来日後に慢性腎不全を患い、人工透析治療を受けているガーナ国籍の男性が、外国人であることを理由に生活保護申請を却下した千葉市の処分は違法だとして取り消しなどを求めた裁判で、最高裁第2小法廷は男性側の上告を退けた。決定は2026年9月9日付。これにより、男性の請求を退けた一審・二審判決が確定した。
一方、4人の裁判官のうち三浦守裁判長は反対意見を付け、療養目的の在留資格で滞在する外国人に必要な保護を一律に認めないことは「著しく人道に反する」と指摘した。多数意見は上告理由に当たらないとして結論を示したが、生活保護法が外国人を対象としていないこと自体の憲法判断には踏み込まなかった。
新人記者ナルカ


裁判の概要
- 決定日:2026年9月9日
- 裁判所:最高裁判所第2小法廷
- 原告:ガーナ国籍の男性(報道時36歳)
- 被告:千葉市
- 争点:外国人であることを理由とした生活保護申請の却下が違法か
- 結論:男性側の上告を退け、一、二審の敗訴が確定
- 多数意見:上告理由に当たらないとして、憲法判断には踏み込まず
- 反対意見:三浦守裁判長が、療養中の外国人を保護対象から除外することに違憲の問題があると指摘
共同通信などの報道によると、男性は2015年に来日し、兄が経営する会社で働いていた。その後、慢性腎不全を発症して人工透析が必要となり、2021年に千葉市へ生活保護を申請したが却下された。
時系列で見る裁判の経緯
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 2015年 | 男性が来日し、親族が経営する会社で働く。 |
| 来日後 | 慢性腎不全を発症し、人工透析治療が必要になる。 |
| 2021年 | 千葉市に生活保護を申請したが、外国籍などを理由として却下される。 |
| 2024年1月 | 千葉地裁が、生活保護法の「国民」に外国人は含まれないとして請求を退ける。 |
| 二審 | 東京高裁も男性側の請求を退ける。 |
| 2026年9月9日 | 最高裁第2小法廷が上告を退け、一、二審判決が確定。 |
「外国人は生活保護を受けられない」の意味
生活保護法第1条は、憲法25条の理念に基づき「国が生活に困窮するすべての国民」に必要な保護を行うと定めている。2014年の最高裁判決も、外国人は生活保護法そのものに基づく保護の対象にはならず、同法に基づく受給権を持たないとの考えを示した。
ただし、これは「日本国内の外国人には現在まったく生活保護が行われていない」という意味ではない。厚生労働省は1954年の通知に基づき、永住者、定住者、日本人や永住者の配偶者等、特別永住者、認定難民など一定の外国人について、人道上の観点から生活保護法に準じた行政措置を行っている。
| 区分 | 位置付け |
|---|---|
| 日本国民 | 生活保護法に基づく保護を受ける権利がある。 |
| 一定の在留資格を持つ外国人 | 永住者・定住者などを対象に、行政措置として法律に準じた保護が行われる。 |
| 今回の原告 | 療養目的の在留資格で滞在しており、行政措置の対象とされなかったことが争われた。 |
法律上の受給権と、国の通知に基づく行政措置は同じではない。行政措置による保護は、自治体の処分に不服がある場合の争い方や権利性にも違いが生じる。この違いを省略して「最高裁が外国人生活保護を全面禁止した」と説明すると、今回の決定を正確に伝えられない。
最高裁は憲法判断を示さなかった
今回の多数意見は、男性側の主張が上告理由に当たらないとして上告を退けた。そのため、外国人を生活保護法の対象外とする現在の仕組みが憲法に適合するかについて、新しい判断基準を示したわけではない。
これに対し三浦裁判長は、人工透析を必要とし、就労できない状態にある外国人に必要な保護を否定することは人道上許されず、少なくとも療養中の外国人を一律に除外する部分は違憲で無効との趣旨の反対意見を示した。最高裁の裁判官が外国人の生存と公的扶助の関係について明確な反対意見を付けた点は、今後の制度論に影響する可能性がある。
SNSで再燃する「税負担」と「人道」の対立
Xでは、敗訴確定を支持し「社会保障は日本国民を優先すべきだ」とする意見が目立つ一方、重い病気で帰国や就労が困難な人を保護しないことへの疑問も投稿されている。税や保険料を誰のために使うのかという制度維持の議論と、生命・医療をどこまで保障するのかという人道上の議論が衝突している。
議論では、法律上の受給権、行政措置としての準用、医療保険、公費負担医療、在留資格の変更といった別々の制度が混同されやすい。個別事案への賛否とは別に、どの在留資格を支援対象とするのか、緊急医療や帰国支援をどう組み合わせるのかを明文化する必要がある。
賛成・反対・中立の視点
敗訴確定を支持する視点
生活保護は税金で運営される最後の安全網であり、法律が対象を「国民」と定めている以上、外国人への給付範囲を際限なく広げるべきではないという考えがある。外国人の生活保障は母国、医療保険、在留審査、帰国支援を基本にすべきだとの意見も根強い。
人道的保護を求める視点
長期間日本で働いた後に重病となり、治療を止めれば生命に関わる人を国籍だけで保護対象外とすることには問題があるという考えだ。就労できず、直ちに帰国することも困難な場合に限った緊急的な支援制度を法律上整備すべきだとの主張につながる。
制度を分けて設計する中立的視点
生活保護法上の権利を外国人全体へ広げるかという二者択一ではなく、在留資格、居住期間、保険料・納税実績、疾病の緊急性、帰国可能性などを基準にした別制度を検討する方法もある。支給要件と期間、費用負担、帰国支援を透明化することが必要だ。
クロ助とナルカの視点












編集部まとめ
- 裁判の結論:最高裁はガーナ国籍男性の上告を退け、生活保護申請の却下を適法とした一、二審判決が確定した。
- 憲法判断:多数意見は外国人を対象外とする制度の合憲性について新たな判断を示していない。
- 反対意見:三浦裁判長は、療養中の外国人への必要な保護を否定することは人道に反すると指摘した。
- 現行制度:永住者や定住者など一定の外国人には、行政措置として生活保護法に準じた保護が行われている。
- 今後の課題:重病で就労・帰国が困難な外国人について、医療、在留資格、帰国支援、公的扶助の役割分担を明確にする必要がある。
出典
- 共同通信/ライブドアニュース「ガーナ人男性の敗訴確定 生活保護却下、反対意見も」2026年9月11日
- 厚生労働省「生活保護における外国人の取扱いについて」
- 厚生労働省「生活に困窮する外国人に対する生活保護の措置について」
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