訪日外国人旅行者の回復に伴い、国際運転免許証などを使ってレンタカーを運転する外国人による交通事故が増えている。弁護士JPニュースが2026年9月8日に報じた警察庁の集計によると、国際免許などを所持する外国人運転者のレンタカー事故は、2020年の47件から2025年には212件へ増加した。
国土交通省の資料では、訪日外国人が運転するレンタカーは、日本人運転者と比べて交差点で右折する際の事故割合が約2.7倍高いとされる。日本とは反対の右側通行に慣れた旅行者が多いことや、標識、道路構造、右折時の対向車確認などへの不慣れが背景にある可能性が指摘されている。
国は2026年7月、新千歳空港、福岡空港、那覇空港の周辺で、右折経路を示すカラー舗装やラバーポール、注意喚起標識などを使った事故対策を本格展開すると発表した。事故を起こした旅行者が帰国した場合の損害賠償、言葉の違いによる現場確認、保険の補償範囲も重要な課題となる。
新人記者ナルカ


公表された事故データ
| 項目 | 公表・報道された内容 |
|---|---|
| 2020年の事故件数 | 国際免許などを所持する外国人運転者によるレンタカー事故47件 |
| 2025年の事故件数 | 同212件 |
| 右折時の事故割合 | 日本人運転者と比べて約2.7倍 |
| 先行対策地域 | 新千歳空港、福岡空港、那覇空港の周辺 |
| 主な対策 | 右折動線のカラー舗装、誤進入を防ぐラバーポール、注意喚起標識など |
47件から212件への増加は約4.5倍になる。ただし、2020年は新型コロナウイルスによる国際移動の制限が始まった年であり、単純に運転技術が悪化したと評価することはできない。訪日客数やレンタカー利用回数そのものが増えれば、事故の実数も増える。
事故リスクを正確に比較するには、貸出台数、走行距離、滞在地域、免許取得国、道路環境などを考慮した事故率を見る必要がある。一方、右折時の事故割合が日本人より高いというデータは、交差点対策を重点化する根拠になる。
なぜ右折時の事故が起きやすいのか
左側通行と右側通行の違い
日本は車両が左側を通行するが、世界には右側通行の国・地域が多い。右側通行に慣れた運転者が日本で右折すると、進入すべき車線を間違えたり、対向車との距離や進行方向を誤認したりする可能性がある。
国土交通省は、先行対策を実施する3空港では、右側通行の国・地域から来た外国人旅客が多いことを理由の一つに挙げている。右折動線を路面上に色で示すことや、反対車線へ入れないようポールを置くことは、言葉だけに頼らない対策となる。
標識と独自の交通ルール
一時停止、踏切、右左折、駐車禁止、最高速度などは、標識の形や道路上の表示が国によって異なる。日本では踏切の直前で一時停止する必要があり、信号機のない横断歩道では歩行者優先が求められる。旅行者が母国と同じ感覚で運転すれば、本人に悪意がなくても危険が生じる。
カーナビや翻訳アプリだけでは、瞬間的な危険判断まで補えない。貸し出し時に多言語の冊子を渡すだけでなく、重要なルールを動画で確認し、理解度を簡単に確認する方法も検討対象となる。
旅行中の疲労と不慣れな車両
長時間の飛行後に空港でレンタカーを借り、そのまま高速道路や山間部へ向かう旅行者もいる。時差、睡眠不足、土地勘のなさ、カーナビ操作への注意分散が重なれば事故リスクが高まる。
冬の北海道では雪道や凍結路、沖縄では強い雨や台風、観光地では狭い道路や歩行者の多さなど地域固有の危険がある。夏用タイヤで雪道へ向かう、通行困難な道をカーナビ通りに進むといった行動を防ぐには、地域別の説明が必要だ。
国土交通省が3空港周辺で対策を本格化
国土交通省は2026年7月、訪日外国人レンタカーの事故増加を受け、これまでの社会実験で得た知見を使って安全対策を本格展開すると発表した。対象は新千歳、福岡、那覇の各空港周辺を走る直轄国道である。
対策には、右折時に進むべき方向を分かりやすく示す路面表示、反対車線への誤進入を物理的に防ぐラバーポール、左側通行を伝える標識などが含まれる。文字を読めなくても形と色で判断できる設計は、外国人だけでなく高齢者や初めて地域を運転する日本人にも役立つ可能性がある。
過去にはETC2.0やドライブレコーダーの急ブレーキデータを用い、外国人旅行者が危険な操作をしやすい地点を特定する実験も行われた。事故が起きてから運転者を処罰するだけでなく、道路側を改善して事故を防ぐ考え方である。
事故後に旅行者が帰国した場合の損害賠償
外国人旅行者が事故後に帰国したからといって、損害賠償責任が当然に消えるわけではない。通常のレンタカーには自賠責保険や任意保険が付帯し、契約条件の範囲で被害者への補償が行われる。
しかし、無免許運転、飲酒運転、契約者以外の運転、警察への未届け、重大な契約違反などがあれば、保険・補償制度の適用関係が複雑になることがある。また、事故現場で双方の説明が食い違い、運転者が短期間で帰国すれば、追加の聞き取りや証拠収集が難しくなる。
被害者側にとって重要なのは、警察への通報、現場写真、相手の免許証と旅券情報、レンタカー会社、保険会社、目撃者、防犯カメラの有無を早期に確認することである。けががある場合は軽傷に見えても医療機関を受診し、診断記録を残す必要がある。
レンタカー会社に求められる確認
- 日本国内で有効な国際運転免許証・外国免許証・翻訳文などの確認
- 左側通行、右折、踏切、一時停止、横断歩道に関する説明
- 実際に運転する全員の登録
- 事故時の110番通報とレンタカー会社への連絡方法
- 保険・免責補償・ノンオペレーションチャージの説明
- 雪道、山道、災害時など地域固有の危険情報
受付時間を短縮するため説明を形式化しすぎると、利用者が内容を理解しないまま署名する可能性がある。多言語動画、短い確認テスト、運転シミュレーターなどを組み合わせ、重要事項を理解したことを確認する仕組みが望ましい。
SNSで広がる「貸す側にも責任を」の声
Xでは「利益を得るレンタカー会社も安全説明に責任を持つべきだ」「帰国後に被害回収が難しくならない制度が必要」「国際免許を見せるだけで貸すのではなく、日本のルールを確認させるべきだ」といった意見が投稿された。
一方、すべての外国人運転者を危険と決めつけることはデータの読み方として適切ではない。事故件数は旅行者数や利用台数に左右され、交通ルールを守って安全に運転する外国人も多い。対策は国籍による一律排除ではなく、免許の有効性、ルール理解、保険、道路設計に基づくべきである。
賛成・反対・中立の視点
貸し出し条件の厳格化を求める視点
右折事故割合が高い以上、貸し出し前講習や理解度確認を義務化し、危険な場合は貸し出しを断れる制度が必要だという立場である。被害者保護のため、十分な任意保険加入も求められる。
過度な規制に慎重な視点
外国人のレンタカー利用は地方観光を支えており、過度な手続や一律制限は地域経済を損なう可能性がある。道路表示や多言語案内など、利用を妨げない予防策を優先すべきだという考え方である。
中立的な視点
事故件数だけでなく走行距離当たりの事故率を継続公開し、事故が集中する地点と行動を特定したうえで、貸し出し、道路、保険、警察対応を組み合わせることが現実的である。
クロ助とナルカの視点


















編集部まとめ
- 事故件数:国際免許などを持つ外国人のレンタカー事故は、2020年47件から2025年212件へ増加した。
- 事故の特徴:右折時の事故割合は日本人運転者の約2.7倍とされる。
- 国の対策:新千歳、福岡、那覇の3空港周辺で、カラー舗装やラバーポールなどの対策を本格化する。
- 被害者保護:帰国しても賠償責任は消えないが、現場の立証や追加確認が難しくなる可能性がある。
- 今後の課題:有効免許、貸し出し前講習、保険加入、事故率の公開、道路設計を組み合わせる必要がある。
出典
- 弁護士JPニュース「外国人レンタカー“右折事故”日本人の2.7倍」2026年9月8日
- 国土交通省「訪日外国人レンタカーの交通安全対策を空港周辺地域で本格展開します」2026年7月17日
- 内閣府「令和元年交通安全白書 第3章」
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