政府が人手不足対策として外国人労働者の受け入れ拡大を進める一方で、日本人の若者や子育て世代の生活苦が置き去りにされているのではないか。プレジデントオンラインは5月20日、ジャーナリストの山岡鉄秀氏の寄稿として、「奨学金に押しつぶされ子供も持てない」と題し、外国人労働者受け入れを進める高市政権が、日本人の現実を見ていないとする論考を配信した。
政府は、特定技能と育成就労制度による外国人材の受け入れについて、2028年度末までに計123万1,900人を上限とする方針を決めている。一方で、日本国内では若年層の所得不安、奨学金返還、住宅費、結婚・出産への経済的負担が重く、出生数は過去最低水準にある。人手不足を外国人材で補う前に、日本人が家庭を持ち、安心して働ける社会を再建すべきではないかという問いが浮かぶ。
新人記者ナルカ


プレジデントオンライン記事が投げかけた論点
- 配信日:2026年5月20日
- 媒体:プレジデントオンライン
- 筆者:山岡鉄秀氏
- 主な論点:外国人労働者受け入れ拡大と日本人若者の生活苦
- 問題提起:奨学金返還、低所得、結婚・出産困難、地域社会の変化
- 政策批判:日本人が抱える課題を放置したまま、安い労働力として外国人を大量導入しているのではないか
- 関連政策:特定技能、育成就労制度、外国人材受け入れ上限123万1,900人
記事の主張と確認すべき事実
| 論点 | 記事の主張 | 確認すべき事実 |
|---|---|---|
| 外国人労働者 | 政府が安い労働力として外国人を大量導入している | 特定技能・育成就労で2028年度末まで計123万1,900人の受け入れ上限が設定されている |
| 日本人の若者 | 奨学金や低所得で結婚・出産が難しくなっている | JASSOの貸与奨学金利用者や返還者は長期的に多く、若年層の経済負担は政策課題 |
| 少子化 | 日本人が子供を持てない社会になっている | 2024年の出生数は70万人を下回り、合計特殊出生率も1.15と過去最低水準 |
| 国益 | 外国人材より日本人を豊かにする政策を優先すべき | 人手不足対策と国民生活支援の優先順位が問われている |
外国人労働者は過去最多、受け入れ上限は123万人規模へ
厚生労働省の「外国人雇用状況」の届出状況によると、2025年10月末時点の外国人労働者数は約257万人で、届出義務化以降、過去最多となった。前年の2024年10月末時点でも外国人労働者数は230万2,587人に達しており、増加傾向は続いている。
さらに政府は2026年1月23日、特定技能と育成就労制度による外国人材の受け入れについて、2028年度末までに計123万1,900人を上限とする方針を決定したと報じられている。内訳は、特定技能1号が約80万5,700人、育成就労が約42万6,200人とされる。
| 項目 | 数値 | 時点 |
|---|---|---|
| 外国人労働者数 | 約257万人 | 2025年10月末 |
| 外国人労働者数 | 230万2,587人 | 2024年10月末 |
| 特定技能・育成就労の受け入れ上限 | 123万1,900人 | 2028年度末まで |
| 特定技能1号の上限 | 約80万5,700人 | 同上 |
| 育成就労の上限 | 約42万6,200人 | 同上 |
日本人の若者はなぜ結婚・出産に踏み切れないのか
日本の少子化は、単なる価値観の変化だけでは説明できない。若年層にとって、奨学金返還、低賃金、非正規雇用、住宅費、物価高、将来不安が重なり、結婚や出産を選びにくい状況が続いている。
日本学生支援機構の資料では、2024年度に94万人の学生へ8,238億円の貸与奨学金が実施され、2025年度予算では奨学金事業全体で1兆613億円、197.7万人規模の支援が予定されている。奨学金は進学機会を支える制度である一方、卒業後に長期返還を抱える若者が多いことも事実である。
若者が社会に出た時点で数百万円規模の返還を背負い、さらに家賃、税・社会保険料、物価高に直面すれば、結婚や出産を後回しにせざるを得ない。外国人材の受け入れを急ぐ前に、日本人の若者が家庭を持てる所得環境を作るべきだという問題提起には、一定の現実的根拠がある。
出生数は過去最低水準、少子化はすでに危機段階
こども家庭庁の資料によると、2023年の出生数は72万7,288人で、統計開始以来最少となり、合計特殊出生率は1.20で過去最低となった。さらに2024年の出生数は70万人を下回り、合計特殊出生率は1.15に低下したと報じられている。
この状況で外国人労働者の受け入れを拡大すれば、短期的には人手不足を補える。しかし、長期的には日本人の出生数低下を根本的に解決するものではない。むしろ、低賃金労働を外国人材で補う構造が固定化すれば、企業の賃上げや省人化投資が遅れ、日本人若者の所得改善が進みにくくなる懸念もある。
外国人材受け入れのメリットとリスク
外国人労働者の受け入れには、現実的な必要性もある。介護、農業、建設、外食、製造、物流などでは人手不足が深刻であり、外国人材が現場を支えている地域も少なくない。労働力不足が放置されれば、事業継続や地域経済に影響が出る。
しかし、外国人材を「安い労働力」として使う構造になれば、賃金上昇を抑え、労働環境の改善を遅らせる危険がある。海外でも、低賃金の移民労働者への依存が企業の生産性向上や自動化を遅らせるリスクが指摘されている。
| 観点 | メリット | リスク |
|---|---|---|
| 労働力 | 人手不足の現場を補える | 低賃金構造が固定化する可能性 |
| 地域経済 | 事業継続や生産維持に役立つ | 地域の住宅・教育・医療負担が増える可能性 |
| 企業 | 採用難の緩和につながる | 省人化・賃上げ投資が遅れるおそれ |
| 社会統合 | 多文化共生の機会になる | 言語、教育、生活ルールの摩擦が起きる可能性 |
問題は「外国人か日本人か」ではなく、政策の優先順位
外国人労働者をすべて否定することは現実的ではない。すでに多くの現場で外国人材は働いており、正規の在留資格で納税し、地域社会に参加している人も多い。問題は、外国人材の受け入れを進める一方で、日本人の若者や子育て世代の生活改善が後回しになっていないかという点である。
国民が違和感を持つのは、企業の人手不足には外国人材で対応する一方、日本人の賃金上昇、奨学金返還支援、住宅支援、子育て支援が十分に進んでいないように見えるからだ。外国人材受け入れは、あくまで日本社会の持続性を高めるための手段であり、日本人の生活基盤を弱める方向に働いてはならない。
国益・社会安定の視点
国益の観点から見れば、最優先すべきは日本国民が安心して働き、結婚し、子供を持てる社会の再建である。若者が奨学金返還や低所得に苦しみ、家庭形成を諦める一方で、外国人労働者の受け入れだけが拡大すれば、国民の間に不公平感が広がる。
外国人材受け入れを行う場合でも、賃金の下押しを防ぐ同一労働同一賃金の徹底、社会保険加入、住宅・教育・医療の負担設計、地域住民との摩擦防止、在留管理の厳格化が必要である。同時に、日本人若者への奨学金返還支援、減税、住宅支援、子育て費用の軽減を進めなければ、少子化対策としては不十分である。
賛否・中立の視点
| 立場 | 主な見方 |
|---|---|
| 外国人材受け入れに慎重な立場 | 日本人の若者が奨学金や低賃金で家庭を持てない状況を放置したまま、外国人労働者を増やすのは本末転倒だという見方。 |
| 受け入れを必要とする立場 | 介護、農業、建設、物流などでは人手不足が深刻で、外国人材なしでは地域産業が維持できないという見方。 |
| 中立的な立場 | 外国人材受け入れは限定的・管理型で行い、日本人の賃上げ、奨学金負担軽減、子育て支援を同時に進めるべきという立場。 |
クロ助とナルカの視点


















編集部でまとめ
- 事実確認:プレジデントオンラインは、外国人労働者受け入れ拡大を進める政権が、日本人若者の生活苦を見ていないとする山岡鉄秀氏の論考を配信した。
- 外国人労働者:厚労省によると、2025年10月末時点の外国人労働者数は約257万人で過去最多となった。
- 受け入れ上限:政府は特定技能・育成就労制度で、2028年度末まで計123万1,900人を上限とする方針を決めている。
- 日本人の現実:奨学金返還、低所得、住宅費、物価高が若者の結婚・出産を難しくしている。
- 少子化:2024年の出生数は70万人を下回り、合計特殊出生率は1.15まで低下したと報じられている。
- 国益的示唆:外国人材受け入れは必要性がある一方、日本人若者の所得改善、奨学金負担軽減、子育て支援を優先しなければ、国民の理解は得られにくい。











コメント