や証券会社の公式サイトを自分で確認する必要がある。
「受け子」とはどのような役割か
特殊詐欺では、犯行を複数の役割に分け、指示役が被害者の前へ姿を現さないようにすることがある。
| 役割 | 主な行為 |
|---|---|
| 指示役 | 犯行全体を計画し、電話役や現金回収役へ指示する。 |
| 架け子・連絡役 | 電話やSNSで被害者を信じ込ませ、支払いを求める。 |
| サイト・アプリ運営役 | 偽の証券会社サイトや投資画面を準備し、利益が出ているように見せる。 |
| 受け子 | 被害者と直接会い、現金やキャッシュカードなどを受け取る。 |
| 回収役 | 受け子から被害金を回収し、上位者へ渡す。 |
| 勧誘役 | SNSや求人サイトで、受け子などの実行役を募集する。 |
受け子は末端の役割とされることが多いが、被害者から現金を直接受け取る重要な実行行為を担う。犯行内容を認識し、氏名不詳者らと共謀して現金を受け取ったことが証拠によって認められれば、詐欺の共犯として刑事責任を問われる可能性がある。
一方、逮捕された男が、現金の中身や犯行の目的を知らずに荷物の受け取りを依頼されたと主張する可能性もある。今回、男は「覚えていません」と否認しており、警察・検察側には、詐欺への認識や共謀関係を証拠で立証することが求められる。
詐欺罪の法定刑
刑法第246条は、人を欺いて財物を交付させた者について、10年以下の拘禁刑に処すると定めている。
実際に被害者へうその説明をした人物だけでなく、犯行内容を理解したうえで現金を受け取った者、被害者を誘導した者、役割分担をした者についても、共謀共同正犯や幇助などの成立が問題となる。
本件の被害額は800万円と高額であり、高齢者を対象とした計画的・組織的な犯行だったことが認定された場合、量刑上も重く評価される可能性がある。
なぜ路上で現金を渡してしまうのか
投資詐欺では、被害者を長期間にわたり偽サイトや連絡担当者へ依存させ、疑う機会を奪うことがある。
偽サイト上で高額な利益を見せられると、被害者は「税金さえ払えば利益を受け取れる」と考えやすくなる。すでに多額を投資している場合、損失を確定させたくない心理から、追加の支払いに応じてしまうこともある。
さらに、犯人は次のような心理的圧力を加える場合がある。
- 今日中に払わなければ口座が凍結される
- 税金を払えばすぐに利益を受け取れる
- 手続きは秘密なので家族へ話してはいけない
- 金融機関へ本当の目的を説明してはいけない
- 担当者が直接取りに行くので安心だ
被害者が高齢であることだけを理由に「判断力がなかった」と決め付けることはできない。詐欺グループは、専門用語、偽サイト、複数の役割を使い、年齢を問わず信じ込ませる。
現金手渡し型は被害回復が難しい
振込型の詐欺では、被害発覚後すぐに金融機関へ連絡すれば、振込先口座が凍結され、口座に残った資金から被害回復分配金を受け取れる可能性がある。
しかし、今回のように路上で現金を直接渡した場合、金融機関の口座を経由しないため、口座凍結による回収ができない。受け子から回収役、指示役へ現金が移されれば、追跡はさらに難しくなる。
被害回復には、次のような対応が重要となる。
- 現金受け渡し場所付近の防犯カメラ映像を確保する
- 相手との電話、SNS、メール、サイト画面を保存する
- 現金を準備した金融機関の記録を確認する
- 受け子の服装、顔、持ち物、移動方向を警察へ伝える
- 被害に気付いた時点ですぐ110番または警察へ相談する
- 消費生活センターや弁護士へ相談する
犯人から連絡が続いている場合、独自に接触して現金を取り戻そうとせず、警察の指示に従う必要がある。
偽の証券会社サイトを見抜く確認点
投資先を紹介された場合は、入金前に次の点を確認する必要がある。
- 金融庁の登録を受けた事業者か
- 公式サイトのURLと紹介されたURLが一致するか
- 会社名、所在地、代表者、電話番号が実在するか
- 検索結果の広告やSNSリンクだけを信用していないか
- 個人名義口座や暗号資産ウォレットへの送金を求められていないか
- 必ずもうかる、損失が出ないと断言していないか
- 出金時に追加の税金や保証金を求めていないか
- 担当者がLINEやWhatsAppなどだけで連絡していないか
- 金融機関や家族に話さないよう指示されていないか
サイトが精巧で、実在する証券会社のロゴや会社名を使っていても、本物とは限らない。URLの一文字違い、連絡先、金融庁登録番号などを公式情報と照合する必要がある。
被害を防ぐための家族・金融機関の対応
高額な現金を引き出す高齢者に対して、金融機関が使途を確認することは、詐欺被害を防ぐための重要な対策である。
犯人は、金融機関から質問された場合に備え、「リフォーム費用」「親族へ渡す」「車を買う」など、うその理由を答えるよう指示する場合がある。家族や金融機関へ本当の目的を隠すよう求められた時点で、詐欺を強く疑うべきである。
家族は、本人の資産状況を過度に管理するのではなく、次のような共通ルールを決めておくとよい。
- 100万円を超える現金を動かす前に家族へ相談する
- 投資先は金融庁登録を一緒に確認する
- 税金や保証金の名目で追加請求されたら支払わない
- 知らない人へ現金を手渡さない
- 不審なサイトやメッセージを削除せず保存する
- 困った場合は警察相談専用電話「#9110」や消費者ホットライン「188」へ相談する
外国人の受け子勧誘を防ぐ必要
逮捕された男はベトナム国籍と報じられている。ただし、在留資格、来日時期、日本語能力、生活状況、犯行グループとの接点は明らかになっていない。
一人の容疑者の事件を、日本で生活するベトナム人や外国人全体の性質として一般化することはできない。
一方、特殊詐欺グループが、生活に困っている外国人や若者を「現金を受け取るだけ」「荷物を運ぶだけ」「簡単なアルバイト」と勧誘し、末端の実行役として利用する危険はある。
外国人を雇用・支援する企業、大学、日本語学校、監理団体、登録支援機関などは、次の内容を多言語で周知する必要がある。
- 他人から現金やカードを受け取る仕事に応募しない
- SNSの高額即金求人を信用しない
- 仕事内容を説明しない求人は断る
- 知らない人から受け取った現金を別の人物へ渡さない
- 在留資格や借金を理由に脅された場合は警察へ相談する
- 途中で犯罪と気付いた場合は、実行前に離脱して相談する
犯罪への関与が証拠によって認められれば、国籍を問わず厳正な処分が必要である。同時に、匿名の指示役が実行者を使い捨てる構造を断つため、勧誘段階での予防教育も求められる。
指示役と被害金の流れの解明が必要
受け子を逮捕しても、偽サイトを作った人物、被害者へ連絡した人物、現金回収を指示した人物、最終的に利益を得た人物を摘発しなければ、別の実行役を使って犯行が繰り返される。
警察には、次の点の解明が求められる。
- 被害女性を偽サイトへ誘導した経路
- 使われた電話番号、SNSアカウント、端末
- 偽サイトの運営者とサーバー情報
- 受け子への指示方法と報酬
- 現金800万円の受け渡し先
- 同様の被害者がほかにいないか
- 国内外の犯罪グループとの関係
高額な現金が対面で回収されていることから、受け子の逮捕だけでなく、現金の運搬・保管・送金に関与した人物まで捜査を広げる必要がある。
賛成・反対・中立の視点
厳正な処分を求める視点
78歳女性を偽サイトへ誘導し、税金名目で800万円を手渡させた疑いは悪質である。犯行を認識して現金を受け取ったことが立証された場合、受け子であっても被害額と役割に見合った厳正な刑事処分を求める立場である。
容疑否認を踏まえた立証を求める視点
男は「覚えていません」と容疑を否認している。現金を受け取った人物と同一か、詐欺と認識していたか、氏名不詳者らとの共謀があったかを客観的証拠で立証すべきだという考え方である。
指示役摘発と予防を重視する中立的視点
受け子の逮捕だけで終わらせず、偽サイト運営者、電話役、指示役、現金回収役まで摘発する必要がある。同時に、投資利益の出金前に税金や手数料を要求する手口を高齢者や家族へ広く周知する立場である。
クロ助とナルカの視点


















編集部まとめ
- 事件の要点:京都市山科区の78歳女性から、投資資金の税金名目で現金800万円をだまし取った疑いにより、ベトナム国籍の34歳男が逮捕された。
- 主な手口:証券会社を装ったサイトへ誘導し、投資利益や資金に関する税金を支払う必要があると信じ込ませたとされる。
- 現金の受け渡し:被害女性は山科区内の路上で現金800万円を手渡したとされ、警察は男を受け子とみている。
- 容疑者の供述:男は「覚えていません」と容疑を否認している。詐欺への認識、共謀、現金受領の事実を証拠で立証する必要がある。
- 被害防止:投資利益の出金前に税金、手数料、保証金を追加請求された場合は詐欺を疑い、現金を渡す前に金融庁登録や公式窓口を確認する。
- 捜査の焦点:偽サイトの運営者、連絡役、受け子への指示役、現金800万円の最終的な移転先を解明する必要がある。
出典
- 京都新聞「投資資金の税金名目で800万円だまし取る 『受け子』容疑でベトナム国籍の男逮捕」2026年7月21日
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