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「安い外国人労働力が日本人賃金を抑える」は本当か 高市政権の外国人政策を検証

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PRESIDENT Onlineは2026年8月5日、高市政権の外国人政策について、低賃金の外国人労働者を受け入れることで日本人の賃金上昇が抑えられ、雇用企業の利益と地域社会の負担が分離していると批判する論考を掲載した。

記事のタイトルは「高市首相の『外国人政策』は論理破綻している…『安い移民』で『まじめに働く日本人』が大損する恐ろしい仕組み」。筆者は、外国人労働者の比率が高い飲食・宿泊、製造、建設などで実質賃金の伸びが弱いことや、特定技能外国人を雇用した場合、日本人を長期雇用するより企業側の人件費を抑えられるとの独自試算を示している。

論考が提起した「外国人受け入れが低賃金産業の構造を温存していないか」「企業が利益を得る一方、日本語教育、学校、行政、地域対応などの費用を社会へ転嫁していないか」という問題は、外国人政策を考えるうえで重要である。

一方、外国人労働者の平均賃金が日本人より低いという事実と、外国人の増加が日本人の賃金低迷を引き起こしたという因果関係は同じではない。年齢、勤続年数、職種、企業規模などを調整すると、賃金差は大幅に縮小するという内閣府の分析もある。

本記事では、PRESIDENT Onlineの論考を一つの主張として紹介したうえで、厚生労働省、内閣府、出入国在留管理庁、首相官邸の公表資料と照合し、どこまでが確認できる事実で、どこからが筆者の推論なのかを整理する。

新人記者ナルカ
外国人労働者の賃金が低いなら、日本人の賃金も下げられると考えていいの?

編集長クロ助
可能性は検証すべきだけど、平均賃金の差だけでは因果関係は証明できないにゃ。年齢、勤続年数、産業、企業規模などの違いも分けて見る必要があるにゃ。
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PRESIDENT Online論考の主な主張

  1. 外国人労働者の参入が多い業種ほど、日本人の実質賃金上昇が弱い。
  2. 特定技能や技能実習の外国人は、長期雇用する日本人より企業側の総人件費が低い。
  3. 低賃金の外国人を受け入れることで、企業は賃上げや省力化を回避できる。
  4. 教育、保育、行政、多言語対応、地域摩擦などの受け入れコストは、雇用企業ではなく社会全体が負担する。
  5. 高市政権は在留管理を厳格化しながら、特定技能などの受け入れを続けており、政策が矛盾している。

筆者は、外国人個人ではなく、賃金水準の国際差を利用して労働力を受け入れる制度と企業行動を批判している。外国人労働者の受け入れによって企業が利益を得る一方、日本人の賃上げと省力化が遅れ、地域社会が教育・行政コストを負担するという論旨である。

外国人労働者は257万人、過去最多

厚生労働省によると、2025年10月末時点の外国人労働者数は257万1037人で、前年から26万8450人、11.7%増加した。外国人を雇用する事業所も37万1215か所となり、いずれも届出義務化以降の過去最多を更新している。

国籍別では、ベトナムが60万5906人で全体の23.6%、中国が43万1949人で16.8%、フィリピンが26万869人で10.1%を占める。

在留資格別では、専門的・技術的分野が86万5588人で最多となり、身分に基づく在留資格が64万5590人、技能実習が49万9394人、資格外活動が44万9324人と続いた。

外国人労働者は、宿泊・飲食、製造、建設、介護だけでなく、専門職、事務、物流など幅広い分野へ拡大している。日本の労働市場に与える影響を検証する必要性は、人数の増加とともに高まっている。

外国人労働者の平均賃金が低いことは事実

厚生労働省の「令和6年外国人雇用実態調査」では、外国人の一般労働者に支給される月間の現金給与額は平均27万4900円だった。

在留資格月間現金給与額所定内労働時間時間外労働
外国人一般労働者全体27万4900円157.1時間17.5時間
専門的・技術的分野28万9100円158.5時間17.0時間
うち特定技能25万300円160.2時間21.3時間
技能実習21万円163.8時間21.6時間
身分に基づく在留資格30万5200円150.8時間15.5時間

特定技能や技能実習の平均給与が、外国人労働者全体や日本人一般労働者より低いという問題提起には、公的統計による裏付けがある。

ただし、日本人全体には年齢が高く、勤続年数の長い管理職や熟練労働者が多く含まれる。一方、特定技能や技能実習は20代を中心とし、勤続年数も短い。この構成差を無視した平均値だけでは、同じ仕事をする外国人が国籍を理由に安く雇われているとまでは断定できない。

条件を調整すると賃金差は28.3%から7.1%へ縮小

内閣府の2024年度経済財政白書は、日本人と外国人の賃金差を、個人と事業所の属性を調整して分析している。

学歴、年齢、勤続年数、同じ職種での経験年数、性別、雇用形態、勤務先の業種や規模などを調整しない単純比較では、外国人の賃金は日本人より28.3%低かった。

これらの条件を調整すると、差は7.1%まで縮小した。内閣府は、賃金差の約4分の3が、外国人が若く、勤続年数が短く、低賃金業種や中小企業に偏っていることなどで説明されるとしている。

比較方法日本人との賃金差読み方
属性を調整しない単純比較マイナス28.3%年齢、勤続、業種、企業規模などの違いを含む
個人・事業所属性を調整マイナス7.1%統計上確認できる条件を可能な範囲でそろえた比較

この分析は、論考の問題提起を全面否定するものではない。条件を調整しても7.1%の差が残っているためである。

一方、論考が示す「外国人の総人件費は日本人より1人当たり大幅に安い」とするモデル試算は、特定の職種、年齢、勤続、昇給、賞与、退職金などの前提に基づく。日本の全産業、全企業、全外国人労働者へそのまま一般化することはできない。

特定技能・技能実習では賃金差が残る

内閣府の分析では、在留資格によって賃金差が異なる。

  • 特定技能の生産工程従事者は、日本人より約15%賃金が低い。
  • 技能実習は、比較対象となった職種で日本人より20%弱から30%強低い。
  • 永住者や身分系在留資格では、全体として日本人との有意な差が確認されない。
  • 永住者の専門・技術職や事務職では、日本人より高い場合もある。

外国人労働者を一括して「安い労働力」と呼ぶのは正確ではない。一方、技能実習や特定技能の一部職種で賃金差が存在する以上、「国籍ではなく技能と仕事内容に応じた同一価値労働同一賃金」が実際に機能しているかを検証する必要がある。

「日本人と同等以上の報酬」は制度上の要件

出入国在留管理庁は、特定技能外国人の報酬について、日本人が同じ業務に従事する場合と同等以上であることを求めている。同じ業務を担当する日本人がいない場合も、役職、責任、年齢、経験年数などを踏まえ、報酬差が合理的に説明できるかを審査する。

しかし、この要件は、同じ仕事と経験を持つ比較可能な日本人との給与水準を確認する制度である。日本人の長期勤続者が将来受け取る定期昇給、役職手当、退職金まで、短期在留の外国人と同額にすることを直接保証するものではない。

この点で、短期の外国人労働者を継続的に入れ替えることで、企業が長期雇用に伴う昇給コストを回避していないかという論考の指摘は、検証する価値がある。

一方、外国人を雇用する企業には、採用、登録支援機関、住居確保、日本語教育、生活支援、渡航、行政手続などの費用も発生する。給与だけでなく、企業の総負担を比較する必要がある。

「外国人が増えると日本人賃金が下がる」は確定していない

PRESIDENT Onlineは、外国人比率が高い業種ほど日本人の実質賃金上昇が弱いと主張している。

しかし、「外国人が多い業種で賃金が低い」という相関関係だけでは、「外国人が賃金を下げた」という因果関係は確定しない。

宿泊、飲食、食品製造、介護、建設などには、次のような要因が重なっている。

  • 小規模企業や非正規雇用の割合が高い
  • 価格転嫁が難しく、利益率や労働生産性が低い事業者が多い
  • 地方や最低賃金の低い地域に事業所が多い
  • 深夜・交代勤務、繁閑差、離職率の高さがある
  • 日本人が応募しなくなった後に外国人雇用が増えた可能性がある
  • 低賃金と外国人雇用が、同じ産業構造を原因として同時に発生している可能性がある

外国人受け入れが日本人賃金を押し下げたかを検証するには、同じ企業や地域で外国人比率が変化する前後を比較し、最低賃金、物価、生産性、企業業績、雇用形態などを調整する必要がある。

論考は重要な警告材料だが、日本人賃金低迷の主因を外国人受け入れと断定するには証拠が不足している。

企業利益と地域社会の負担

論考の重要な論点は、外国人雇用による利益と、地域社会が負担する費用の分離である。

外国人住民が増えれば、自治体には日本語教育、ごみ分別や交通ルールの周知、学校の日本語支援、医療通訳、生活相談、住宅トラブルへの対応などが必要となる。

これらの費用を雇用企業が十分に負担せず、国や自治体の一般財源に依存する場合、企業が労働力確保の利益を受け、地域住民が対応費用を負担する構造が生じる可能性がある。

一方、外国人労働者も所得税、住民税、消費税、社会保険料を負担し、住宅、商品、交通などへの消費を行う。教育費や行政支出だけを取り出して「日本人の損失」と表現する場合には、外国人住民から得られる税・保険料収入や経済効果も合わせて検証しなければならない。

政策評価では、国、自治体、企業、住民ごとに、税収、保険料、生産、消費、行政支出、教育、医療、住宅、交通の収支を公開することが望ましい。

高市政権は「受け入れ」と「管理強化」を同時に進める

高市政権の外国人政策は、受け入れ拡大か排除かという一方向の政策ではない。

政府は2026年1月、「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」を決定し、在留管理、税・社会保険、土地取得、制度・ルール教育、不法滞在対策などを進めている。

2026年7月24日の関係閣僚会議では、外国人受け入れの基本的な在り方について将来推計を行い、在留管理の適正化や、日本語・制度・ルールを学ぶプログラムの効果も踏まえ、本年度中に基本方針をまとめるよう指示した。

7月27日の記者会見では、高市首相が外国人の比率を管理する「量的マネジメント」も含めて検討を進める考えを示している。

その一方、人手不足分野では特定技能などによる受け入れが続いている。政府の考え方は、「必要な分野では受け入れる」「違反や社会的負担には管理を強める」という選別的受け入れである。

PRESIDENT Onlineは、この二本立てを論理矛盾と批判する。一方、政府側から見れば、労働力確保と在留管理は同時に実施できる政策であり、必ずしも形式的に矛盾するとは限らない。

本当の焦点は受け入れ条件

日本が考えるべきなのは、外国人労働者をゼロにするか、無制限に増やすかという二択ではない。

  • 外国人採用前に、日本人の賃上げ、省力化、業務改善をどこまで行ったか
  • 同じ職務と技能で、国籍による賃金差がないか
  • 短期外国人の入れ替えで定期昇給を回避していないか
  • 企業が日本語教育、住居、生活支援、地域対応の費用を適切に負担しているか
  • 受け入れ人数が住宅、学校、医療、交通、自治体窓口の処理能力を超えていないか
  • 税、社会保険、在留資格、雇用実態を行政が継続確認できるか
  • 違反企業と悪質仲介業者を受け入れ制度から排除できるか
  • 外国人労働者が転職し、賃金交渉できる労働市場になっているか

「安い外国人を使えば利益が出る」という企業行動を放置すれば、日本人の賃上げも、外国人労働者の待遇改善も進まない。外国人を受け入れる場合には、低賃金維持ではなく、生産性向上と適正賃金につながる制度に改める必要がある。

論考を支持する視点

特定技能や技能実習で日本人との賃金差が確認され、外国人雇用が多い低賃金業種で企業が人件費を抑えているなら、外国人受け入れが賃上げ回避策として機能している可能性は否定できない。

受け入れ企業が利益を得る一方、日本語教育、学校、行政、地域対応の費用を税金で負担する構造があれば、企業への事実上の補助となる。受け入れ前に、日本人賃金の引き上げ、省力化、価格転嫁をどこまで行ったか確認すべきだという主張には合理性がある。

論考へ慎重な視点

業種別賃金と外国人比率の相関だけで、外国人が日本人賃金を下げたと断定することはできない。低生産性、企業規模、非正規比率、地方立地などが、低賃金と外国人雇用の双方を生んでいる可能性がある。

外国人労働者も税や保険料を支払い、企業活動や消費を通じて経済へ貢献する。行政支出だけを取り出して損失と表現すれば、収入面を無視した一面的な議論となる。

制度改善を重視する視点

外国人労働者の受け入れを続ける場合でも、企業が賃金差と社会的コストを利用して利益を得る構造は是正しなければならない。

受け入れ枠を業界団体の要望だけで決めず、賃金上昇率、離職率、生産性、設備投資、日本人応募者数、自治体負担を公開し、客観的に判断する仕組みが必要である。

日本人と外国人の賃金を職務・経験別に監査し、不合理な待遇差が確認された企業には、受け入れ停止や改善命令を行う。地域対応費の一部を受け入れ企業に負担させる制度も検討すべきである。

クロ助とナルカの視点

新人記者ナルカ
PRESIDENTの記事は、外国人受け入れが日本人の賃金を下げていると断定しているように見えるね。

編集長クロ助
問題提起には根拠があるけど、因果関係の証明は別にゃ。特定技能や技能実習の賃金差は公的資料でも確認されるけど、業種の低賃金が外国人だけで生じたとは言えないにゃ。

新人記者ナルカ
「日本人と同等以上の給与」という制度があるのに、なぜ差が残るの?

編集長クロ助
比較する日本人の経験や職務、勤続年数が違うことがあるにゃ。短期雇用、技能評価、転職のしやすさも影響するにゃ。

新人記者ナルカ
それでも、企業だけが利益を得て地域が負担する仕組みは問題だよね。

編集長クロ助
その通りにゃ。受け入れ企業には適正賃金だけでなく、日本語教育、住居、生活支援、地域対応の費用も負担させ、利益とコストを一致させる必要があるにゃ。

新人記者ナルカ
高市政権は結局、受け入れを増やすの? 減らすの?

編集長クロ助
現状は、人手不足分野では受け入れを続けながら、量的管理と在留審査を強める方針にゃ。重要なのは、受け入れ人数と条件を国民に見える形で示せるかにゃ。

編集部まとめ

  1. 論考の主張:PRESIDENT Onlineは、低賃金の外国人労働者が日本人の賃上げを抑え、企業利益と社会負担の不均衡を生んでいると批判した。
  2. 賃金差の事実:厚労省調査では、特定技能や技能実習の平均賃金は外国人一般労働者全体より低い。
  3. 単純比較の限界:内閣府分析では、日本人と外国人の賃金差は単純比較で28.3%だが、年齢、勤続、職種、企業属性を調整すると7.1%へ縮小する。
  4. 残る問題:条件を調整しても差が残り、特定技能・技能実習の一部職種ではより大きな差が確認される。制度上の同等報酬が実態として機能しているか検証が必要である。
  5. 因果関係:外国人比率の高い業種で賃金が低いという相関だけでは、外国人受け入れが日本人賃金低迷の原因だとは断定できない。
  6. 社会的コスト:受け入れ企業が利益を得ながら、日本語教育、学校、行政、地域対応の費用を社会へ転嫁していないか、税収と支出の両面で検証する必要がある。
  7. 政府方針:高市政権は、人手不足分野の受け入れを続けながら、在留管理、違反対策、受け入れの量的マネジメントを強める方針を示している。
  8. 国益的示唆:外国人受け入れは、低賃金維持の手段ではなく、日本人と外国人双方の賃金上昇、生産性向上、企業の費用負担、自治体の処理能力を条件に管理すべきである。

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