テレビ東京系「ガイアの夜明け」は2026年6月12日、「『多国籍の街』で生きる!」をテーマに、日本で暮らす外国人が初めて400万人を超えた時代の地域共生を取り上げた。
番組の中心の一つとなったのは、東京・新宿区の新大久保だ。かつて「コリアンタウン」として知られた街では、近年、ベトナム、ネパール、バングラデシュ、パキスタンなどアジア圏の店舗が増え、通称「イスラム通り」と呼ばれるエリアも存在感を強めている。
一方で、街の変化は歓迎だけではない。路上へのゴミや物品の放置、店舗の又貸し、日本の商慣習や地域ルールへの理解不足など、生活と商売の現場で摩擦も起きている。番組では、老舗ハンコ店「島村印店」の伊藤節子さんや、新大久保商店街振興組合が中心となって進める「6カ国会議」の取り組みが紹介された。
本記事では、番組内容をもとに、新大久保の多国籍化、商店街が直面する課題、在留外国人400万人時代の地域運営について、公的統計と合わせて整理する。
新人記者ナルカ


ガイアの夜明け「多国籍の街」で生きる!の概要
- 番組名:ガイアの夜明け
- 放送局:テレビ東京系
- 放送日:2026年6月12日
- テーマ:「多国籍の街」で生きる!
- 主な舞台:東京・新宿区の新大久保、愛知県高浜市の団地など
- 主な論点:外国人住民の増加、商店街の多国籍化、生活ルール、防災、住宅、地域交流
番組は、2025年末時点で日本の在留外国人数が初めて400万人を超えたことを背景に、外国人を単なる支援対象ではなく、地域を支える主体としてどう巻き込むかを追った。
出入国在留管理庁によると、2025年末の在留外国人数は412万5,395人で、前年末から35万6,418人、率にして9.5%増加した。これは過去最高であり、初めて400万人を超えた数字である。
| 項目 | 数値 | 出典 |
|---|---|---|
| 2025年末の在留外国人数 | 412万5,395人 | 出入国在留管理庁 |
| 前年末からの増加数 | 35万6,418人 | 出入国在留管理庁 |
| 前年末比 | 9.5%増 | 出入国在留管理庁 |
| 東京都の在留外国人数 | 80万1,438人 | 出入国在留管理庁 |
| 新宿区の外国人住民数 | 5万1,649人 | 新宿区・2026年6月1日現在 |
新宿区全体では、2026年6月1日現在の住民基本台帳人口35万6,134人のうち、外国人住民は5万1,649人だった。区全体でも約14.5%が外国人住民となる計算だ。
番組とテレ東プラスの記事では、大久保エリアの外国籍居住率は2026年5月時点で24%と紹介されている。これは「住民の4人に1人が外国人」という表現に近く、区全体よりもさらに外国人比率が高い地域であることを示している。
新大久保は「コリアンタウン」から多国籍商店街へ
新大久保は長く、韓国料理店や韓流ショップが集まるコリアンタウンとして知られてきた。韓流ブームによって若者や観光客が集まり、飲食・物販の街として発展してきた歴史がある。
しかし近年は、韓国系店舗だけでなく、ベトナム、ネパール、バングラデシュ、パキスタンなどの店舗が増えている。番組関連の記事では、新大久保商店街には140の店が加盟していると紹介され、周辺ではバインミー、ハラル食品、南アジア系の菓子など、多様な商品が見られるようになったとされる。
多国籍化は、街の経済にとって新しい需要を生む。外国人住民や留学生、技能実習生、特定技能労働者、観光客が日常的に利用する店が増えれば、空き店舗の活用や商店街の人流維持にもつながる。
一方で、地元で長年営業してきた日本人経営の店舗が閉店し、後継者不足や事業承継の難しさが進むなかで、街の景観や商習慣は大きく変わる。テレ東プラスの記事では、この10年で日本人経営の31店舗が閉店したことも紹介されている。
老舗ハンコ店を支える「カタカナハンコ」
番組で紹介された「島村印店」は、新大久保商店街にある創業80年規模の老舗ハンコ店である。印鑑離れや取引先の減少により、昔ながらの需要は落ち込んできた。
その一方、店を支えているのが外国人向けのカタカナハンコだ。日本に来たばかりの外国人が銀行口座や郵便局の手続きで印鑑を必要とする場面はまだ残っている。氏名をカタカナで表記した印鑑は、外国人住民にとって生活の入口を支える道具となっている。
ここで重要なのは、外国人の増加が単に「支援の対象」を増やしているだけではない点だ。外国人住民は地域の消費者でもあり、働き手でもあり、ときには店舗経営者でもある。街の古い商売が、新しい住民層によって支えられる事例もある。
ただし、外国人向け需要に依存すれば、言語対応、制度説明、契約トラブル、本人確認など、新しい実務課題も発生する。地域商店には、売上機会と管理負担の両方が生じる。
路上放置・又貸し・生活ルールが課題に
番組では、新大久保商店街が抱える課題として、路上へのゴミや物品の放置、車道への空き箱放置、店舗の又貸しなどが取り上げられた。
これらは「文化の違い」だけで片づけられる問題ではない。日本国内で店舗を経営する以上、道路使用、廃棄物処理、消防、食品衛生、賃貸契約、近隣対応といったルールを守る必要がある。
特に店舗の又貸しは、契約上の問題にとどまらない。実際に誰が営業しているのか、責任者は誰か、火災や事故が起きた場合に誰が責任を負うのかが不透明になる。行政や商店街が改善を求めようとしても、名義上の契約者と実際の営業者が違えば、指導が届きにくくなる。
また、路上の物品放置は、通行の妨げや景観悪化だけでなく、災害時の避難路確保にも関わる。人通りの多い商店街では、日常の小さなルール違反が、事故や火災時の大きなリスクにつながり得る。
「6カ国会議」とは何か
新大久保商店街で注目される取り組みが「6カ国会議」である。
番組紹介によると、参加するのは日本、韓国、中国、ベトナム、ネパール、バングラデシュの店主や関係者で、新宿区役所なども関わる。会議は2カ月に1回のペースで開かれ、商店街の課題や地域交流について話し合っている。
2017年の結成当初は、日本、韓国、ベトナム、ネパールの4カ国が中心だったが、その後、商店街以外の事業者や行政も加わり、より広い地域課題を扱う場になった。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名称 | 6カ国会議 |
| 参加国・地域 | 日本、韓国、中国、ベトナム、ネパール、バングラデシュ |
| 主な参加者 | 各国系の店主、商店街関係者、行政関係者など |
| 開催頻度 | おおむね2カ月に1回 |
| 主なテーマ | 商店街ルール、集客、防災、地域交流、生活マナー |
6カ国会議の意義は、行政が一方的に外国人店主へルールを伝える場ではなく、外国人店主自身が地域運営に参加する点にある。
たとえば、自国の客しか訪れず集客に悩むネパール人店主への相談、防災経験が少ないベトナム人住民向けの地震体験車の用意など、生活と商売の両面で交流を広げている。






防災は多文化共生の現実的な入口
多文化共生という言葉は抽象的に聞こえるが、防災は非常に具体的なテーマである。
日本は地震、台風、豪雨、火災などの災害リスクが高い。特に地震経験の少ない国から来た外国人にとって、揺れたときの行動、避難場所、非常持ち出し品、火の始末、安否確認の方法は、日本人と同じ前提では理解されていないことがある。
番組では、ベトナムの住民のために地震体験車を用意した取り組みが紹介された。これは単なるイベントではなく、地域の安全保障に近い意味を持つ。
災害時に言葉が通じず避難が遅れれば、外国人本人だけでなく、周囲の住民や消防、自治体の負担も増える。平時から顔の見える関係をつくり、避難所や商店街のルールを共有しておくことは、地域全体のリスクを下げる。
愛知県高浜市の団地にも共通する問題
番組では、新大久保だけでなく、愛知県高浜市の外国人住民が多い団地も取り上げられた。
高浜市は自動車関連産業が集まる地域で、外国人労働者の比率が高い。番組関連の記事では、市内の外国人住民は約5,000人、住民の約1割を占めると紹介されている。
自動車部品メーカーでは、外国人従業員の住居確保が課題となる。大家側が外国人入居を断るケースがあり、企業の採用や定着にも影響する。
一方、外国人比率の高い団地では、ゴミの分別、土足生活、騒音、共用部の使い方など、生活習慣の違いによるトラブルが発生する。ここでも重要なのは、外国人を排除することではなく、ルールを説明し、守らせる管理体制をつくることである。
番組では、外国人管理人を起用する取り組みも紹介された。同じ移住者としての経験を持つ人が、言葉だけでなく生活感覚の面でも橋渡しをする。これは、新大久保の6カ国会議と同じく、外国人を「指導される側」から「地域を支える側」へ移す試みといえる。
日本社会にとっての論点
在留外国人が400万人を超えた現在、外国人は一部地域だけの例外的存在ではなく、日本社会の労働、消費、地域運営に組み込まれている。
しかし、受け入れ人数の増加に対して、地域側の制度や説明体制が追いついていない場面も多い。商店街、団地、学校、医療、行政窓口、警察、消防など、生活に密着する現場ほど摩擦が見えやすい。
国益の観点から重要なのは、外国人を一律に歓迎するか拒むかではない。日本社会の安全、秩序、税・社会保障制度、地域の生活環境を守りながら、必要な人材と住民をどう受け入れるかである。
そのためには、次の三つが欠かせない。
- 日本の法律、契約、ゴミ、防災、交通などの生活ルールを多言語で明確に伝えること
- ルール違反には国籍を問わず公平に指導・処分すること
- 外国人住民や店主を、地域運営の担い手として参加させること
単に「多文化共生」と掲げるだけでは、地域住民の不満は解消されない。一方で、摩擦だけを強調して排除に傾けば、労働力不足や空き店舗問題を抱える地域はさらに疲弊する。
賛成・反対・中立の視点
共生の取り組みを評価する視点
6カ国会議のように、外国人店主が地域課題の解決に参加する仕組みは、単なる行政指導より効果が期待できる。外国人を地域の担い手にすることで、言語や文化の壁を越えたルール共有が進みやすくなる。
防災訓練、集客相談、商店街イベントなどを通じて顔の見える関係をつくれば、トラブルが起きたときにも対話の窓口が残る。
地域住民の不安を重視する視点
一方で、ゴミの放置、又貸し、騒音、道路の占有などが続けば、地元住民や長年の店主にとっては生活環境の悪化である。外国人店主の事情を理解することと、ルール違反を見逃すことは別問題だ。
地域の我慢に依存した共生は長続きしない。行政、警察、消防、保健所、商店街が連携し、違反には明確な改善要求を行う必要がある。
制度設計を重視する中立的視点
共生を感情論で進めるのではなく、店舗契約、営業許可、廃棄物処理、道路使用、防災、住宅管理など、制度ごとに責任者とルールを明確にする必要がある。
外国人が増える地域では、相談窓口の多言語化だけでなく、商店街組織への参加、自治会との連携、地域防災への参加を制度的に促すことが現実的である。
JP News Focusとしての見方
今回の「ガイアの夜明け」が示したのは、外国人が増えた地域で起きる摩擦は、単に「日本人対外国人」では説明できないということだ。
新大久保では、外国人客が老舗店を支え、外国人店主が商店街の活気をつくる一方、ルール違反や契約問題も生じている。高浜市の団地でも、外国人労働者が産業を支える一方、生活習慣の違いが住民トラブルにつながっている。
つまり、外国人の増加は「利益」と「負担」の両方を地域にもたらす。政策として必要なのは、利益だけを宣伝することでも、負担だけを強調することでもない。
国民生活を守る視点からは、日本のルールを守らない事業者や住民には厳正な対応が必要である。同時に、適法に働き、地域に貢献しようとする外国人を地域運営に組み込む仕組みも必要となる。
クロ助とナルカの視点


















編集部まとめ
- 番組の焦点:テレビ東京「ガイアの夜明け」は、在留外国人400万人超の時代に、外国人と地域がどう共に暮らすかを取り上げた。
- 新大久保の変化:コリアンタウンから、ベトナム、ネパール、バングラデシュなどを含む多国籍商店街へ変化している。
- 地域の課題:ゴミや物品の路上放置、店舗の又貸し、防災意識、商習慣の違いなどが摩擦の要因となっている。
- 6カ国会議の意義:日本、韓国、中国、ベトナム、ネパール、バングラデシュの店主や行政が参加し、地域課題を話し合う実務的な仕組みである。
- 国益的示唆:外国人を労働力や消費者として受け入れるだけでなく、日本の法令・契約・生活ルールを共有し、違反には公平に対応する制度運用が必要である。
- 今後の焦点:商店街、団地、企業、自治体が、外国人住民を地域運営の担い手としてどう組み込むかが問われる。











コメント