外国人の不法就労対策を強化するため、出入国在留管理庁が国土交通省や環境省などと合同で事業所への立ち入り調査を行う方向で調整していることが分かった。共同通信などの報道によると、早ければ2026年10月にも、国土交通省が所管する解体業者への調査に入管庁職員が同行する。自動車の解体や部品保管などを行う「ヤード」についても、環境省との合同調査が検討されている。
これまで国土交通省や自治体の職員が事業上の不正を確認するため現場へ入っても、外国人従業員に在留カードを提示させる権限がなく、在留資格や在留期間をその場で確認できないという課題があった。入管庁職員が同行すれば、在留カードの提示を求め、不法残留や資格外活動の疑いを確認できる。通報を受けてから動く方式だけでなく、関係省庁の通常調査を不法就労の把握にも結びつける取り組みとなる。
新人記者ナルカ


発表・報道の概要
- 発表時期:2026年9月11日、平口洋法相が閣議後の記者会見で説明
- 実施時期:早ければ2026年10月
- 実施主体:出入国在留管理庁と関係省庁
- 最初の対象:国土交通省が所管する解体業者
- 検討対象:環境省が関係する自動車解体・部品保管などのヤード
- 確認内容:外国人従業員の在留カード、在留資格、在留期間、就労可能な業務かどうか
- 狙い:不法就労者の把握と、雇用する事業者への調査強化
共同通信は、平口法相が不法就労対策のため、入管庁が他省庁と合同で立ち入り調査をする方向で調整していると明らかにしたと報じた。読売新聞は、国土交通省が10月にも実施する解体業者への調査に入管庁職員が参加し、現場で在留カードを確認する方針だと伝えている。
合同立入調査はどのように行われるのか
| 段階 | 想定される内容 |
|---|---|
| 関係省庁の通常調査 | 解体業やヤードを所管する省庁・自治体が、許可や事業上の不正がないか確認する。 |
| 入管庁職員の同行 | 現場で働く外国人に在留カードの提示を求め、在留資格や在留期間を確認する。 |
| 不法就労の疑いを把握 | 就労資格がない、認められた範囲外の仕事をしている、在留期限を過ぎているなどの疑いを確認する。 |
| 出頭・追加調査 | 不法就労の疑いがある外国人に入管庁への出頭を求め、必要に応じて雇用事業者も調査する。 |
重要なのは、合同調査だけで直ちに全ての違反が確定するわけではない点である。在留資格によって認められる業務は異なり、資格外活動許可の有無や雇用契約の内容も確認する必要がある。現場での確認は、その後の正式な調査に進む端緒となる。
なぜ解体業者とヤードが対象になるのか
建物の解体現場や、自動車を解体して部品を保管・輸出するヤードでは、不法残留者や就労資格を持たない外国人が働いているとの指摘が以前からある。事業所が郊外に置かれることも多く、外部から実際の雇用状況が見えにくい。短期間で勤務先を移動する労働者や、複数の下請け会社を経由する雇用形態では、誰が直接雇用しているのか分かりにくくなる場合もある。
一方で、外国人が働いているという事実だけで不法就労と判断することはできない。永住者や定住者、日本人の配偶者等など就労制限がない在留資格もあり、技能実習、特定技能、技術・人文知識・国際業務などは、それぞれ認められる活動範囲が異なる。合同調査では国籍や外見ではなく、在留カードと雇用実態を基に個別に確認することが必要だ。
これまでの制度にあった空白
国土交通省や環境省、自治体の担当者は、それぞれが所管する法律や許認可に基づいて事業所を調べる。しかし、報道によれば、これらの職員には外国人従業員へ在留カードを提示させる権限がなかった。そのため、現場で外国人の雇用を確認しても、在留資格や就労範囲まで直ちに確認できないケースがあった。
在留カードの携帯・提示義務に基づき確認できる入管庁職員が同行すれば、この縦割りによる空白を埋められる。事業上の違反、廃棄物処理、盗難車両や不正輸出の疑い、不法就労などを別々に見るのではなく、必要な情報を関係機関が連携して扱えるかが実効性を左右する。
不法就労に該当する主なケース
| 類型 | 具体例 |
|---|---|
| 在留資格がない | 不法入国者や在留期限を過ぎた不法残留者が働く。 |
| 就労できない資格で働く | 観光目的の短期滞在者などが報酬を得て働く。 |
| 認められた範囲を超える | 在留資格で認められていない業務に従事する、または資格外活動許可の範囲を超える。 |
| 雇用側が助長する | 不法就労と知りながら雇用したり、確認を怠ったりする。 |
不法就労問題では、働いた外国人本人だけでなく、雇用した事業者側の責任も問われる。事業者には在留カードの真正性、在留期限、就労制限の有無、担当させる業務が資格に適合するかを確認することが求められる。「人手不足だった」「本人が働けると言った」という説明だけで、確認義務がなくなるわけではない。
取り締まり強化によって期待される効果
第一に、不法就労を前提に低賃金で外国人を使う悪質事業者への抑止効果が期待される。不法就労者は立場の弱さから賃金未払い、長時間労働、劣悪な住環境を受けても被害を訴えにくい。違法雇用を放置すれば、法令を守り適正な賃金を支払う日本企業との公平な競争も損なわれる。
第二に、解体材や自動車部品の流通経路を含めた事業実態の把握につながる可能性がある。もっとも、入管庁の調査は在留・就労状況の確認が中心であり、窃盗や不正輸出など別の犯罪が自動的に立証されるわけではない。警察、税関、自治体、所管省庁が目的と権限を分けながら連携する必要がある。
懸念される課題
調査対象の選定基準が不透明であれば、適法に外国人を雇用する事業者まで過度な負担を受ける可能性がある。また、外国人労働者が調査を恐れて現場から逃走すれば、雇用主による搾取や仲介業者の関与が見えなくなるおそれもある。本人の在留違反を確認するだけで終わらせず、誰が雇用し、誰が手配し、賃金がどのように支払われていたかまで調べることが重要だ。
在留カードの偽造対策も欠かせない。券面だけで判断せず、失効情報や在留カード番号の照会など、利用可能な確認手段を事業者に周知する必要がある。外国人を雇う全ての企業が、採用時だけでなく在留期間更新時にも確認できる仕組みが求められる。
賛成・反対・中立の視点
合同調査を支持する視点
不法就労が疑われる現場に複数の行政機関が別々に入るより、権限を持つ入管庁職員が同行した方が効率的である。不法残留、不正雇用、悪質ブローカーを早期に把握し、適法に働く外国人と日本人労働者を守るためにも、実効性のある確認が必要だという考え方である。
慎重な運用を求める視点
外国人が多い業種や地域というだけで一律に疑いを向ければ、適法な事業者や労働者への偏見につながる。調査対象を選ぶ客観的基準、確認手続き、個人情報の扱い、通訳体制を整え、国籍ではなく違反の具体的な兆候に基づいて運用すべきだという意見である。
制度改善を重視する中立的視点
摘発だけでなく、雇用事業者が在留資格を正しく確認できる環境整備が必要である。業界団体への研修、在留カード確認手順の標準化、悪質な仲介事業者の排除を同時に進めなければ、別の現場へ不法就労が移るだけになりかねない。
クロ助とナルカの視点


















編集部まとめ
- 政策の要点:入管庁が国土交通省などの立ち入り調査に同行し、外国人従業員の在留カードを現場で確認する方向で調整している。
- 最初の対象:早ければ2026年10月にも解体業者を調査し、環境省とヤードへの合同調査も検討されている。
- 制度上の意味:各省庁の所管調査と在留管理を結びつけ、通報がない段階でも不法就労の端緒を把握しやすくする。
- 今後の焦点:外国人本人の摘発だけでなく、違法雇用を行う事業者や仲介者まで調査できるかが重要になる。
- 国益的示唆:法を守る企業と労働者を保護するには、厳正な確認と適法雇用を支援する仕組みを両立させなければならない。
出典
- 共同通信「入管庁、他省庁と合同で調査へ 外国人の不法就労対策」2026年9月11日
- 読売新聞オンライン「入管庁、『不法就労』摘発強化へ他省庁と合同で立ち入り調査」
- e-Gov法令検索「出入国管理及び難民認定法」
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