フィリピンから高度外国人材を採用することへの関心が高まっている。ジェトロが9月8日に開催したウェビナーには、日本企業や自治体などから110人超が参加。終了後のアンケートでは、回答者の9割超がフィリピン高度人材の採用への関心が高まったと答えた。結果は9月28日に公表された。
ただし、この「9割超」は日本企業全体の採用意向を示す数字ではない。もともと採用・支援に関心を持ってウェビナーに参加した人のうち、有効回答87件を対象とする調査結果だ。採用には日本側の在留資格・査証に加え、フィリピン側の送り出し手続きも必要となる。関心の高さと実際の採用・定着を分け、企業に必要な準備を考える。
新人記者ナルカ


ニュースの概要
- 主催:日本貿易振興機構(ジェトロ)
- 開催日:2026年9月8日
- 公表日:9月28日
- 参加者:日本企業・自治体など110人超
- アンケート:採用への関心が高まったとする回答が9割超。有効回答87件
- 採用手続き:日本側の在留資格・査証に加え、フィリピン側のOEC、送り出し機関、雇用主認定などが論点
- 重要な留意点:関心の増加は実際の雇用人数の増加を意味しない
ジェトロの「高度外国人材」という用語は、在留資格「高度専門職」の保有者だけを指すものではない。原則として「技術・人文知識・国際業務」「研究」「経営・管理」などの専門的・技術的分野で働く、一定の学歴を持つ人材を含めた独自の定義で使われている。
時系列で見る経緯
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 9月8日 | ジェトロがフィリピン高度外国人材の採用と手続きをテーマにウェビナーを開催。 |
| 同日 | 弁護士、外国人材を採用する企業、フィリピンの大学関係者が登壇。 |
| 終了後 | 参加者にアンケート。採用への関心と手続きへの懸念を把握。 |
| 9月28日 | ジェトロが結果と登壇者の説明を公表。 |
| 今後 | 企業ごとに職種、採用手順、待遇、定着支援を具体化することが課題。 |
数字をどう読むか
「9割超」はウェビナー回答者の反応
ジェトロによると、イベントには110人超が参加し、「採用への関心が高まった」とする回答が9割を超えた。該当する設問の有効回答は87件であり、全参加者が回答したわけではない。フィリピン人材への関心を持つ人が集まった場の反応としては意味があるが、国内企業の採用意向率に換算することはできない。
現地大学を訪問したり学生と交流したりする機会には8割超が関心を示し、3分の1超の企業が渡航を含めた参加を検討すると回答した。こちらの有効回答数は85件だ。両設問の母数が異なるため、数字を横並びで比較する際にも注意が必要となる。
関心と採用実績の距離
採用したいと感じても、募集する職種、技能・言語要件、給与、社内の受け入れ体制が固まらなければ採用には至らない。ウェビナーに参加した企業のうち、実際に何社が採用し、何人が定着したかという追跡結果は、今回の発表では示されていない。
フィリピン人材採用で必要な手続き
日本側とフィリピン側の二つの制度
日本で働くには、仕事内容に合う在留資格と査証など、日本側の手続きが必要になる。これに加え、フィリピンは海外へ働きに出る人を政府が管理しており、出国許可証にあたるOECの取得などが求められるとジェトロは説明している。
ジェトロのウェビナーでは、移住労働者省(DMW)が認可する送り出し機関(PRA)の選定、移住労働者事務所(MWO)を通じた雇用主認定申請、DMWでの求人票登録などが紹介された。個別の雇用形態や申請時点により手順が異なり得るため、採用企業は最新の公式案内と実務専門家の確認を前提に進める必要がある。
負担は企業と求職者の双方に
申請の段階が多いと、内定から入社までの時間を読みづらくなる。企業は採用計画に余裕を持ち、職務内容や賃金条件を明確に示さなければならない。求職者にとっても、書類や費用を誰が負担するのか、契約後に条件が変わらないかが重要だ。
手続きを「面倒だから省く」と考えると、雇用の適法性や本人の出国に支障が生じる可能性がある。透明な説明と正規の手順は、両国の労働者保護にもつながる。
採用後の定着をどう支えるか
ウェビナーに登壇した和歌山県の製造業経営者は、約30年にわたる外国人材の雇用経験から、採用そのものではなく成長と定着をゴールに据えるべきだと説明した。専門性を生かせる仕事、評価と昇進の道筋、地域で安心して暮らすための支援が必要だという。
フィリピンの大学関係者は、学生の志向や就職先の選択肢にも触れた。日本企業は「日本で働ける」ことだけを魅力として打ち出すのではなく、仕事内容、キャリア形成、賃金、家族を含む生活の見通しを具体的に伝える必要がある。
これは企業側の競争にも関わる。現地の有力企業や他国の外資系企業とも人材を取り合うため、採用後に専門職として活躍できず、期待した仕事と違ったとなれば定着は難しい。
賛成・反対・中立の視点
採用拡大を歓迎する視点
専門性や海外市場への理解を持つ人材が加われば、企業の技術開発、海外進出、多言語対応に資する。日本企業とフィリピンの大学・自治体が直接対話を増やすことには価値がある。
手続きと待遇への懸念
送り出し・受け入れの制度が複雑なまま採用だけを急ぐと、求職者や企業に過大な費用と不安が生じる。仕事内容のミスマッチや低い待遇を放置すれば、「高度人材」の名目に反して専門性を生かせない。
成果を追跡する中立的視点
今回のアンケートは関心の変化を示すが、採用実績ではない。今後は手続きにかかった期間・費用、採用人数、離職率、本人の満足度などを追跡し、制度上の障壁と職場環境の問題を分けて評価したい。
クロ助とナルカの視点












編集部まとめ
- 調査結果:ジェトロのウェビナーには110人超が参加し、有効回答87件の9割超が採用への関心が高まったとした。
- 読み方:回答者は関心のある参加者であり、日本企業全体の採用意向を示す統計ではない。
- 制度上の課題:日本側の在留手続きに加え、フィリピン側のOECや雇用主認定などが必要になる。
- 編集部の視点:採用件数だけでなく、待遇、専門性を生かす配置、定着率を追跡して受け入れの成果を測るべきだ。
出典
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