デイリー新潮は、JICA在外職員について「平均年収1,460万円」かつ「納税の対象外」と報じた(2025年10月1日および10月9日)。一方、JICAの公式公表資料では、常勤職員の平均年収は約836〜839万円(直近年度、国内勤務を含む全体平均)で、在外勤務は各種手当で水準が上がる仕組み。 また「納税対象外」は、受入国との技術協力協定に基づく現地課税の免除と、日本側の非居住者・非課税取扱いの手当が組み合わさる制度面の結果であり、「全面的に無税」を直ちに意味するものではない。
目次
ファクト
1) 年収水準の分母差(全体平均 vs. 在外平均)
- 全体平均(常勤・国内外含む):JICA公式の「職員の給与の水準の公表」によれば、直近年度で平均年収836〜839万円の水準。年度別推移も公開。JICA「職員の給与の水準の公表」(確認)。
- 在外平均:デイリー新潮は在外職員に限った平均として約1,460万円を提示(10/1公開・10/9続報)。10/1記事/10/9記事。
注:在外勤務は治安・物価・為替・家族帯同などを補う手当を上乗せ。分母(対象集団)が異なる数値を並列比較しないことが前提。
2) 「納税対象外」の制度的意味
- 受入国側の免税:多くの受入国との技術協力協定に、JICA職員等の給与・手当の現地課税免除(所得税を含む)が条文として明記。例:日比協定/日ルワンダ協定。
- 日本側の取扱い:JICA海外協力隊のFAQ等では、赴任中は非居住者扱いとなり、海外手当・旅費は非課税と明示(公務員は除く等の但し書きあり)。JICA「身辺整理・行政手続き」/JICA「FAQ」。税は課税されない旨の整理あり。国税庁タックスアンサーNo.1920/No.2873。
注:「納税対象外」は、受入国での免税+日本側で非居住者・非課税手当の扱いの結果として成立。条文やFAQに但し書きが多く、ケースにより異なる。
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国益的示唆
- 透明性強化:在外手当の算定根拠(治安・物価・為替・帯同)と目的を、年度ごとに公開し、案件KPIとの連動を明示。
- EBPM:案件成果(KPI)と人件費・手当の因果を「統合報告」で可視化し、第三者監査と利益相反チェックを定常化。
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賛否・中立意見
- 賛成:危険地・高インフレ地での任務遂行には国際相場並みの補填が必要。優秀人材確保・安全配慮の観点。
- 反対:「1460万円・納税対象外」の見出しは納得感を損なう。勤怠・待遇の監査、利益相反の開示をより厳格に。
- 中立:「全体平均」と「在外平均」を分けて議論し、協定免税と日本の税制を切り分けて理解することが前提。
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一次資料リンク
- デイリー新潮(2025/10/1):「平均年収1460万円で納税の対象外」
- デイリー新潮(2025/10/9):「癒着の実態」後編
- JICA:職員の給与の水準の公表(最新年次)
- 技術協力協定(例):日本・フィリピン/日本・ルワンダ
- JICA海外協力隊:身辺整理・行政手続き/FAQ
- 国税庁タックスアンサー:No.1920 海外勤務と所得税/No.2873 非居住者等
クロ助とナルカの視点から

見出しだけだと“無税”に見えるにゃ。協定の免税範囲と日本側の非居住者取扱いは切り分けたいにゃ。



在外手当の根拠と案件KPIの対応関係を、年次で可視化してほしいですね。
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