高市早苗首相は2026年9月27日、自身のXで外国人の在留資格をめぐる政府の取組を説明した。「経営・管理」の在留資格認定証明書の交付件数が2026年上半期に前年同期比90%減、「企業内転勤」は15%減となったとし、「技術・人文知識・国際業務」の審査強化と永住許可ガイドラインの改定予定にも言及した。
制度の抜け道を塞ぎ、申請者の実際の事業や仕事を確かめることは必要である。しかし、交付件数の減少だけで不正の排除に成功したと結論づけることも、許可基準を厳しくすれば地域の不安が自然に解消すると期待することもできない。求められるのは、審査の正確さ、適法に活動する人の予見可能性、結果を検証できる統計を同時に整える政策だ。
新人記者ナルカ


高市氏の投稿で示された四つの動き
| 在留資格・制度 | 投稿で示された内容 | 確認したい点 |
|---|---|---|
| 経営・管理 | 2025年10月の基準見直し後、2026年上半期の認定証明書交付件数が前年同期比90%減、3,074件減 | 申請件数、許可率、不許可理由、事業の実態 |
| 企業内転勤 | 2026年4月から事業所の実在を示す資料を追加。上半期の交付件数が15%減、739件減 | 書類追加による負担と実態確認の成果 |
| 技術・人文知識・国際業務 | 派遣先・派遣元の業務確認や、該当する仕事での言語能力確認を強化 | 対象となる業務と申請類型の明確化 |
| 永住許可 | 世帯年収、年金見込み、日本語能力、制度理解などを考慮する方向。10月1日にガイドライン改定予定 | 最終文面、適用日、経過措置、例外の扱い |
この表の「交付件数」は、主に日本に入る前の手続きで使われる在留資格認定証明書の交付件数である。国内に既に住む人の在留資格変更・更新、在留外国人全体の人数をそのまま表す数字ではない。政策の効果を評価する際は、どの手続きの何が減ったのかを明確にしなければならない。
経営・管理の90%減は何を示すか
「経営・管理」は、日本で事業を経営・管理する活動のための在留資格だ。出入国在留管理庁は2025年10月16日から基準を改め、3,000万円以上の資本金等、1人以上の常勤職員の雇用、経営者か職員の日本語能力などを主要な条件として示した。書類上だけの会社を使うなど、事業実態を欠く申請を防ぐことには合理性がある。
高市氏のいう「90%減、3,074件減」は変化の大きさを示す。しかし、その内訳は数字だけでは分からない。以前は基準を満たしていた小規模起業家が新条件で申請を控えた可能性、申請の準備に時間がかかっている可能性、審査中の案件が積み上がった可能性なども検証対象になる。90%という数字を「不正の9割を防いだ」と言い換えるのは誤りだ。
政府は、交付件数と併せて申請件数、許可率、審査期間、不許可理由、入国後の事業継続や雇用の実態を時系列で公表すべきである。新基準に適合した企業が実際に事業を営み、地域に雇用や税収を生んでいるかを見て、初めて制度の成果を評価できる。
企業内転勤の15%減も「実態の改善」とは限らない
海外の事業所から国内の関連事業所へ人を移す「企業内転勤」では、2026年4月から国内外の事業所の存在などを確認する書類が追加された。実在しない事業所や転勤実態のない申請を見分ける上で、公的な証拠を求める方向は理解できる。高市氏は同年上半期の認定証明書交付件数が前年同期比15%、739件減ったとした。
ただ、交付件数の減少は真に必要な転勤まで停滞していないかという問いも生む。どの資料で事業所の実在が確認できるのかを明確にし、企業が同じ内容の資料を何度も求められないようにするべきだ。虚偽申請を見抜く力と、通常の企業活動を過度に止めない運用は両立できる。
技人国のB2は全職種一律の日本語要件ではない
「技術・人文知識・国際業務」は、専門知識や外国文化に基づく能力を生かす仕事を対象とする。出入国在留管理庁の案内では、2026年4月15日以降、一定の申請区分について、主に言語能力を使って対人業務などに従事する場合に、業務で使う言語のCEFR・B2相当の能力を示す資料を追加で求めている。派遣形態の就労でも、実際に担当する仕事を確認する書類が用意された。
ここを「技人国の全員に日本語B2が必須」と広げて伝えるべきではない。仕事で用いる言語、対人業務かどうか、申請区分や既に在留する人の業務変更などで取扱いが異なる。審査の厳格化を支持する立場からも、対象を正確に伝えなければ、企業の採用計画と申請者の準備を不必要に混乱させる。
永住許可は10月1日「改定予定」、適用時期は別に確認
高市氏は永住許可ガイドラインを10月1日に改定する予定と述べた。9月30日現在、最終版が公表・施行されたものとして扱うことはできない。出入国在留管理庁が8月に意見募集へ出した改定案では、世帯人数に応じた日本人世帯の平均収入を上回る水準を継続して満たすか、将来の年金受給見込みはどうかを考慮する。日本語能力はB1相当を示し、制度・ルールへの理解なども判断要素とする。
案の概要には、全体の適用は原則として2027年4月から、収入に関する要素は2026年10月からという区別がある。10月1日に文書を改定する予定という説明と、全項目がその日に一斉適用されるという説明は同じではない。最終文書と個別の施行・適用規定が公表された時点で更新する必要がある。
現行制度でも、永住許可は法務大臣が個々の事情を審査する許可である。改定案は日本人・永住者などの配偶者や子、難民などについて、独立生計要件の例外と国益要件の検討を分けている。世帯収入だけで全員を一律に判断するかのような説明は、案の構造を取り違える。既に永住許可を持つ人の資格が今回の申請基準の変更だけで自動的に取り消されるわけでもない。
社説:秩序の実績を「数字の減少」だけで測らない
JP News Focusは、在留資格と活動実態の一致を厳しく確認する方針を支持する。実態のない事業や名目だけの転勤を放置すれば、規則を守る外国人と受け入れ企業に不公平が生じ、住民の信頼も損なわれる。審査官176人、入国警備官50人の計226人の定員増は、丁寧な審査と迅速な処理の双方に使うべきだ。
一方で、厳格化の成果を「交付件数が大きく減った」とだけ示すのでは不十分である。不正の検知数、誤った不許可を是正した件数、審査期間、許可後の活動実態、地域の苦情とその解決状況まで公開する。これなら、取締りが必要な箇所と、単に適法な活動を止めてしまった箇所を区別できる。
永住の基準には、申請者が自分の将来を見通せる明確さが要る。世帯人数に応じた収入基準の算定方法、年金見込みの評価、出産・育児、病気、介護、失業後の再就職などで収入が変動した場合の取扱いを分かりやすく示してほしい。基準を公表しても、窓口ごとに判断が揺れれば制度への信頼は高まらない。
賛成・反対・中立の視点
厳格化を支持する視点
限られた審査体制の中で事業実態や就労内容を丁寧に確認することは、制度の悪用を抑え、納税や法令遵守を重視する人の公平感につながる。永住許可に長期の生活基盤や社会参加を求める考えにも理由がある。
厳格化を懸念する視点
資本金や収入の高い一律基準は、実績のある小規模経営者や、地域を支える仕事に就く人まで排除する可能性がある。家族の事情や景気変動を十分に考慮せず、既に日本に生活基盤を築いた人に突然の変更を適用すれば、制度の予見可能性が失われる。
効果検証を重視する視点
審査を強化するなら、申請から決定までの流れと許可後の実態を継続的に検証する。客観的なデータと不服申立てなどの救済手段を整えれば、取締りを求める声と、適法な申請者の権利への配慮を同じ制度の中で扱える。
クロ助とナルカの視点












編集部まとめ
- 政策の現状:高市氏は「経営・管理」の認定証明書交付90%減、「企業内転勤」15%減と、技人国の審査強化を説明した。
- 数字の限界:交付件数の減少は不正の減少率ではない。申請数や不許可理由、許可後の実態を併せて示す必要がある。
- 永住の見通し:ガイドラインの10月1日改定は予定。意見募集案は収入要素と他の項目で適用時期を分けているため、最終版の確認が欠かせない。
- 編集部の立場:活動実態のない申請には厳正に対処し、適法な事業者や長期居住者には明確な基準と公正な審査を保障すべきだ。
出典
- 高市早苗氏のX投稿、2026年9月27日
- 政府「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」、2026年1月23日
- 出入国在留管理庁「在留資格『経営・管理』に係る上陸基準省令等の改正について」
- 出入国在留管理庁「在留資格『企業内転勤』」
- 出入国在留管理庁「在留資格『技術・人文知識・国際業務』」
- e-Gov「永住許可に関するガイドライン改定案に係る意見募集」
- 出入国在留管理庁「永住許可に関するガイドライン改定(案)(概要)」
- 法務大臣閣議後記者会見、入管庁定員226人増の内訳
内部関連記事
- 在留資格「経営・管理」とは何かを解説
- 在留資格「企業内転勤」厳格化 4月から勤務実態の証明強化
- 永住厳格化に反対する院内集会 許可・取消しガイドライン案の争点を検証
- 入管庁職員を226人緊急増員 不法残留摘発と「技人国」実態調査を強化













コメント