日本国内には、正規の手続きを経て医師免許を取得し、医籍に登録された外国籍の医師が存在する。厚生労働省の「医師・歯科医師・薬剤師統計」では、外国人医師数を集計する統計表が公開されており、最新の令和6年、2024年統計では、e-Statの第47表「外国人医師数,年齢階級、性、主たる業務の種別」で確認できる。
一方で、外国籍医師、帰化した元外国籍医師、海外医学部出身の医師、そして無資格で医療行為をした者は、それぞれまったく別の分類である。特に、埼玉県本庄市で報じられた無資格採血事件のような事案を考える際には、「外国人医師がいること」と「医師免許を持たない者が医療行為を行うこと」を混同してはならない。
本記事では、日本の外国籍医師数を確認するための公的統計、帰化者が統計上どう扱われるのか、二国間協定による外国医師の制度、そして無資格医療行為との違いを整理する。
新人記者ナルカ


日本の外国籍医師数は公的統計で確認できる
厚生労働省の「令和6年医師・歯科医師・薬剤師統計」は、2024年12月31日現在の届出に基づく統計である。医師全体では、届出医師数が34万7,772人、うち医療施設に従事する医師が33万1,092人とされている。
外国籍医師については、e-Statで第47表「外国人医師数,年齢階級、性、主たる業務の種別」が公開されている。この表では、年齢階級、性別、主たる業務の種別ごとに外国人医師数を確認できる。
ここでいう「外国人医師」は、あくまで統計上の外国籍医師である。日本国籍を取得した帰化者は、通常この統計では外国人医師としては扱われない。
外国籍医師、帰化者、外国ルーツ医師は同じではない
外国人医師数を読む際に最も重要なのは、用語を分けることである。SNS上では「外国人医師」「外国出身の医師」「帰化した医師」「海外で医学を学んだ医師」が混同されることがある。しかし、制度上は次のように分けて考える必要がある。
| 分類 | 公的統計での把握 | 注意点 |
|---|---|---|
| 外国籍医師 | 把握可能 | 厚労省・e-Statの外国人医師数で確認できる |
| 帰化した元外国籍医師 | 通常は把握困難 | 日本国籍取得後は、外国籍医師統計には基本的に含まれない |
| 外国ルーツ医師 | 公的な統一数値は困難 | 出生地、国籍歴、家庭背景などを含むため定義が不安定 |
| 海外医学部出身医師 | 国籍とは別分類 | 日本国籍でも海外医学部出身者はいる |
| 二国間協定による外国医師 | 別制度として確認可能 | 対象国、枠、診療対象などに制限がある |
| 無資格で医療行為をした者 | 医師ではない | 医師免許がなければ、正規の医師として扱うことはできない |
正規の外国籍医師は、日本の制度に基づいて登録された医師である。一方、医師免許を持たずに採血、診断、治療、検査結果の説明などを行えば、医師法上の問題となる可能性がある。
帰化者を含めた人数はなぜ出しにくいのか
読者の関心としては、「外国籍のまま働く医師」だけでなく、「元外国籍で帰化した医師」も含めた人数を知りたいというものがある。しかし、これは公的統計上、簡単には把握できない。
帰化とは、日本国籍を取得する手続きである。帰化後は法的には日本国民であり、医師統計上も通常は日本国籍の医師として扱われる。したがって、医師統計の「外国人医師数」に、帰化済みの元外国籍医師は基本的に含まれない。
仮に「外国ルーツの医師」という広い概念を使う場合でも、どこまでを含めるかが問題となる。出生時の国籍、出生地、親の国籍、本人の帰化歴、海外医学部出身かどうかなど、定義によって人数は大きく変わる。公的統計として安定して確認できるのは、まずは「外国籍医師」である。






外国人医師が日本で医療を行うには何が必要か
日本で医師として医療を行うには、原則として日本の医師国家試験に合格し、医籍に登録され、医師免許を受ける必要がある。厚生労働省は、外国の医師や歯科医師についても、通常は日本の国家試験に合格し、免許を受ける必要があると説明している。
ただし、例外的に、二国間協定に基づいて一定範囲で診療を認める制度がある。厚生労働省によると、2023年3月時点で、日本は5か国との間で外国医師・歯科医師に関する取り決めを行っている。
| 制度 | 概要 | 注意点 |
|---|---|---|
| 日本の医師国家試験 | 日本で医師免許を取得する通常ルート | 国籍にかかわらず、日本の制度で資格を取得する |
| 医籍登録 | 医師として登録される手続き | 免許の有無を判断する基礎となる |
| 二国間協定 | 特定国の医師に限定的な診療を認める枠組み | 対象国、人数枠、診療対象などに制限がある |
| 無資格医療行為 | 免許なく医業を行う行為 | 医師ではなく、刑事・行政上の問題となる可能性がある |
二国間協定の枠は、外国籍医師全体の数を示すものではない。あくまで、特定国との取り決めに基づく限定的な制度であり、正規の医師免許を持つ外国籍医師数とは分けて見る必要がある。
二国間協定による外国医師の枠
厚生労働省が公表している二国間協定のページでは、対象国と人数枠が示されている。英国は医師7人、フランスは医師1人、シンガポールは医師7人、歯科医師2人、ドイツは医師1人とされている。米国については、人数枠を設けない形の運用とされている。
この制度は、在日外国人などに対する医療提供を想定した限定的な枠組みであり、日本国内の医師不足対策として大量に外国医師を受け入れる制度とは性格が異なる。したがって、二国間協定の人数枠だけを見て「日本にいる外国籍医師は少ない」と判断することも、逆に「外国医師が自由に診療できる」と理解することも正確ではない。
本庄市の無資格採血事件と何が違うのか
埼玉県本庄市では、医師免許がないにもかかわらず、妊娠中の女性に採血を行った疑いで、ベトナム国籍の男が逮捕されたと報じられた。報道によると、容疑者は出生前検査を受けたい人をSNSで募集し、採血を行い、検査結果を渡す対価として料金を受け取っていたとされる。
この事件で問われるべきなのは、外国人であるかどうかではなく、日本国内で医療行為を行う資格があったかどうかである。正規に登録された外国籍医師は、日本の制度上の医師である。一方、医師免許を持たない者が、SNSで依頼者を募り、駐車場などで採血を行うような行為は、医療安全上も制度運用上も大きな問題となる。
特に妊娠中の女性を対象とする検査は、身体的リスクだけでなく、検査結果の説明、心理的支援、医療機関への接続が重要となる。料金の安さや母語対応だけを理由に、正規の医療機関を介さないサービスへ流れる状況があれば、行政や医療機関は情報提供を強化する必要がある。
医師資格はどう確認できるのか
厚生労働省は、医師等資格確認検索の仕組みを公開している。氏名などの情報があれば、医師や歯科医師などの資格確認ができる。ただし、検索対象や表示範囲には条件があり、すべての情報を万能に確認できるわけではない。
医療行為を受ける側としては、次の点を確認することが重要である。
- 正規の医療機関か
- 担当者が医師免許を持つ者か
- 検査の説明、同意、結果説明の体制があるか
- SNSや個人紹介だけで完結していないか
- 料金の支払い先や契約内容が明確か
- 異常結果が出た場合に、医療機関へ接続されるか
外国語での相談や母語対応は重要である。しかし、それは無資格医療行為を許す理由にはならない。むしろ、外国人住民が正規の医療機関へアクセスしやすい情報提供こそ、無許可サービスを防ぐうえで重要となる。
外国籍医師をどう評価すべきか
外国籍医師の存在そのものを問題視することは適切ではない。日本の制度に基づいて資格を取得し、医療機関で勤務する医師は、国籍にかかわらず医療提供体制の一部である。多言語対応や外国人患者の診療、国際医療の現場では、外国籍医師や外国ルーツの医療人材が役割を果たす場面もある。
一方で、医療は人の生命と身体に直接関わる。日本語での診療能力、説明責任、医療記録、医療安全、保険診療制度への理解、患者との意思疎通は、国籍を問わず厳格に求められる。
したがって、論点は「外国籍医師を増やすか減らすか」という単純な話ではない。正規資格を持つ医師は適切に受け入れ、無資格医療行為や非公式な医療ビジネスは厳正に排除する。この区別が必要である。
賛成・反対・中立の視点
外国籍医師の活用に前向きな視点
医師不足地域、多言語対応、外国人患者の増加を考えれば、正規資格を持つ外国籍医師や外国ルーツの医療人材を活用すべきだという考え方がある。日本の医師免許制度に基づく登録と研修を前提にすれば、医療提供体制を補完する可能性がある。
慎重な視点
医療は生命に関わるため、言語能力、制度理解、医療安全、患者説明の質を厳格に確認すべきだという立場である。特に、SNSを通じた非公式サービスや無資格行為が外国人コミュニティ内で広がれば、患者被害が見えにくくなる懸念がある。
中立的な視点
正規の外国籍医師と無資格医療行為を分けることが重要である。必要なのは国籍による排除ではなく、資格確認、医療機関の透明性、多言語での正規医療案内、違法行為への厳正な対応である。
クロ助とナルカの視点


















編集部まとめ
- 統計上の確認:日本の外国籍医師数は、厚生労働省の「医師・歯科医師・薬剤師統計」e-Stat第47表で確認できる。
- 全体医師数:令和6年、2024年統計では、届出医師数は34万7,772人、医療施設従事医師数は33万1,092人である。
- 帰化者の扱い:帰化した元外国籍医師は日本国籍であり、通常は外国籍医師統計には含まれない。帰化者を含む「外国ルーツ医師」の公式総数は把握が難しい。
- 制度上の論点:正規の外国籍医師と、医師免許を持たない者による無資格医療行為は明確に区別する必要がある。
- 今後の課題:資格確認、多言語での正規医療案内、SNS経由の無許可医療サービス対策が重要である。
出典
- 厚生労働省「令和6(2024)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」2025年12月23日公表
- 厚生労働省「令和6年 医師・歯科医師・薬剤師統計 統計表」
- e-Stat「医師・歯科医師・薬剤師統計 令和6年 医師 第47表 外国人医師数,年齢階級、性、主たる業務の種別」
- 厚生労働省「二国間協定に基づく外国の医師又は歯科医師」
- 厚生労働省「医師等資格確認検索」











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