愛知県と三重県にある朝鮮学校の幼稚部が、学校教育法で使用を制限されている「幼稚園」の名称をSNS上の募集チラシなどに掲載した疑いがあるとして、愛知、三重両県警が学校教育法違反容疑で捜査していることが報じられた。
朝鮮学校の多くは学校教育法上の「各種学校」として認可されており、同法第1条に定める幼稚園、小学校、中学校、高等学校などの「一条校」とは法的な区分が異なる。同法第135条は、一条校以外の教育施設が一条校の名称を用いることを禁じている。違反が成立した場合、同法第146条により10万円以下の罰金が規定されている。
ただし、現段階は警察が事実関係と法令適用を調べている段階であり、違反が確定したわけではない。SNSのチラシに「幼稚園」と記載した行為が、法律上禁じられた「学校の名称を用いた」場合に該当するかが捜査の焦点となる。
新人記者ナルカ


報道された事案の概要
- 対象地域:愛知県、三重県
- 対象施設:両県内の朝鮮学校に付属する就学前教育施設
- 問題とされた表示:SNS上に掲載された募集チラシなどの「幼稚園」という表記
- 容疑:学校教育法違反の疑い
- 捜査機関:愛知県警、三重県警
- 法的な争点:チラシ上の表示が学校教育法第135条の禁じる学校名称の使用に当たるか
- 現在の段階:捜査中であり、違反の成立や処分は確定していない
報道では、朝鮮学校の幼稚部がSNSに掲載したチラシに「幼稚園」と記載されていたことが端緒とされている。施設の教育内容や民族教育そのものではなく、認可区分と異なる名称を対外的に使用した疑いが問題となっている。
本稿作成時点で、対象施設の正式名称、チラシの掲載時期と掲載期間、誰が作成・公開したのか、警察が任意の事情聴取や資料提出を求めたのかといった捜査の詳細は確認できていない。
学校教育法が定める「幼稚園」とは
学校教育法第1条は、学校として「幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学及び高等専門学校」を掲げている。これらは一般に「一条校」と呼ばれる。
幼稚園は、単に就学前の子どもを預かり教育する施設の一般名称ではなく、学校教育法上の認可を受けた学校種別でもある。設置者、施設設備、教育課程、教員資格、運営などについて法令上の基準が設けられているため、認可を受けていない教育施設が自由に正式名称として使用できる言葉ではない。
一方、学校教育法第134条に基づく各種学校は、学校教育に類する教育を行う施設でありながら、一条校や専修学校とは異なる制度上の区分に置かれる。外国人学校、自動車学校、予備校などが各種学校として認可される場合がある。
第135条は何を禁じているのか
専修学校、各種学校その他第一条に掲げるもの以外の教育施設は、同条に掲げる学校の名称又は大学院の名称を用いてはならない。
これは学校教育法第135条第1項の規定である。幼稚園として認可されていない教育施設が「○○幼稚園」と名乗ると、保護者が認可幼稚園だと受け取る可能性がある。名称規制には、施設の法的な位置付けを明確にし、保護者や利用者の誤認を防ぐ目的がある。
同法第146条は、第135条に違反した者を10万円以下の罰金に処すると定める。刑事罰の上限額は大きくないが、認可制度の信頼性を守るための「名称専用違反の罪」として罰則が置かれている。
| 条文 | 主な内容 | 今回との関係 |
|---|---|---|
| 学校教育法第1条 | 幼稚園、小学校、中学校、高校、大学などの学校種別を列挙 | 「幼稚園」が法定の学校名称である根拠 |
| 同法第134条 | 学校教育に類する教育を行う各種学校について規定 | 朝鮮学校の多くが位置付けられる制度区分 |
| 同法第135条 | 一条校以外の教育施設による学校名称の使用を禁止 | 「幼稚園」表示が違反に当たるかが焦点 |
| 同法第146条 | 第135条違反に10万円以下の罰金 | 違反成立時に適用され得る罰則 |
「幼稚部」という呼称まで禁止されるわけではない
今回の報道を読む際に注意したいのは、「幼稚部」と「幼稚園」を区別することである。朝鮮学校などが内部の課程を「幼稚部」「幼稚班」と呼ぶことまで、今回の報道で違法とされたわけではない。
問題とされているのは、幼稚園としての認可を受けていない就学前施設が、外部向けの募集案内や広告で法定名称の「幼稚園」を使用した疑いである。したがって、「朝鮮学校に幼児教育部門が存在することが違法」という意味ではない。
また、日常会話や報道、支援活動などで就学前施設を便宜上「朝鮮幼稚園」と表現する例もあるが、第三者による一般的な呼称と、施設運営者が自ら正式名称や募集表示として用いる行為が、法的に同じ扱いになるとは限らない。本件では、表示の主体、掲載場所、文脈、反復性、保護者を募集する広告としての性質などを具体的に確認する必要がある。
SNSのチラシでも名称使用に当たるのか
学校教育法第135条は「名称を用いてはならない」と定める一方、どのような表示媒体なら直ちに違反になるかを条文上細かく列挙しているわけではない。そのため、SNS上のチラシが単なる説明表現だったのか、施設の名称として表示したのかが重要になる。
警察は、チラシ全体の構成、施設名としての見せ方、入園募集との結び付き、公式アカウントによる掲載か、運営法人や学校側の承認があったかなどを確認するとみられる。最終的には、証拠と関係者の説明を踏まえて、送検の可否や検察の処分が判断される。
現時点で「不正使用が確定した」「学校側が故意に保護者を欺いた」と断定することはできない。一方、法令で使用を制限された名称である以上、単なる言い間違いや慣用表現で済むかどうかも、捜査を通じて検証されるべきである。
なぜ名称の区別が必要なのか
保護者の誤認を防ぐ
保護者が施設を選ぶ際、「幼稚園」という表示から、学校教育法に基づく認可、幼稚園教諭の配置、教育課程、施設基準などを備えていると理解する可能性がある。実際の法的区分が各種学校や別種の施設であるなら、名称とともに認可区分を明確に示す必要がある。
公的支援や制度適用の違いを明確にする
一条校の幼稚園、認定こども園、認可保育所、認可外保育施設、各種学校の付属施設では、所管法令、監督機関、公的助成、幼児教育・保育の無償化制度などの扱いが異なる。名称が曖昧になれば、保護者が利用できる制度や施設の法的位置付けを正確に判断しにくくなる。
すべての教育施設に同じルールを適用する
第135条の名称規制は朝鮮学校だけを対象にした規定ではない。専修学校、各種学校、無認可の教育施設など、一条校以外の施設全般に適用される。民族的背景や教育内容ではなく、認可区分と表示が一致しているかを基準に、公平に運用されなければならない。
厳正な法適用と子どもの教育環境は分けて考える
日本国内で教育施設を運営し、保護者を募集する以上、日本の学校制度と表示規制を守ることは当然である。違反が確認された場合は、運営主体に名称の訂正と再発防止を求め、故意性や使用状況に応じて法令に基づく処分を行う必要がある。外国人学校や民族学校であることを理由に例外扱いするべきではない。
同時に、捜査対象は施設の名称表示であり、通う子どもや保護者の属性ではない。子どもへの中傷、民族全体への敵意、施設への威圧行為などに問題を広げるべきではない。法令違反の疑いを検証することと、民族差別を容認することは全く別の話である。
制度の信頼を守る最も確実な方法は、施設側が「幼稚部」など法的区分と矛盾しない名称を使用し、認可状況、教育内容、教員体制、費用、公的支援の対象範囲を保護者へ分かりやすく開示することである。行政も、違反の疑いを把握した段階で是正方法を具体的に示し、同様の表示が他の各種学校や民間教育施設にないか、公平に点検する必要がある。
賛成・反対・中立の視点
厳正な取り締まりを求める視点
認可幼稚園とそれ以外の施設を区別する名称規制は、保護者の誤認防止と制度への信頼に直結する。長年の慣用表現だったとしても、公式の募集チラシで法定名称を使用していたのであれば、運営主体には説明と是正が必要だという考え方である。
過度な刑事対応を懸念する視点
「幼稚園」という語が施設の正式名称ではなく、就学前教育を説明する一般的な表現として使われただけなら、まず行政指導や表示訂正で対応すべきだとの見方もあり得る。掲載回数、故意性、保護者の誤認や具体的被害の有無を踏まえ、刑事処分の必要性を慎重に判断すべきだという立場である。
制度の明確化を求める中立的視点
各種学校の付属施設が広告で使用できる表現について、行政が具体例を示し、事前相談を受けられる仕組みを整えることが再発防止につながる。違反の有無を個別の刑事事件だけで判断するのではなく、全国の外国人学校、インターナショナルスクール、民間幼児教育施設に共通する表示ガイドラインを明確にする必要がある。
クロ助とナルカの視点


















編集部まとめ
- 事案の要点:愛知、三重両県内の朝鮮学校幼稚部がSNSのチラシなどで「幼稚園」と表示した疑いがあり、両県警が学校教育法違反容疑で捜査していると報じられた。
- 法的根拠:学校教育法第135条は、一条校以外の教育施設による幼稚園などの学校名称の使用を禁じている。
- 罰則:違反が成立した場合、同法第146条により10万円以下の罰金が規定されている。
- 捜査の焦点:SNSの表示が施設の正式名称として用いられたのか、掲載主体や故意性、募集広告としての性質が確認される。
- 現段階の注意:違反は確定していない。「幼稚部」の存在自体や民族教育そのものが捜査対象になったわけではない。
- 制度上の課題:すべての教育施設に名称規制を公平に適用し、保護者が認可区分を判断できる表示ガイドラインを整える必要がある。
出典
- 産経新聞「朝鮮学校幼稚部、法令で禁じられた『幼稚園』名称を不正使用か 学校教育法違反容疑で捜査 SNSのチラシに『幼稚園』」
- e-Gov法令検索「学校教育法」
- 法務省・日本法令外国語訳データベース「学校教育法」
- 宮城県「主な罰則規定」学校の名称専用違反の罪













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