物流業界で外国人ドライバーの採用が広がる一方、企業側は「定着」と「育成」に課題を抱えている。ハフポスト日本版は5月18日、外国人材採用支援を行うG.A.グループの調査をもとに、外国人ドライバーの定着を妨げる要因として、言語・文化の違いによる孤立、生活基盤の構築、家族帯同の難しさなどを報じた。
政府は2024年、特定技能制度に「自動車運送業」を追加し、トラック、バス、タクシー分野で外国人ドライバーの受け入れを進めている。背景には、物流の2024年問題と深刻なドライバー不足がある。しかし、安全運転、荷主対応、接客、交通ルール理解が求められる運送業では、単に人材を採用するだけでは現場に定着しない。企業側には、日本語教育、生活支援、安全教育、地域との接点づくりまで含めた受け入れ体制が問われている。
新人記者ナルカ


外国人ドライバー採用の理由、最多は「人手不足」
- 報道日:2026年5月18日
- 媒体:ハフポスト日本版
- 調査主体:G.A.グループ
- 調査期間:2026年4月16〜21日
- 調査対象:外国人ドライバーを採用している物流企業の管理職281人
- 採用理由の最多:ドライバー不足の解消、80.4%
- 次点:社内の多様性の推進、31.3%
- その他:若年層の人材確保、26.3%/人件費の削減・抑制、21.4%/海外事業や外国人顧客への対応、18.2%
- 主な課題:日本語でのコミュニケーション、日本の商習慣・接客マナー、交通ルール・安全基準の指導
調査結果の主なポイント
| 項目 | 割合 | 内容 |
|---|---|---|
| ドライバー不足の解消 | 80.4% | 外国人ドライバー採用理由で最多 |
| 社内の多様性の推進 | 31.3% | 人材構成の多様化を目的とする回答 |
| 若年層の人材確保 | 26.3% | 高齢化する運送業界で若い人材を確保する狙い |
| 人件費の削減・抑制 | 21.4% | 低コスト人材として期待する企業も存在 |
| 海外事業・外国人顧客対応 | 18.2% | 多言語対応や外国人顧客への対応力強化 |
定着の壁は「言語・文化・生活基盤」
調査では、外国人ドライバーの育成や定着で感じる課題として、「日本語でのコミュニケーション」が53.0%で最多となった。続いて、「日本の商習慣や接客マナーの指導」が48.4%、「日本の交通ルールや安全基準の指導」が47.3%とされる。
運送業は、単に車を運転すればよい仕事ではない。配送先でのあいさつ、納品ルール、時間指定、荷扱い、事故時対応、クレーム対応、点呼、アルコールチェック、日報など、日本語と日本の職場文化への理解が必要になる。言葉が通じにくいまま現場に出れば、本人の孤立だけでなく、事故や誤配送、荷主トラブルにもつながりかねない。
外国人ドライバー定着の主な課題
| 課題 | 現場で起きるリスク |
|---|---|
| 日本語でのコミュニケーション | 点呼、配送指示、事故報告、荷主対応で誤解が生じる |
| 商習慣・接客マナー | 納品時の対応、時間厳守、クレーム対応で摩擦が起きる |
| 交通ルール・安全基準 | 標識理解、交通マナー、事故時対応に不安が残る |
| 文化の違いによる孤立 | 職場に相談できず、早期離職につながる |
| 生活基盤の構築 | 住居、銀行口座、医療、行政手続が不安定になる |
| 家族帯同の難しさ | 長期定着の妨げとなり、短期就労化しやすい |
物流の2024年問題と外国人材受け入れ
外国人ドライバー採用の背景には、物流の2024年問題がある。2024年4月からトラックドライバーに時間外労働の上限規制が適用され、輸送力不足への懸念が高まった。全日本トラック協会も、2024年4月からの時間外労働上限規制と改善基準告示の適用により、労働時間が短くなり、輸送能力が不足する可能性があると説明している。
厚生労働省の「はたらきかたススメ」では、トラックドライバーは全産業平均と比べて年間労働時間が2割程度長く、2030年には34%の輸送力が不足する可能性があると紹介されている。これに対応するためには、荷待ち・荷役時間の短縮など、業務構造そのものの改善も必要とされる。
つまり、外国人ドライバーの採用は人手不足対策の一つではあるが、それだけで物流問題が解決するわけではない。実際、G.A.グループ調査でも、外国人ドライバーを採用している物流企業の約7割が「外国人ドライバーの採用推進のみでは物流の2024年問題を乗り切れない」と回答している。
特定技能「自動車運送業」とは何か
自動車運送業は、2024年に特定技能制度の対象分野に追加された。国土交通省は、自動車運送業分野における特定技能外国人の受け入れについて、トラック、バス、タクシーなどの分野で制度運用を進めている。制度に関する問い合わせ先として、国土交通省物流・自動車局の担当部署も明示されている。
自動車運送業は、人命と公共交通・物流インフラに関わる分野である。そのため、外国人材の受け入れには、日本語能力、運転免許、技能評価、安全教育、事業者側の支援体制が不可欠となる。制度の目的は人手不足の補完だが、現場で安全を確保できなければ、国民生活に直接影響する。
「人件費削減」が目的になる危うさ
調査では、外国人ドライバーを採用した理由として「人件費の削減・抑制」を挙げた企業も21.4%あった。これは見逃せない数字である。外国人材の受け入れが、単なる低賃金労働力の確保になれば、日本人ドライバーの待遇改善が遅れ、業界全体の賃金水準を下押しするおそれがある。
物流の2024年問題は、長時間労働、低賃金、荷待ち時間、荷主との取引慣行など、業界構造に根ざした問題である。そこに外国人材を投入しても、労働環境が改善されなければ、日本人も外国人も定着しない。外国人ドライバーを受け入れるなら、賃金、労働時間、休息、教育、生活支援を一体で整える必要がある。
交通安全と地域社会への影響
外国人ドライバーの受け入れで最も重視すべきなのは安全である。トラック、バス、タクシーは、一般の外国人労働者以上に国民生活と直接接する。交通ルールや標識の理解、緊急時対応、悪天候時の判断、荷主や乗客への説明が不十分であれば、事故やトラブルにつながる可能性がある。
一方で、正規に訓練を受け、制度に基づいて働く外国人ドライバーまで不安視するのは適切ではない。必要なのは、外国人だから危険と見ることではなく、日本語教育、安全教育、免許制度、事業者責任、事故時対応を明確にし、国民が安心できる受け入れ基準を作ることである。
国益・社会安定の視点
物流は国民生活の基盤である。食品、医薬品、日用品、建設資材、工業部品など、あらゆる物資は物流によって支えられている。ドライバー不足を放置すれば、地方の配送網や企業活動に影響が出るため、外国人材の活用には一定の必要性がある。
しかし、国益の観点からは、外国人ドライバーの受け入れを「人手不足だから増やす」という発想だけで進めるべきではない。日本人ドライバーの待遇改善、省人化、荷待ち削減、取引慣行の是正を進めたうえで、それでも不足する部分を管理型で補うべきである。外国人材を安価な調整弁にすれば、業界の根本改革は遅れ、結果として日本人労働者にも外国人労働者にも不利益となる。
賛否・中立の視点
| 立場 | 主な見方 |
|---|---|
| 受け入れに前向きな立場 | 物流の人手不足は深刻で、外国人ドライバーの活用は現実的な対策である。適切な教育と支援があれば、現場を支える人材になり得るという見方。 |
| 慎重な立場 | 言語、交通ルール、文化、生活基盤の課題が残るまま受け入れを拡大すれば、事故や離職、地域摩擦につながるおそれがあるという見方。 |
| 中立的な立場 | 外国人ドライバーの受け入れは限定的・管理型で進め、日本人ドライバーの待遇改善、安全教育、生活支援、荷主側の取引改善と同時に行うべきという立場。 |
クロ助とナルカの視点


















編集部でまとめ
- 事実確認:ハフポスト日本版は、G.A.グループの調査をもとに、外国人ドライバーの採用実態と定着課題を報じた。
- 採用理由:外国人ドライバーを採用した理由は「ドライバー不足の解消」が80.4%で最多だった。
- 育成課題:「日本語でのコミュニケーション」53.0%、「日本の商習慣や接客マナーの指導」48.4%、「日本の交通ルールや安全基準の指導」47.3%が主な課題として挙がった。
- 制度背景:政府は2024年、特定技能制度に「自動車運送業」を追加し、物流・旅客分野で外国人ドライバーの受け入れを進めている。
- 構造課題:外国人採用だけでは物流の2024年問題は解決せず、荷待ち削減、待遇改善、省人化、荷主側の取引改善が必要である。
- 国益的示唆:外国人ドライバー受け入れは安全教育と生活支援を前提に、低賃金の調整弁ではなく、管理型の人材政策として進める必要がある。











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