西濃運輸が外国人5人を集配業務に初配置 物流人手不足の転換点
西濃運輸は2026年6月15日、同社初となる外国人の営業乗務社員5人を、6月10日から順次、岐阜東濃支店、岐阜支店、長浜支店に配属したと発表した。営業乗務社員は、荷物の集荷・配達に加え、顧客対応、荷扱い、安全確認などを担う現場職であり、外国人材を同職種に配置するのは同社で初めてとなる。
今回配属されたのは、今春入社した外国人ドライバー7人のうち、日本で有効な運転免許証の取得、企業理念や規則の研修、日本語研修などを修了した5人である。西濃運輸は、物流業界で深刻化するドライバー不足に対応するため、今年度中に営業乗務社員として計13人の外国籍従業員を採用する計画を示している。
日本の物流は、少子高齢化、労働時間規制、いわゆる「物流2024年問題」に直面している。外国人ドライバーの活用は、輸送網を維持するための現実的な選択肢となりつつある一方で、運転免許、交通ルール、顧客対応、日本語理解、事故時対応など、企業側の教育責任がより重くなる分野でもある。
新人記者ナルカ


発表の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発表日 | 2026年6月15日 |
| 企業 | 西濃運輸株式会社 |
| 内容 | 外国人営業乗務社員5人を集配業務に初配置 |
| 業務開始 | 2026年6月10日から順次 |
| 配属先 | 岐阜東濃支店、岐阜支店、長浜支店 |
| 対象者 | 今春入社した外国人ドライバー7人のうち、研修等を修了した5人 |
| 今年度計画 | 営業乗務社員として外国籍従業員を計13人採用予定 |
| 主な対策 | 多言語マニュアル、動画教材、対話型AI、日本語研修 |
西濃運輸の発表によると、同社は今年3月、ベトナム人ドライバーを拠点間輸送を担う路線乗務社員として単独乗務させていた。今回の違いは、顧客対応を伴う集荷・配達業務を担う「営業乗務社員」として外国人材を配置した点にある。
集配業務は、単に車両を運転するだけではない。荷物の受け渡し、不在時対応、荷扱い、伝票確認、顧客からの問い合わせ、交通安全、時間管理などが一体となる。外国人材をこの領域に配置するには、運転技術だけでなく、現場判断と日本語コミュニケーションを含む総合的な教育が必要となる。
なぜ外国人ドライバーの配置が進むのか
背景には、物流業界の人手不足がある。トラック輸送は、国内物流の基盤であり、企業間取引、ネット通販、店舗配送、地域生活を支えるインフラである。しかし、長時間労働の是正や時間外労働規制の影響により、従来と同じ人員体制では輸送力を維持しにくくなっている。
国土交通省の資料でも、物流の2024年問題では、トラックドライバーの労働時間削減により長距離輸送が難しくなることや、輸送スケジュールへの影響が指摘されている。国内人材の確保、賃上げ、荷待ち時間の削減、共同配送、モーダルシフトなどの対策と並び、外国人材の活用は一つの補完策として位置づけられる。
出入国在留管理庁によると、2025年末の在留外国人数は412万5,395人となり、初めて400万人を超えた。日本社会全体で外国人住民・外国人労働者の存在感が高まるなか、物流、介護、建設、外食、宿泊など、人手不足分野で外国人材の受け入れは今後さらに拡大する可能性がある。
自動車運送業と特定技能制度
自動車運送業分野では、在留資格「特定技能1号」による外国人材の受け入れが可能な分野として制度整備が進められている。国土交通省は、自動車運送業分野における特定技能外国人の受け入れについて、一定の専門性・技能を有し、即戦力となる外国人材を受け入れる制度であると説明している。
ただし、トラック運転は安全リスクを伴う業務である。制度上の資格を満たすだけでは十分ではなく、日本の道路標識、交通法規、危険予測、配送先でのマナー、事故時の通報、荷主・顧客とのやり取りを理解できる教育体制が不可欠となる。
特に集配業務では、地域住民や企業担当者と直接接する場面が多い。言葉の問題だけでなく、「不在時にどう対応するか」「荷物破損時にどう報告するか」「敷地内でどこに車を止めるか」「時間指定に遅れる場合どう連絡するか」といった細かな実務判断が求められる。
西濃運輸の教育体制
西濃運輸は、外国人ドライバーの早期戦力化に向け、教育体制を強化している。公式発表によると、品質方針、安全方針、作業動線などをまとめた計55ページ相当のマニュアルを、英語、ヒンディー語、ベトナム語、インドネシア語、ネパール語、ミャンマー語に翻訳し、動画化した。
さらに、翻訳動画を対話型AIと連携させ、「点呼」「不在時の対応」などのキーワードを入力すれば、必要な作業手順や教育動画を呼び出せる仕組みを整備したという。これは、外国人材に対して「日本語で頑張れ」と求めるだけでなく、業務手順を母語でも確認できるようにする取り組みである。
この点は、外国人労働者の受け入れをめぐる重要な論点である。受け入れ企業が教育や管理を十分に行わず、現場に丸投げすれば、事故、クレーム、労務トラブルにつながる。一方で、企業がマニュアル、動画、AI、実践研修を組み合わせれば、外国人材の能力を引き出し、現場の安全性を高めることができる。
国益的に見た利点と課題
利点:物流サービスの維持
日本の物流網が不安定になれば、企業活動だけでなく、地域生活にも影響が出る。地方では、配送網の維持が医療品、食品、日用品、事業資材の供給に直結する。人手不足が深刻化するなか、適切な資格と教育を受けた外国人材を活用することは、社会インフラを守るという意味で国益に資する側面がある。
課題:安全と顧客対応の標準化
一方で、運送業務は事故が発生すれば人命に関わる。外国人材を配置する場合、日本語理解、道路交通法、運転免許、点呼、アルコールチェック、事故報告、荷扱い品質を標準化しなければならない。単なる人手不足対策として採用人数を増やすだけでは、現場の不安は解消されない。
制度面:受け入れ企業の責任が鍵
外国人労働者の問題は、本人の努力だけでなく、企業側の管理体制に大きく左右される。特に運送業では、安全教育、生活支援、労働時間管理、健康管理、言語支援が必要となる。西濃運輸のように大手企業が多言語教育とAI教材を整備する動きは、今後の標準モデルになり得る。
賛成・反対・中立の視点
受け入れ拡大に前向きな視点
物流業界の人手不足は深刻であり、国内人材だけで現場を維持することが難しい地域や職種もある。適法な在留資格、運転免許、教育体制が整っているなら、外国人ドライバーの配置は現実的な対応策である。多言語教材やAIを活用すれば、外国人材の定着と安全教育を同時に進められる。
慎重な視点
配送業務は地域住民や企業と直接接するため、日本語、接客、地理、交通ルールへの理解不足がトラブルにつながる可能性がある。特に交通事故や荷物事故が起きた場合、説明責任は企業にある。採用数の拡大を急ぐ前に、研修の実効性、事故率、クレーム対応、労働環境を検証すべきだという考え方もある。
中立的な視点
重要なのは、外国人を受け入れるか否かという二択ではなく、どの条件なら安全に受け入れられるかである。免許、在留資格、日本語、マニュアル、同乗研修、事故時対応、労務管理を制度化し、企業ごとの取り組みを可視化することが必要となる。適正な受け入れは物流を支えるが、管理不十分な受け入れは社会不安を拡大させる。
今後注目すべきポイント
| 注目点 | 確認すべき内容 |
|---|---|
| 安全運転 | 事故・違反件数、点呼体制、アルコールチェック、同乗研修 |
| 顧客対応 | 不在時対応、荷物破損時対応、問い合わせ対応、日本語力 |
| 定着率 | 離職率、勤務継続年数、生活支援の有無 |
| 教育効果 | 多言語マニュアル、動画教材、AI検索機能の実用性 |
| 制度整合性 | 在留資格、運転免許、労働時間管理、賃金水準 |
今回の西濃運輸の取り組みは、外国人労働者の受け入れが「単純作業」から、より高度な現場判断を伴う業務へ広がっていることを示している。集配業務は、配送品質と地域社会の信頼が直接結びつく職種であるため、今後は採用人数だけでなく、教育効果や安全実績も検証する必要がある。
また、外国人ドライバーの受け入れを進める企業が増えれば、業界全体で多言語教材、事故時対応マニュアル、顧客対応フレーズ、道路交通法教育などの標準化が求められる。個社の努力だけではなく、国土交通省、業界団体、自治体、入管当局が連携し、現場で使える制度設計を進めることが重要である。
クロ助とナルカの視点


















編集部まとめ
- 事実関係:西濃運輸は2026年6月10日から順次、外国人営業乗務社員5人を岐阜東濃支店、岐阜支店、長浜支店へ配属した。
- 背景:物流業界では少子高齢化と物流2024年問題を背景に、ドライバー不足が深刻化している。
- 企業対応:西濃運輸は55ページ相当のマニュアルを6言語に翻訳し、動画化と対話型AI連携で教育体制を整備した。
- 国益的示唆:外国人ドライバーの活用は物流維持に資する一方、安全運転、顧客対応、労務管理を企業が責任を持って標準化する必要がある。
- 今後の焦点:採用人数だけでなく、事故率、定着率、顧客対応品質、教育効果を継続的に検証すべきである。











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