茨城県は2026年5月11日、不法就労の外国人を雇用する事業者などに関する情報提供を受け付ける「不法就労情報提供システム」と、摘発につながった有益な通報に報奨金を支払う「不法就労通報報奨金制度」を開始した。毎日新聞は同日、「茨城県、通報に報奨金制度スタート 外国人の不法就労、全国最多」と報じた。
茨城県は、県内の不法就労者数が4年連続で全国最多となっている現状を背景に、制度導入へ踏み切った。報奨金は原則1万円で、通報の結果、事業者などが不法就労助長罪で逮捕・送致された場合など、特に有益な情報に対して支払われる。一方、制度には、外国人への偏見や誤認通報を助長するとの批判もあり、運用の透明性と差別防止策が問われる。
新人記者ナルカ


茨城県の不法就労通報報奨金制度とは
- 開始日:2026年5月11日
- 実施主体:茨城県
- 制度名:不法就労情報提供システム、不法就労通報報奨金制度
- 目的:不法就労を助長している疑いのある事業者等に関する有益な情報を集めること
- 通報対象:不法就労者を雇用する事業者、不法就労者をあっせんするブローカーなど
- 対象外:外国人労働者個人への通報、見た目・国籍など属性のみを理由とする通報
- 報奨金:原則1万円
- 支払い条件:通報後、事業者等が不法就労助長罪で逮捕・送致された場合など
- 通報方法:県の専用システムからのみ。電話、メール、直接訪問での通報は不可
経緯・時系列
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 2026年3月11日 | 茨城県弁護士会が「不法就労外国人に関する通報報奨金制度に反対する会長声明」を公表 |
| 2026年4月2日 | 茨城県が知事定例記者会見で、反対声明等に対する県の見解を公表 |
| 2026年4月30日 | アムネスティ・インターナショナル日本が制度実施の見直しを再度要請 |
| 2026年5月11日 | 茨城県が「不法就労情報提供システム」と「不法就労通報報奨金制度」を開始 |
| 2026年5月11日 | 毎日新聞などが、制度開始と県内不法就労者数全国最多の状況を報道 |
通報対象は「外国人個人」ではなく「事業者・ブローカー」
茨城県の公式ページでは、通報を受ける情報について、不法就労者を雇用する事業者や、不法就労者をあっせんするブローカーなど、不法就労助長罪に違反している疑いのある事業者等に関するものに限定するとしている。
また、県は「外国人労働者に関する通報は受け付けません」と明記している。特に、見た目、国籍など、単に労働者個人の属性のみを理由とする通報は固く断るとしており、差別や誹謗中傷、虚偽通報など悪意のある通報は受け付けない方針だ。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 受け付ける通報 | 不法就労者を雇用している疑いのある事業者、不法就労をあっせんするブローカーなどに関する具体的情報 |
| 受け付けない通報 | 外国人労働者個人への通報、見た目・国籍・言語など属性のみを理由とする通報 |
| 不適切な通報 | 差別、誹謗中傷、虚偽通報、悪意ある通報 |
| 通報方法 | 茨城県の不法就労情報提供システムに限定 |
報奨金は原則1万円、逮捕・送致が条件
茨城県の取扱要項によると、報奨金は、知事から警察本部長への通報後、被疑者が逮捕され、刑事訴訟法に基づく送致がなされた場合に交付できる。金額は送致1件につき1万円とされている。
県公式ページでも、通報の結果、事業者等の不法就労助長罪での逮捕につながったものなど、特に有益な情報に対して報奨金を支払うとしている。ただし、不法就労助長罪以外の罪状で摘発された場合や、摘発されても逮捕に至らなかった場合は対象外とされる。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 報奨金額 | 原則1万円 |
| 支払い単位 | 送致1件につき1万円 |
| 主な条件 | 通報後、事業者等が不法就労助長罪で逮捕・送致されること |
| 対象外 | 不法就労助長罪以外での摘発、逮捕に至らない在宅起訴など |
| 問い合わせ | 調査状況や報奨金支払い可否については、通報者本人にも回答しない |
県の背景認識「不法就労者数が4年連続全国最多」
茨城県は、2026年4月2日の知事定例記者会見で、県内の不法就労者数が3年連続から4年連続で全国最多になったと説明している。県によれば、全国では不法就労関係の摘発がピーク時に比べて約4割減少している一方、茨城県では4割以上増えているという。
県は、こうした状況が県内で働く外国人全体への不信感を招く可能性があるとし、不法就労などの違法行為を放置することこそ、適正に働く外国人への偏見や排斥につながるとの立場を示してきた。
反対側は「誤認通報や差別助長」を懸念
制度に対しては、弁護士会や人権団体から反対意見も出ている。アムネスティ・インターナショナル日本は2026年4月30日、制度が通報に経済的インセンティブを与える構造であるため、外見、言語、国籍などの属性に基づく通報や、誤認通報、偏見助長につながる恐れがあるとして、実施の一旦停止と再検討を求めた。
また、反対側は、不法就労かどうかは在留資格、資格外活動許可、雇用契約、就労時間など専門的な確認が必要であり、一般市民の判断だけでは誤認が起きやすいと指摘している。県が対象を事業者に限定しても、現場では外国人労働者個人への監視感が広がるのではないかという懸念がある。
制度の焦点は「不法就労者」より「雇う側」
今回の制度で重要なのは、違法状態を生み出す構造に目を向けている点である。不法就労は、本人だけでなく、安い労働力として受け入れる事業者、仲介するブローカー、在留資格の確認を怠る雇用側の問題でもある。
不法就労助長罪は、事業活動に関して外国人に不法就労活動をさせた場合や、不法就労活動をあっせんした場合などに成立し得る。外国人材を正規に雇用している事業者にとっても、違法雇用を放置すれば、公正な競争が損なわれる。






制度運用で確認すべきポイント
| 論点 | 確認すべき内容 |
|---|---|
| 対象の明確化 | 外国人個人ではなく、事業者・ブローカーに限定されているか |
| 通報の質 | 具体的な事業者名、就労実態、あっせん状況など客観的情報が求められているか |
| 差別防止 | 外見、国籍、言語など属性のみを理由とする通報を排除できるか |
| 虚偽通報対策 | 本人確認、悪意ある通報の排除、審査体制が機能するか |
| 透明性 | 制度の運用件数、警察提供件数、報奨金支払い件数を後日公表できるか |
| 外国人保護 | 被害的立場の労働者を支援・相談につなげる仕組みがあるか |
国益視点では「違法雇用の排除」と「差別防止」の両立が必要
外国人材を受け入れる以上、不法就労や違法雇用を放置することはできない。違法雇用は、税や社会保険の未納、最低賃金違反、労災隠し、ブローカー搾取、治安不安につながりやすい。国益上、適正な在留・就労管理を徹底することは不可欠である。
一方で、制度が地域社会に「外国人を見たら疑う」という空気を生めば、適正に働く外国人にも不利益が及ぶ。茨城県が制度の対象を事業者に限定した以上、その運用も徹底して事業者責任の追及に絞るべきだ。属性通報を排除し、違法雇用を生む雇用主・ブローカーを摘発する制度として機能するかが、今後の評価を左右する。
クロ助とナルカの視点


















賛否・中立の見方
| 立場 | 主な見方 |
|---|---|
| 制度に肯定的な見方 | 茨城県は不法就労者数が4年連続全国最多であり、従来の啓発だけでは限界がある。不法就労を雇う事業者やブローカーを摘発するため、情報収集を強化する必要がある。 |
| 制度に慎重・反対の見方 | 報奨金付きの通報制度は、外見や国籍に基づく誤認通報、差別、地域社会の分断を招く恐れがある。不法就労の背景にある労働環境や相談体制の不足も改善すべき。 |
| 中立的な見方 | 違法雇用の摘発は必要だが、制度対象を事業者・ブローカーに限定し、外国人個人への属性通報を排除する運用が不可欠。運用実績の公表と差別防止策が制度の信頼性を左右する。 |
編集部でまとめ
- 事実確認:茨城県は2026年5月11日、「不法就労情報提供システム」と「不法就労通報報奨金制度」を開始した。
- 制度内容:通報対象は、不法就労者を雇用する事業者や不法就労をあっせんするブローカーなどに限定され、外国人労働者個人への通報は受け付けない。
- 報奨金:通報の結果、事業者等が不法就労助長罪で逮捕・送致された場合などに、原則1万円が支払われる。
- 背景:茨城県は、県内の不法就労者数が4年連続で全国最多となっていることを制度導入の背景に挙げている。
- 国益的示唆:外国人材を適正に受け入れるには、不法就労を生む事業者やブローカーを排除する必要がある。一方で、制度が外国人個人への監視や差別に転化しないよう、対象限定、審査、運用実績の透明化を徹底すべきである。











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