在留資格「特定技能」で来日し、東京都内のラーメン店「三ツ矢堂製麺」で働いたミャンマー国籍の女性が、違法な賃金天引きなどを理由に運営会社を訴えた裁判で、東京地裁は2026年9月11日、会社側に未払い賃金や慰謝料など約100万円の支払いを命じた。
裁判所は、女性が3カ月間に受け取った賃金が4万円に満たず、初任給が「0円」になっていたと認定。生活に必要な最低限の食事や公共料金の支払いにも困る状態に置かれたとして、会社側の対応について違法性が顕著だと指摘した。
新人記者ナルカ


裁判の概要
- 判決日:2026年9月11日
- 裁判所:東京地方裁判所
- 原告:ミャンマー国籍の女性
- 在留資格:特定技能
- 勤務先:東京都内の「三ツ矢堂製麺」
- 来日:2025年1月
- 予定月給:基本給・固定残業手当など約25万円
- 認定された受取額:3カ月間で4万円未満
- 判決:会社側に未払い賃金・慰謝料など約100万円の支払いを命令
訴状などによると、女性は社宅の初期費用などを給与から天引きされ、初任給が0円となった。その後も天引きが続いたとして、未払い賃金や慰謝料を求めていた。
時系列で見る経緯
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 2025年1月 | 女性が特定技能の在留資格で来日し、都内のラーメン店で勤務を開始。 |
| 初回給与 | 社宅初期費用などが差し引かれ、手取りが0円となったとされる。 |
| 勤務開始から3カ月 | 女性が受け取った賃金は合計4万円未満だったと東京地裁が認定。 |
| その後 | 女性が運営会社を相手取り、未払い賃金や慰謝料を求めて提訴。 |
| 2026年9月11日 | 東京地裁が会社側に約100万円の支払いを命じる。 |
賃金には「全額払い」の原則がある
労働基準法第24条は、賃金を通貨で、直接労働者に、その全額を支払うことを原則としている。所得税、住民税、社会保険料など法令に根拠があるものは控除できるが、それ以外の費用を賃金から引く場合は、労働者の過半数代表などとの書面による労使協定が必要となる。
厚生労働省は、労使協定によって控除できる費用についても、社宅費や寮費など、労働者が負担することが明確なものに限られると説明している。また、会社の貸付金と賃金を相殺する場合、労働者の自由な意思に基づく同意が客観的に確認できなければならない。
今回の判決では、単に天引き項目が存在したことだけでなく、結果として女性が生命維持に必要な食事や公共料金にも困る極限的な状態に置かれた点が重く評価された。
特定技能の外国人に日本人と同じ労働法が適用される
労働基準法や最低賃金法は、国籍や在留資格にかかわらず、日本国内で働く労働者に原則として適用される。特定技能外国人だから低い賃金でよい、来日前費用を自由に給与から回収してよいという制度ではない。
特定技能制度では、報酬額が同じ業務に従事する日本人と同等以上であることが求められる。受け入れ機関には、雇用契約の適正な履行に加え、住居確保、生活相談、日本語学習、行政手続などの支援を行う義務がある。登録支援機関へ支援を委託していても、雇用主の賃金支払責任がなくなるわけではない。
社宅や渡航費を使った囲い込みの危険
外国人労働者は、来日直後に住居、携帯電話、銀行口座、交通手段を受け入れ企業へ依存しやすい。社宅初期費用、家具、渡航費、紹介料などの名目で多額の控除が行われると、転職や退職を選べず、会社に生活全体を支配される状態になりかねない。
費用負担が必要な場合でも、項目、総額、分割回数、控除後の手取りを母国語を含む書面で示し、本人が理解して同意したか確認する必要がある。生活できない水準まで一度に差し引く方法は、制度への信頼を大きく損なう。
会社側は労務管理体制を確認へ
報道によると、運営会社は判決を重く受け止め、労務管理体制を改めて確認するとともに、法令順守を徹底し、同様の問題を生じさせないよう努めるとコメントした。
今後は、判決が確定するかに加え、他の外国人従業員にも同様の控除がなかったか、労使協定や雇用条件書が適切だったか、登録支援機関や紹介事業者がどこまで関与したかが注目される。
SNSで「現代の搾取」と批判
SNSでは、3カ月で4万円未満という受取額に対して「生活できない」「特定技能制度の信頼を損なう」と会社側を批判する声が広がった。一方、外国人労働者本人も契約内容や社宅費を確認すべきだとの意見や、個別企業の違法行為と制度全体を分けて考えるべきだとの意見もある。
外国人問題を、外国人による事件だけでなく、外国人が被害を受ける労働事件も含めて扱うことは重要である。同じ法律を同じように適用することが、外国人受け入れ制度に対する国民の信頼につながる。
賛成・反対・中立の視点
会社側を厳しく監督すべきとの視点
生活できないほどの天引きは、労働者の弱い立場を利用した搾取につながる。受け入れ企業と登録支援機関への監査を強化し、違反企業には外国人受け入れ停止などの処分を行うべきだという考えだ。
契約と費用負担も確認すべきとの視点
社宅費など一定の費用を労働者が負担すること自体は直ちに違法ではない。何が違法とされたのか、労使協定や本人同意、実際の費用、未払い賃金の計算を判決内容に基づいて確認する必要がある。
制度全体の透明化を求める中立的視点
企業、登録支援機関、海外送り出し・紹介関係者の費用を一覧化し、給与控除後に一定の生活費を必ず残す基準を設ける方法が考えられる。相談窓口と転職支援を多言語で案内し、違反を早期に発見する仕組みも必要だ。
クロ助とナルカの視点












編集部まとめ
- 判決:東京地裁は、ラーメン店運営会社に未払い賃金や慰謝料など約100万円の支払いを命じた。
- 被害状況:ミャンマー国籍女性の初任給は0円となり、3カ月間の受取額は4万円未満と認定された。
- 法律上の原則:賃金は全額払いが原則で、社宅費などの控除には労使協定や明確な根拠が必要となる。
- 特定技能:外国人にも日本の労働法が適用され、報酬は同じ業務の日本人と同等以上でなければならない。
- 今後の課題:受け入れ企業、支援機関、紹介関係者の費用と責任を透明化し、生活不能になる天引きを防ぐ必要がある。
出典
- FNNプライムオンライン/ライブドアニュース「初任給『0円』ラーメン店運営会社側に約100万円支払い命令」2026年9月11日
- 厚生労働省「労働基準法第24条(賃金の支払)について」
- 厚生労働省「貸付金を賃金と相殺することは可能でしょうか?」
- 出入国在留管理庁「特定技能制度」
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