全国の主婦層を対象とした意識調査で、日常生活において外国人と接する機会が「ほとんどない」「全くない」と答えた人が50.5%だった。一方、スーパーやコンビニで外国人スタッフから接客を受けることについては、75.2%が「好意的」「気にならない」と回答した。
調査を実施したのは、外国人技能実習生や特定技能外国人の受け入れ支援を行う21世紀マンパワー事業協同組合。2026年9月1日から5日にかけて、全国の主婦層を対象にインターネット調査を行い、9月23日に結果を公表した。
公表資料は、外国人との接点が乏しい状態では「治安」「マナー」などへの不安が表れやすい一方、実際の接客場面では不安が後退する可能性を指摘している。ただし、今回の結果だけで「外国人への不安は交流不足が原因」と断定することはできない。対象者の範囲、回答者数、質問文、調査主体の立場を確認したうえで読む必要がある。
新人記者ナルカ


調査の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 調査名称 | 主婦層に聞いた外国人との共生社会に関する意識調査 |
| 調査対象 | 全国の主婦層・男女 |
| 調査方法 | インターネット調査 |
| 実施期間 | 2026年9月1日~9月5日 |
| 調査主体 | 21世紀マンパワー事業協同組合 |
| 有効回答数 | 調査概要では302人、本文では303人と記載 |
| 公表日 | 2026年9月23日 |
調査主体は、ミャンマー、ベトナム、インドネシアを中心とする外国人材の受け入れ支援、教育、生活支援などを行う協同組合である。外国人材の受け入れに関係する当事者が実施した自主調査であり、政府統計や中立的な学術調査と同じ性質ではない。
公表された主な結果
- 日常生活で外国人と接する機会が「ほとんどない・全くない」:50.5%
- スーパーやコンビニの外国人スタッフによる接客を「好意的・気にならない」と回答:75.2%
- 接点が乏しい層の不安として「治安」「マナー」が上位と説明
- 調査主体は、正確な情報と日常的な接点を増やすことが不安の緩和につながる可能性を指摘
この二つの数字から読み取れるのは、「日常的な交流が少ない」と答える人が多い一方、生活に身近な店舗で外国人スタッフからサービスを受けることへの拒否感は、少なくとも今回の回答者では限定的だったという点である。
ただし、「外国人との接点」と「外国人スタッフによる接客」は同じ概念ではない。短時間の買い物、職場での同僚関係、近隣住民との付き合い、学校や地域活動での交流では、接触の深さや利害関係が異なる。接客への評価が肯定的だからといって、外国人受け入れ政策全般への賛成を意味するわけではない。
回答数が302人と303人で一致していない
公表資料には確認すべき不整合がある。本文では「全国の主婦層303名に実施」と書かれている一方、ページ下部の調査概要では「有効回答数302名」と記載されている。
単純な誤記なのか、303人から無効回答1人を除外して302人を集計したのか、公表資料からは判断できない。割合の分母が302人か303人かによって、実人数への換算結果も変わる。50.5%は302人を分母とすれば約153人、303人なら約153人で大きな差は生じないが、調査報道では分母の明確さが信頼性の基本となる。
今回の調査だけでは因果関係を証明できない
調査主体は、「知らないこと」が不安の背景にある可能性を示している。しかし、今回公表された情報だけでは、外国人との接点が少ないために不安が強くなったのか、不安が強い人が接触を避けているのか、居住地域や年齢など別の要因が影響したのかを区別できない。
因果関係を確かめるには、接触頻度別の不安度、年齢、地域、職業、所得、外国語経験、外国人住民の割合、情報源などを統制した分析が必要になる。一定期間の交流前後で意識がどう変化したかを追う調査も有効である。
したがって、今回の結果は「接点の乏しさと不安の間に関連がある可能性を考える材料」と位置付けるべきであり、「交流すれば治安やマナーへの懸念は解消する」と結論付けることはできない。
調査対象が「主婦層」である点
対象は全国の主婦層で、「男女」と記載されている。専業主婦だけなのか、パートやフルタイム就労を含むのか、年齢構成、地域別人数、外国人との接触が多い都市部と少ない地域の割合などは、公表ページでは確認できない。
主婦層は、スーパー、コンビニ、学校、医療、地域活動など生活に密着した場面を評価するうえで重要な対象である。一方、その回答を「日本人全体の意識」として一般化することはできない。学生、単身会社員、外国人を雇用する経営者、外国人住民の多い地域の住民では、接点と評価が異なる可能性がある。
標本数も約300人であり、全国世論を精密に推計するには限定的である。回答者の募集方法や割り付け、質問文の順序、選択肢の内容が公開されなければ、調査結果の再現性を十分に検証できない。
調査主体の立場も確認する必要
21世紀マンパワー事業協同組合は、外国人技能実習生・特定技能人材の受け入れ支援を事業としている。外国人材と企業、地域の橋渡しを掲げる組織が、「接点を増やすことが不安の緩和につながる」と解釈しているため、調査結果の説明には組織の問題意識が反映されている可能性がある。
これは調査を無価値にするものではない。当事者だからこそ把握できる現場の課題もある。しかし、読者は調査主体、資金、目的を確認し、第三者調査や公的統計と照合する必要がある。プレスリリースをそのまま「全国民の意識」として報じるのではなく、調査の範囲を明記することが重要である。
公的調査と単純比較できない理由
出入国在留管理庁も、日本人を対象とした「外国人との共生に関する意識調査」を実施している。また、東京都つながり創生財団が公表した「やさしい日本語についての都民の意識調査」では、外国人と接する機会が「ある」「ときどきある」とした人が全体の25.1%だった。
ただし、これらは調査時期、対象地域、回答者属性、質問文、選択肢が異なる。今回の50.5%と東京都調査の25.1%を足し引きして、「接触機会が増えた」「減った」と判断することはできない。
早稲田大学の研究プロジェクトは2025年調査について、外国人の増加で治安・秩序が乱れることへの懸念が強まっているとの分析を公表している。これも、今回の主婦層調査とは対象と設計が違う。複数の調査を読む際は、数字の大小だけでなく「誰に、いつ、どのように質問したか」をそろえて比較する必要がある。
接客場面で肯定的回答が多いことの意味
外国人スタッフの接客を受ける場面で75.2%が「好意的・気にならない」と答えたことは、日常のサービス現場では外国人就労が一定程度受け入れられている可能性を示す。コンビニ、スーパー、飲食店、宿泊、介護などでは外国人材が働く場面が増えており、消費者にとって特別なことではなくなりつつある。
一方、接客への好意的評価は、低賃金労働への依存や外国人労働者の権利問題を解決したことを意味しない。利用者が抵抗なくサービスを受けていても、職場では日本語教育、適正賃金、社会保険、安全管理、差別防止、相談窓口などの整備が必要である。
受け入れ側の「気にならない」という感覚だけで共生を評価せず、働く外国人が安全に生活できているか、日本の法律や地域ルールを理解できているか、住民側の具体的な不安に対応できているかを合わせて見るべきである。
治安・マナーへの不安をどう扱うか
治安やマナーへの懸念を、全て偏見として切り捨てることは適切ではない。ごみ出し、騒音、交通、住宅利用、無許可営業、不法就労など、地域で現実のトラブルが起きている場合は、行政と警察が具体的な事実に基づいて対応する必要がある。
一方、個別事件を外国人全体の傾向として拡大したり、根拠不明のSNS情報を共有したりすれば、不必要な対立を生む。必要なのは、犯罪統計、自治体の相談件数、地域別の実態、違反への処分を公開し、「事実として起きている問題」と「漠然とした印象」を分けることである。
交流事業だけでなく、多言語による生活ルールの周知、違反への公平な対応、日本人住民が相談できる窓口、外国人住民が被害を訴えられる窓口を整えることが、双方の安心につながる。
賛成・反対・中立の視点
交流機会を増やすべきとの視点
実際の接客場面では肯定的な回答が多いことから、学校、職場、地域行事などで自然な接点を増やせば、抽象的な不安を具体的な理解へ変えられる可能性がある。正確な情報と対話の場が必要だという立場である。
交流だけでは解決しないとの視点
治安、マナー、社会保障、住宅、雇用などの課題は、交流イベントだけで解決できない。違反行為への取り締まり、受け入れ人数と地域負担の検証、事業者責任を明確にすべきだという立場である。
中立的な視点
交流促進とルール徹底は対立するものではない。外国人住民を一括りにせず、正規に働き生活する人を地域の一員として扱う一方、犯罪や制度違反には国籍を問わず対応することが制度への信頼を守る。
クロ助とナルカの視点


















編集部まとめ
- 調査結果:外国人との日常的接点が「ほとんどない・全くない」は50.5%、外国人スタッフの接客を「好意的・気にならない」は75.2%だった。
- 調査対象:全国の主婦層を対象とする約300人のインターネット調査であり、日本人全体へそのまま一般化できない。
- 記載の不整合:本文では303人、調査概要では有効回答数302人とされ、分母の説明が一致していない。
- 解釈上の注意:接点の少なさと不安の因果関係を証明した調査ではなく、関連の可能性を考える材料である。
- 政策的示唆:交流機会、正確な情報、多言語でのルール周知、違反への公平な対応を組み合わせる必要がある。
出典
- 21世紀マンパワー事業協同組合「外国人と日常で接する機会が『ほとんどない』人が半数」2026年9月23日
- 出入国在留管理庁「外国人との共生に関する意識調査(日本人対象)」
- 東京都つながり創生財団「令和6年度 やさしい日本語についての都民の意識調査」
- 早稲田大学「日本社会における外国人に対する意識や政治意識の変化を分析」2026年5月25日
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