外国で取得した運転免許証を日本の運転免許証へ切り替える「外免切替」を巡り、実際には島根県松江市に住んでいない外国人3人が、松江市内に居住しているよう装って住民票を取得し、その住民票を使って日本の運転免許証を不正取得した疑いで、ブラジル国籍とパキスタン国籍の男女あわせて5人が逮捕された。
島根県警によると、逮捕されたのは、松江市東忌部町でコンサルティング業を営むブラジル国籍の女(47)とパキスタン国籍の男(30)の夫婦、それに群馬県や栃木県に住むパキスタン国籍の男3人(23~39歳)。
警察は、松江市の夫婦が北関東で働いていた男3人に自宅住所を使わせ、3人が松江市に住んでいるように装って住民票を取得。その後、島根県運転免許センターで外免切替を申請し、日本の運転免許証を不正に取得したとみている。
容疑は電磁的公正証書原本不実記録・同供用、免状不実記載、道路交通法違反(運転免許証の不正取得)など。
外免切替は2025年10月1日から住所確認、知識確認、技能確認が厳格化され、住民基本台帳法の適用を受ける外国籍者については原則として住民票の写しが必要になった。
今回の事件は、その厳格化後に起きている。制度上の住所要件をなくしたのではなく、虚偽の住民登録を行うことで住所確認そのものを突破した疑いが持たれている点が重要である。
新人記者ナルカ


ブラジル・パキスタン国籍の男女5人を逮捕
山陰放送や山陰中央テレビによると、逮捕されたのは次の5人。
- 松江市東忌部町に住むブラジル国籍の女(47)
- 同居するパキスタン国籍の男(30)
- 群馬県や栃木県に住むパキスタン国籍の男3人(23~39歳)
松江市の男女2人は夫婦で、コンサルティング業を営んでいると報じられている。
警察は5人の認否について、捜査上の理由から明らかにしていない。
北関東で働く3人に松江の住所を貸した疑い
島根県警によると、松江市の夫婦は2026年4月24日から27日までの間、パキスタン国籍の男3人が実際には群馬県や栃木県など北関東で生活・就労していたにもかかわらず、松江市内に居住しているように装わせた疑いが持たれている。
3人は松江市役所で住民登録を行い、虚偽の住所が記載された住民票を取得したとされる。
その後、5月14日までに、その住民票を島根県運転免許センターへ提出し、外免切替の手続きを行って日本の運転免許証を取得した疑いがある。
「住所貸し」が外免切替に使われた構図
今回の事件を単純化すると、次のような構図となる。
- 北関東で生活・就労しているパキスタン国籍の男3人がいる
- 松江市在住の夫婦が自宅住所を使わせる
- 男3人が「松江市に住んでいる」として住民登録
- 松江市役所で住民票を取得
- 島根県運転免許センターで外免切替を申請
- 日本の運転免許証を取得
警察は、この一連の手続きについて虚偽の住民登録と運転免許証の不正取得に当たるとみて捜査している。
なぜ松江で外免切替をする必要があったのか
外免切替は、原則として申請者の住所地を管轄する都道府県公安委員会で手続きを行う。
そのため、島根県運転免許センターで申請するには、島根県内に住所があることを示す必要がある。
今回の3人は実際には群馬県や栃木県に住んでいたとされるが、松江市の住民票を取得することで島根県内居住者として申請できる状態を作った疑いが持たれている。
なぜ島根県での申請を選んだのか、他県より手続きが容易だと考えたのか、コンサルティング業者側があっせんしていたのかなど、詳しい動機や背景は現時点では明らかになっていない。
2025年10月から外免切替は厳格化
外免切替制度は2025年10月1日から大幅に見直された。
警視庁によると、住民基本台帳法の適用を受ける外国籍者が外免切替を申請する場合、現在は特定事項が記載された住民票の写しが必要となっている。
制度見直し前は、住民票がない短期滞在者でも、旅券や一時滞在先を証明する書類などを使って申請できる余地があった。
しかし2025年10月以降は、例外を除き住民票の提出を求める仕組みに変更された。
知識確認も10問から50問へ
2025年10月の改正では、住所確認だけでなく知識・技能確認も強化された。
| 項目 | 旧制度 | 2025年10月以降 |
|---|---|---|
| 住所確認 | 住民票がない人も一定の一時滞在証明で申請可能 | 例外を除き住民票を要求 |
| 短期滞在者 | 申請できる余地あり | 原則として対象外 |
| 知識確認 | 10問・70%以上 | 50問・90%以上 |
| 技能確認 | 従来基準 | 横断歩道などを含め採点厳格化 |
つまり今回の事件は、いわゆる「ホテル住所でも簡単に取得できた」旧制度時代ではなく、住民票が必要になった後に起きた事件である。
厳格化後でも「住民票そのものが虚偽」なら突破される
今回の事件が示す最大の問題はここにある。
制度改正によって免許センター側が住民票を確認するようになっても、その住民票自体が虚偽の住所を前提に発行されていれば、書類だけでは生活実態を完全には確認できない可能性がある。
もちろん、これは「現行制度では住所貸しが合法」という意味ではない。
虚偽の住民登録や虚偽書類を使った免許取得は処罰対象となり得る。
問題は、不正が発覚するまで一度は行政手続きを通過し、日本の運転免許証が交付されたとされる点である。
住民票は「実際の生活の本拠」が前提
住民登録は、単に知人から住所を借りればよい制度ではない。
住民票の住所は実際に生活している場所を基礎として登録する必要がある。
今回の男3人については、実際には群馬県や栃木県で働いていたにもかかわらず、松江市に住んでいるように装った疑いが持たれている。
もし外免切替のためだけに住民票を移したのであれば、制度の本人・住所確認を形骸化させる行為となる。
外免切替は「免許を無条件で交換」する制度ではない
外免切替について「外国の免許を持っていれば日本の免許がそのままもらえる」と誤解されることがある。
実際には、外国で免許取得後にその国などへ通算3カ月以上滞在していたこと、住所要件、適性確認などが必要となる。
また、原則として知識確認と技能確認が行われる。
一部の国・地域については確認の免除制度があるものの、全外国人が試験なしで免許を取得する制度ではない。
なぜ住所地を偽装するのかが今後の焦点
今後の捜査で特に重要なのは、なぜ北関東で働く3人が、遠く離れた島根県松江市へ住民登録を移して外免切替を行ったのかという点である。
考えられる論点としては、
- 島根県で申請することに何らかの利点があると考えたのか
- 松江市の夫婦が外免切替をあっせんしていたのか
- 金銭の授受があったのか
- 他にも同様の住所貸しを受けた外国人がいるのか
- 取得された免許証が業務運転などに利用されたのか
などがある。
ただし、これらについて警察から具体的な発表はまだなく、現時点で断定することはできない。
松江の夫婦は「3度目の逮捕」と報道
BSS山陰放送は、松江市でコンサルティング業を営むブラジル国籍の女とパキスタン国籍の男について、今回が3度目の逮捕になったと報じている。
ただし、前2回の逮捕容疑の詳細について、今回確認できた記事だけでは十分な情報を確認できなかった。
そのため、本記事では「3度目の逮捕と報じられている」という範囲に留める。
コンサルティング業者が関与した点も重要
今回、住所を提供したとされる夫婦はコンサルティング業を営んでいた。
外国人の在留、住民登録、免許、就労などの行政手続きは複雑であり、行政書士や支援業者、コンサルタントなどを利用する外国人も多い。
適正な支援は外国人本人と行政双方の負担を減らす一方、もし業者が虚偽申請や名義貸しを手助けすれば、制度そのものへの信頼を損なう。
警察は、今回の5人だけの事件なのか、継続的・組織的なあっせんがあったのかも含めて捜査する必要がある。
住民票と免許センターの情報だけで生活実態を確認できるか
現行の外免切替制度では、住民票による住所確認が重要な入口となっている。
今回のような事件を防ぐには、単に必要書類を増やすだけでなく、明らかに遠隔地で就労しているなど不自然なケースで、行政機関が生活実態を確認できる仕組みも検討課題となる。
例えば、在留カード情報、住民基本台帳、就労先情報などをどこまで行政機関間で確認できるかという問題がある。
一方で、過度な情報照合は個人情報保護や行政負担の問題も伴う。
全申請者を疑うのではなく、不自然な住所移動や短期間の転入直後に外免切替を申請するケースなど、リスクベースで確認を強化する方法が考えられる。
厳格化をさらに進めるべきという視点
今回のように虚偽の住民登録を経て免許が交付された疑いが事実であれば、住所確認をさらに実効性のあるものにすべきだという議論は避けられない。
運転免許は日本の公道で自動車を運転できる公的資格であり、不正に取得された免許証が交通事故や業務運転に使われれば、一般住民の安全にも直結する。
特に外免切替では、申請直前の転入や、実際の就労地と住民票住所が大きく離れている場合の確認を強化する余地がある。
「外国人だから疑う」制度にしてはいけない
一方、虚偽登録をした疑いのある個人が逮捕されたからといって、外免切替を利用する外国人全体が不正をしているわけではない。
日本で適法に生活し、日本の交通ルールを学んだうえで外免切替を利用する外国人は多数いる。
必要なのは国籍による一律の疑いではなく、虚偽申請や名義貸しを具体的に防ぐ本人確認・居住実態確認である。
外免切替の信頼性は外国人受け入れ政策にも直結
日本では人手不足を背景に、外国人労働者が地方部でも増えている。
公共交通が乏しい地域では、自動車免許が通勤や仕事に不可欠となる場合もある。
そのため外免切替制度そのものには必要性がある。
しかし、不正取得事例が相次げば、日本人住民から制度そのものへの不信が強まり、適正利用する外国人にも影響が及ぶ。
制度を維持するのであれば、不正取得を確実に排除できる仕組みを整えることが重要である。
クロ助とナルカの視点


















編集部まとめ
- 逮捕:ブラジル国籍の女1人、パキスタン国籍の男4人の計5人。
- 松江側:ブラジル国籍47歳女とパキスタン国籍30歳男の夫婦。松江市東忌部町でコンサルティング業。
- 申請者:群馬県・栃木県など北関東に住むパキスタン国籍の男3人(23~39歳)。
- 容疑:実際には松江市に住んでいない3人を松江市民として住民登録し、住民票を取得した疑い。
- 外免切替:その住民票を使って島根県運転免許センターで申請し、日本の運転免許証を取得した疑い。
- 時期:住民票取得は4月24~27日、免許取得は5月14日までとされる。
- 罪名:電磁的公正証書原本不実記録・供用、免状不実記載、道路交通法違反など。
- 制度:外免切替は2025年10月から住民票確認、知識確認、技能確認を厳格化済み。
- 重要点:今回の事件は厳格化後で、虚偽住民登録により住所要件を突破した疑い。
- 今後:同様の住所貸し、不正免許取得、金銭授受、あっせんの広がりが焦点。
出典
- BSS山陰放送「住民票を不正に取得→『外免切替』申請し、運転免許証を不正に取得…ブラジルやパキスタン国籍の男女5人を逮捕」2026年8月17日
- TSKさんいん中央テレビ「虚偽の住民票使い運転免許を不正取得 ブラジルやパキスタン国籍の男女5人逮捕」2026年8月17日
- 警視庁「外国で取得した運転免許証を日本の運転免許証に切り替えるには」
- 警視庁「令和7年10月1日施行・改正道路交通法施行規則について」
内部関連記事













コメント