三重県の職員採用における「国籍要件」復活をめぐり、県が実施した県民1万人アンケートで外国籍住民が回答対象から除外されたことを問題視した住民監査請求について、三重県監査委員は請求を棄却した。産経新聞・共同通信系報道によると、監査結果は5月15日付で、委託費用約793万円の支出差し止めなどを求めた請求を認めなかった。
アンケートには、県職員採用における国籍要件復活の是非を問う質問も含まれていた。請求人は、外国籍住民を回答対象から外したことが、差別解消を掲げる県条例などに違反すると主張した。一方、監査結果は、外国人を意図的に除外したとは認められず、委託契約を無効とするほどの違法性はないと判断した。ただし、今後は外国籍住民も調査対象に含めるなど、多様な声を県政運営に生かすよう付言している。
新人記者ナルカ


三重県の県民アンケート、監査請求は棄却
- 報道日:2026年5月21日
- 対象自治体:三重県
- 論点:県職員採用における国籍要件復活
- 問題視された点:県民1万人アンケートで外国籍住民が回答対象外だったこと
- 住民監査請求:アンケート委託費用約793万円の支出差し止めなどを要求
- 監査結果:請求を棄却
- 監査結果の日付:2026年5月15日付
- 監査判断:外国人を意図的に除外したとは認められず、委託契約を無効とするほどの違法性はない
- 付言:今後は外国籍住民も調査対象に含め、多様な声を県政運営に生かすよう求めた
経緯・時系列
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 2025年12月25日 | 三重県の一見勝之知事が、県職員採用における国籍要件復活の検討方針を示したとされる。 |
| 2026年1月〜2月ごろ | 三重県が県民1万人アンケートを実施。国籍要件復活の是非を問う質問も含まれた。 |
| 2026年3月 | 県民の男性が、外国籍住民が回答対象外だったことを問題視し、住民監査請求を行った。 |
| 2026年5月15日 | 三重県監査委員が請求を棄却。 |
| 2026年5月21日まで | 産経新聞・共同通信系報道で監査請求棄却が報じられる。 |
国籍要件とは何か
公務員採用における国籍要件とは、職員採用試験や任用において、日本国籍を有することを条件とする仕組みを指す。国家公務員では、国の統治機能や公権力の行使に直接関わるため、日本国籍が必要とされる。
一方、地方公務員については、すべての職種で一律に日本国籍が必要とされているわけではない。三重県のアンケート補足資料でも、地方公務員については、公権力の行使や公の意思の形成に参画する職務でなければ、日本国籍を有しなくても職務に就くことが可能と説明されている。
地方公務員と国籍要件の基本整理
| 区分 | 考え方 | 論点 |
|---|---|---|
| 国家公務員 | 原則として日本国籍が必要 | 国の統治機能、機密情報、公権力行使に関わる |
| 地方公務員 | 職務内容によって扱いが分かれる | 公権力行使や意思形成に関わる職務かどうか |
| 外国籍職員 | 自治体によって採用可否や職務範囲が異なる | 配置、昇任、守秘義務、住民サービスとの関係 |
| 国籍要件復活 | 外国籍者の受験・採用範囲を制限する方向 | 安全保障・情報管理と差別防止のバランス |
三重県が国籍要件復活を検討した背景
三重県の補足資料では、平成11年以降、多くの職種で外国籍の人の採用を可能としてきたと説明している。そのうえで、近年は自国民に情報活動への協力義務を課す国が現れており、外国籍職員が県職員となる場合、日本の守秘義務と出身国の法律との間でジレンマが生じる可能性があるとの問題意識を示している。
この説明は、安全保障や情報管理の観点からは一定の論点を含む。県職員は、住民の個人情報、災害対応、国や県の重要情報、行政内部の資料に接する場合がある。一方で、すべての外国籍住民を一律に情報漏えいリスクとみなすような印象を与えれば、外国籍住民への偏見や差別につながる懸念もある。
外国籍住民をアンケート対象外にしたことの是非
今回の監査請求で中心となったのは、国籍要件復活の是非を問うアンケートで、外国籍住民が回答対象外だった点である。請求人は、外国籍住民の採用可否に関わるテーマでありながら、当事者である外国籍住民の声を聞かなかったことを問題視した。
これに対し、監査結果は、外国人を意図的に除外したとは認められず、委託契約を無効とするほどの違法性まではないと判断した。つまり、アンケート設計に課題があったとしても、支出差し止めや契約無効に直結する違法性までは認定しなかったという整理になる。
ただし、監査委員は今後、外国籍住民も調査対象に含めるなど、多様な声を県政運営に生かすよう付言している。この付言は、今回のアンケートが違法ではないとしても、政策形成の手続としては改善余地があることを示している。
反対側の主張と人権上の懸念
国籍要件復活に対しては、弁護士会や市民団体などから反対意見も出ている。愛知県弁護士会は2026年2月、三重県の国籍要件復活方針に反対する会長声明を出し、外国籍者の職員採用継続の是非について、日本国籍の県民に対するアンケートを参考資料とすることは、マイノリティの人権制約について多数決原理を採用するに等しいとして問題視した。
この見方では、国籍要件の復活は、外国籍住民の就労機会を制限するだけでなく、県行政が外国籍者を潜在的リスクとして扱っているとの印象を与える可能性がある。とくに三重県には、差別解消や人権尊重を掲げる条例があるため、県政が外国籍住民をどのように扱うかは、県全体の多文化共生政策にも影響する。
一方で国籍要件を求める側の論理
国籍要件復活を求める側は、地方公務員が住民の個人情報や行政機密に接すること、災害対応や許認可など公権力に近い業務を担うことを重視する。とくに、外国政府による影響工作や経済安全保障が論点になる中で、公務員の国籍要件を再確認すべきだという主張には一定の現実的背景がある。
参議院の質問主意書関連資料でも、最高裁平成17年1月26日大法廷判決に触れ、地方公務員のうち公権力の行使や公の意思形成に参画する職については、日本国籍を有する者が想定されているとの考え方が示されている。
ただし、国籍要件を広く復活させる場合、事務職、技術職、福祉、医療、教育支援、国際交流など、実際には公権力行使と距離のある職務まで一律に制限することになる。国籍要件を設けるなら、どの職務が公権力行使や意思形成に関わるのかを具体的に整理しなければ、過剰な制限になりかねない。
県民アンケートの設計に残る課題
今回のアンケートは、県民1万人を対象にした調査であり、政策判断の参考資料として位置づけられたとみられる。しかし、国籍要件というテーマは、外国籍住民の就労機会や社会参加に直接関わる。そのため、日本国籍の県民だけを対象とした場合、当事者の声が反映されにくいという問題が残る。
行政アンケートは、必ずしも全ての当事者を対象にしなければ違法になるわけではない。しかし、政策テーマが特定の少数者に直接影響する場合、その少数者の意見を別途聴取する仕組みは必要である。監査委員が付言した「多様な声を県政運営に生かす」という指摘は、まさにこの点を踏まえたものといえる。
今後求められる改善点
- 外国籍住民を含む追加調査の実施
- 国籍要件の対象職種を具体的に整理
- 公権力行使・意思形成に関わる職務の明確化
- 守秘義務・情報管理の強化策を国籍以外でも検討
- 外国籍職員の配置・昇任ルールの透明化
- 人権条例や多文化共生政策との整合性確認
- 県民向け説明資料の表現精査
国益・社会安定の視点
県職員は、住民の個人情報や行政上の重要情報を扱う立場にある。安全保障や情報管理の観点から、採用や任用のルールを見直すこと自体は、自治体の重要な責任である。とくに、国際情勢が不安定化する中で、公務員の守秘義務と外国法制の衝突リスクを議論することは避けられない。
一方で、外国籍住民も地域社会の一員であり、納税し、働き、地域を支えている。外国籍という属性だけで一律に排除するような制度設計は、社会統合を損ない、地域の分断を招くおそれがある。国益の観点からも、必要なのは感情的な排除ではなく、職務内容に応じた現実的な任用管理である。
国籍要件を復活させるかどうかは、県民感情だけで決めるべきではない。公権力行使、情報管理、住民サービス、外国籍住民の社会参加、人権保障を総合的に見て、職種ごとの合理的な線引きを行う必要がある。
賛否・中立の視点
| 立場 | 主な見方 |
|---|---|
| 国籍要件復活に賛成する立場 | 県職員は個人情報や行政機密に接するため、日本国籍を要件とすることは情報管理や安全保障上必要だという見方。 |
| 国籍要件復活に反対する立場 | 外国籍住民を一律に排除する制度は差別につながり、多文化共生や人権尊重の理念に反するという見方。 |
| 中立的な立場 | 公権力行使や意思形成に関わる職務には国籍要件を設ける余地がある一方、それ以外の職務まで一律に制限するのは慎重であるべきという立場。 |
クロ助とナルカの視点


















編集部でまとめ
- 事実確認:三重県の職員採用における国籍要件復活をめぐる県民1万人アンケートについて、外国籍住民が対象外だったことを問題視した住民監査請求は棄却された。
- 請求内容:県民の男性は、アンケート委託費用約793万円の支出差し止めなどを求めた。
- 監査判断:外国人を意図的に除外したとは認められず、委託契約を無効とするほどの違法性はないとされた。
- 付言:監査委員は、今後は外国籍住民も調査対象に含めるなど、多様な声を県政運営に生かすよう求めた。
- 制度論点:地方公務員では、公権力の行使や公の意思形成に関わる職務かどうかで、国籍要件の必要性が分かれる。
- 国益的示唆:情報管理と安全保障を重視しつつ、外国籍住民を一律に排除しない合理的な職務別ルールが求められる。









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