知人女性の雇用先を偽り、中国籍の40代ベビーシッターを日本に入国させたとして、警視庁国際犯罪対策課は2026年6月18日までに、東京都港区の会社役員の夫婦を出入国管理及び難民認定法違反の疑いで逮捕した。報道によると、逮捕されたのは会社役員の藍沢鵬程容疑者(39)と妻の藍沢オリビア容疑者(37)で、いずれも容疑を否認している。
警視庁は、夫婦が2023年、専門職向けの在留資格「技術・人文知識・国際業務」を使い、実際にはベビーシッターとして働くとみられる中国籍の女を入国させた疑いがあるとみている。報道では、中国在住となった母親が日本に残した子どもの育児を任せる目的があった可能性も示されている。
今回の事案は、単なる「ベビーシッター雇用」の問題にとどまらない。日本の在留資格制度では、どの資格で、どの業務に従事できるかが細かく定められている。企業で働く専門職として申請しながら、実態が家事・育児業務であった場合、制度の入口審査そのものが悪用された疑いが生じる。
新人記者ナルカ


事件の概要
報道によると、警視庁国際犯罪対策課は、会社役員の藍沢鵬程容疑者と妻の藍沢オリビア容疑者を、出入国管理及び難民認定法違反の疑いで逮捕した。夫婦は2023年、中国籍の40代女性について、当時オリビア容疑者が代表を務める会社で働くなどとする虚偽の内容で在留資格を申請し、日本に入国させた疑いが持たれている。
TBS NEWS DIGによると、警視庁には「中国人が港区内のマンションに複数の未就学児を住まわせ、ベビーシッターが在留資格外で稼働している」といった複数の情報提供があり、捜査の過程で夫婦の関与が浮上したという。
相談したとされる中国籍女性は、高度専門職の在留資格が切れて中国に帰国した一方、日本に子どもを残しており、ベビーシッターを雇っていたと報じられている。夫婦は「全面否定します」などと容疑を否認している。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 逮捕日 | 2026年6月18日まで |
| 逮捕した警察 | 警視庁国際犯罪対策課 |
| 逮捕容疑 | 出入国管理及び難民認定法違反の疑い |
| 逮捕された人物 | 東京都港区の会社役員の夫婦 |
| 対象となった外国人 | 中国籍の40代ベビーシッターの女 |
| 使われたとされる在留資格 | 技術・人文知識・国際業務 |
| 夫婦の認否 | 容疑を否認 |
| 主な論点 | 虚偽申請、資格外活動、家事・育児労働の実態、在留資格制度の悪用 |
時系列で見る事案の流れ
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 2023年5月ごろ | 夫婦が、中国籍の40代女性について、会社で働くなどとする内容で在留資格を申請した疑い。 |
| 2023年10月ごろ | 対象女性が日本に入国したとされる。 |
| その後 | 港区内のマンションで、複数の未就学児とベビーシッターらが生活していたとみられる。 |
| 2025年10月ごろ | 子どもの母親とされる中国籍女性の高度専門職の在留資格が切れ、中国に帰国していたと報じられる。 |
| 2026年6月18日まで | 警視庁国際犯罪対策課が、会社役員の夫婦を出入国管理及び難民認定法違反の疑いで逮捕。 |
本件では、すでに今回のベビーシッターのほかにも、中国籍の40代女性と中国系オーストラリア国籍の40代男性が観光ビザで入国し、ベビーシッターをしていたとして逮捕・起訴されていると報じられている。警視庁は、子どもらの生活実態や詳しい経緯を調べている。
「技術・人文知識・国際業務」とは何か
出入国在留管理庁によると、在留資格「技術・人文知識・国際業務」は、日本の公私の機関との契約に基づき、理学、工学、法律学、経済学、社会学その他の分野に属する技術・知識を要する業務、または外国文化に基盤を有する思考・感受性を必要とする業務に従事する活動を対象とする。
同庁の説明では、該当例として、機械工学などの技術者、通訳、デザイナー、私企業の語学教師、マーケティング業務従事者などが挙げられている。つまり、企業や団体との契約に基づき、学歴・職歴・専門性を活かして働くことを想定した在留資格である。
「技術・人文知識・国際業務」は、専門的な知識や外国文化に基づく業務に従事するための在留資格であり、単純労働や家庭内の家事・育児業務を一般的に認める資格ではない。
そのため、申請書上は会社で専門職として働くとしながら、実態として個人宅でベビーシッターをしていた場合、在留資格の活動内容と実際の就労内容が食い違う可能性がある。今回の逮捕容疑は、まさにこの制度上の食い違いを利用した虚偽申請の疑いとみられる。
ベビーシッター業務はどの在留資格で認められるのか
日本で外国人が家事使用人やベビーシッターとして働く場合、誰でも自由に就労できるわけではない。永住者、定住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等のように就労制限のない在留資格であれば、家事・育児業務に従事すること自体は可能である。
一方、就労内容が制限される在留資格では、認められた活動の範囲を超えて報酬を得る仕事をする場合、資格外活動許可が必要となる。出入国在留管理庁は、資格外活動許可について、現在持っている在留資格に属さない収入を伴う活動や報酬を受ける活動を行う場合に必要な許可と説明している。
また、外国人の家事使用人としての在留資格には、一定の高度専門職外国人や外交官などの雇用主に関連する「特定活動」の枠組みがある。出入国在留管理庁は、家事使用人に関する「特定活動」の手続きや、高度専門職外国人の家事使用人に関する要件を公表している。
| 区分 | 制度上の位置づけ | 今回の論点 |
|---|---|---|
| 技術・人文知識・国際業務 | 企業等との契約に基づく専門的業務 | ベビーシッター業務と実態が合うかが問題 |
| 資格外活動許可 | 本来の在留資格外の報酬活動に必要 | 許可なく家事・育児労働をしていれば違法となり得る |
| 特定活動・家事使用人 | 一定の外国人雇用主に関連する家事使用人枠 | 雇用主や家庭事情など要件の確認が必要 |
| 短期滞在 | 観光、親族訪問、短期商用など | 報酬を得るベビーシッター業務は原則として想定外 |
本件では、報道上、対象女性が「技術・人文知識・国際業務」で入国したとされる。実際の活動がベビーシッターであったなら、専門職としての在留資格申請が、家事・育児労働のための入国ルートとして使われた疑いがある。
虚偽申請はなぜ重大なのか
在留資格制度は、外国人本人の身分、職歴、学歴、雇用契約、受け入れ機関、活動内容を審査したうえで、日本での滞在と就労を認める仕組みである。申請内容が虚偽であれば、入国・在留審査の前提が崩れる。
特に就労系在留資格では、受け入れ企業や団体の実在性、職務内容、報酬水準、本人の専門性が審査される。企業で働くと装って入国させ、実際には別の家庭で育児や家事を担わせるような形が広がれば、正規の手続きで外国人材を受け入れている企業や、適法に働く外国人にも不利益が及ぶ。
また、ベビーシッターや家事使用人は、住み込みや長時間労働になりやすく、雇用主との力関係が強くなりやすい分野である。制度の外側で働かせることは、労働者保護や児童の安全確認の面でも問題を生む。
港区マンションで何が問題視されたのか
報道では、港区内のマンションに複数の未就学児を住まわせ、在留資格外のベビーシッターが稼働しているとの情報提供があったとされる。ここで問題となるのは、子どもの安全、保護者の実態、就労するベビーシッターの在留資格、生活・雇用管理の四点である。
親が海外に滞在し、子どもだけを日本に残して外国籍のベビーシッターが世話をする形があった場合、誰が法的・生活上の責任を負っていたのかが問われる。教育、医療、住民登録、緊急時対応、児童相談所や自治体との接点も確認が必要となる。
この点は、外国人富裕層の子どもの教育や生活拠点として日本が使われるケースとも関係する。日本の治安、教育環境、医療、生活インフラが魅力であることは事実だが、その利用が在留資格制度の抜け道と結びつけば、制度の公平性が損なわれる。
国益的視点:外国人受け入れは「目的」と「実態」の一致が不可欠
日本は人手不足や国際化を背景に、専門人材、留学生、特定技能、高度人材など、多様な外国人を受け入れている。しかし、受け入れ制度は「どのような人材を、どの目的で、どの業務に受け入れるのか」が明確でなければならない。
今回のように、専門職向けの在留資格を使いながら、実態として家事・育児労働を担わせた疑いがある場合、制度の目的と実態がずれる。これは単に書類上の問題ではなく、日本社会にとって必要な人材受け入れの信頼性を損なう問題である。
国益の観点では、外国人受け入れを全否定する必要はない。一方で、虚偽申請、名義貸し、実態と異なる雇用契約、短期滞在による違法就労には厳しく対応しなければならない。適法に働く外国人を守るためにも、制度悪用を放置しない姿勢が必要である。
企業・行政に求められる確認体制
就労系在留資格の審査では、本人だけでなく、受け入れ機関側の責任も重要になる。会社が実際には雇用しない人を雇用するように申請した場合、在留資格制度は容易に偽装の道具となる。
企業・行政に求められる確認項目は次の通りである。
- 受け入れ企業が実在し、事業実態があるか
- 申請された職務内容と本人の学歴・職歴が一致しているか
- 勤務場所、勤務時間、指揮命令系統が明確か
- 報酬が本人に直接支払われているか
- 入国後、申請内容と異なる場所・業務に従事していないか
- 同一関係者による複数申請に不自然なパターンがないか
今回の事件で警視庁が生活実態を調べているとされるのは、単に申請書の記載だけでなく、入国後にどこで、誰のために、どのような仕事をしていたかを確認する必要があるためだ。
SNS上の反応と注意点
本件をめぐっては、SNS上で「富裕層のために在留資格制度が悪用されたのではないか」「港区のマンションに子どもを残す実態を調べるべきだ」といった批判が出ている。一方で、容疑者の氏名や通称、国籍、帰化の有無などをめぐる推測も広がっている。
報道上確認できるのは、逮捕されたのが会社役員の夫婦であり、いずれも容疑を否認していること、対象となったベビーシッターが中国籍の40代女性であること、関連する別のベビーシッターらも逮捕・起訴されていることまでである。国籍や身分関係について、公式確認のない情報を断定することは避ける必要がある。
本件の中心は、民族や出自ではなく、在留資格の申請内容と実際の活動が一致していたかどうかである。制度悪用を検証するほど、事実関係の確認と表現の慎重さが重要になる。
賛成・反対・中立の視点
厳格な摘発を求める視点
虚偽申請によって外国人を入国させる行為は、在留資格制度の根幹を損なう。専門職向けの在留資格を家事・育児労働の抜け道として使うことが許されれば、正規の受け入れ制度への信頼が低下する。警察、入管、自治体が連携し、申請書類だけでなく入国後の就労実態まで確認すべきだという考え方である。
外国人家事支援の需要を重視する視点
共働き世帯、外国人高度人材、国際的な富裕層の増加により、家事支援やベビーシッターへの需要があることは事実である。制度を厳しくするだけでは地下化する可能性があり、合法的な家事支援人材の受け入れ枠を明確化し、労働者保護と児童安全を確保する制度設計が必要だという見方もある。
中立的な視点
必要なのは、需要の存在を理由に虚偽申請を容認することでも、外国人受け入れ全体を否定することでもない。専門職、家事使用人、短期滞在、資格外活動を明確に分け、合法的なルートを整備したうえで、不正な申請や名義貸しには厳正に対応することが現実的である。
クロ助とナルカの視点


















編集部まとめ
- 事件の概要:警視庁国際犯罪対策課は、虚偽の内容で在留資格を申請し、中国籍の40代ベビーシッターを日本に入国させた疑いで、東京都港区の会社役員の夫婦を逮捕した。
- 認否:夫婦はいずれも容疑を否認している。容疑段階であり、今後の捜査、送検、起訴判断を確認する必要がある。
- 制度上の論点:「技術・人文知識・国際業務」は専門職向けの在留資格であり、家事・育児業務を行う場合には別の制度や許可の確認が必要となる。
- 国益的示唆:外国人受け入れを安定的に続けるには、申請内容と就労実態を一致させ、不正な名義貸しや虚偽申請を早期に把握する仕組みが不可欠である。
- 今後の焦点:子どもらの生活実態、他のベビーシッターの関与、在留資格申請に関わった企業・関係者の責任、入管側の審査・事後確認のあり方が問われる。











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