公開日:2025年8月30日 最終更新日:2025年9月3日
法務省の最新統計で、2025年上半期に技能実習から特定技能へ移行した人数が過去最多となりました。特定技能全体は約30万人に迫り、そのうち約7割が技能実習からの移行者です。人手不足を背景に外国人労働者の就労制度が定着しつつある現実が浮き彫りになっています。




法務省出入国在留管理庁の統計(2025年)によれば、2025年6月末時点の特定技能在留外国人数は約29万8千人。そのうち約20万人が技能実習からの移行者で、過去最多となりました。
分野別では、介護・建設・製造の3分野が突出しており、特に介護は制度開始当初の予測を超える速さで移行が進んでいます。






技能実習制度から特定技能制度への歴史的経緯
技能実習制度は1993年に創設され、「国際貢献」として開発途上国の人材育成を目的としました。しかし実態は労働力確保の役割が強まり、長年にわたり「建前と現実の乖離」が指摘されてきました。
2019年には新たに「特定技能制度」が導入され、当初は5年間で34万人の受け入れを見込んでいました。技能実習から特定技能への移行は制度設計の時点から想定されており、今回の「過去最多」という結果は制度の流れに沿った自然な展開といえます。






背景に人手不足、介護や建設業が中心
介護業界では高齢化と離職率の高さが課題となり、外国人労働者は重要な戦力になっています。建設業でも技能者不足が慢性化し、外国人労働力への依存度が増しています。製造業では地方中小企業の人材確保が困難で、特定技能による雇用が定着しています。
一方で、技能実習制度は「国際貢献」を建前としながら、実態は労働力確保に偏っているとの批判もあります。特定技能への移行の増加は、制度の実情を映す数字といえます。






分野別にみる特定技能移行の特徴
分野別でみると、介護・建設・製造・農業の4分野で特に移行が進んでいます。介護では高齢化に伴う人材不足が深刻で、外国人材が現場の支えとなっています。建設分野は東京五輪以降の大型プロジェクトやインフラ更新需要により、常に労働力不足が続いています。
製造業では地方中小企業の人材確保が困難で、特定技能による雇用が定着しつつあります。農業分野では季節性労働の需要が高く、特定技能への移行は収穫期の安定に直結しています。
ただし、分野ごとに課題も異なります。介護では日本語力不足による意思疎通の難しさ、建設では安全教育や賃金格差、農業では居住環境や生活インフラの未整備などが指摘されています。






SNSでは賛否両論の反応
X(旧Twitter)では今回の統計公表後、関連投稿が2日間で約3万件に達しました。賛成派は「現場が助かる」「介護崩壊を防ぐために必要」と強調。一方で反対派は「安易な外国人依存は治安や社会保障に影響する」「日本人の賃金が下がる」と懸念を表明しました。
YouTubeやニュースサイトのコメント欄では「制度を整備して受け入れるべき」という中立的意見も見られ、社会の分断を映しています。






国際比較からみる日本の特定技能制度
外国人労働者受け入れは世界各国で進められています。ドイツでは「ブルーカード制度」により高度人材を積極的に呼び込み、移民の長期定住を前提とした政策を展開しています。韓国は「雇用許可制」により、業種ごとに外国人労働者の受け入れ枠を明確化し、企業の直接雇用を認めています。台湾では「移工政策」により介護や製造で大量の外国人を受け入れ、生活支援制度を同時に整備しています。
これらと比べると、日本の特定技能制度は「短期的な人手不足解消」に重きが置かれており、長期的な定住や社会統合の仕組みは弱いと指摘されています。そのため、制度が定着する一方で、外国人と日本社会の間に溝が生じるリスクも抱えています。






国益的視点と今後の課題
技能実習から特定技能への移行が最多となったことは、日本が本格的に外国人労働力に依存し始めていることを示しています。利点は人手不足解消ですが、課題は次の点にあります。
・教育や日本語支援が追いつかず、社会統合が遅れる可能性
・賃金水準が下がり、国内労働市場の健全性が損なわれる懸念
・外国人労働者の定住化による医療・教育・福祉への影響
国としては、労働力確保と社会安定を両立させる制度設計が求められます。2027年導入予定の「技能習得型雇用制度」との接続も重要な論点となるでしょう。






まとめ
技能実習から特定技能への移行が最多となり、日本社会における外国人依存が鮮明になりました。人手不足解消という利点と、治安・社会保障への負担という課題を併せ持つ中で、制度の持続性が問われています。今後は統計の透明性を高めつつ、国民的議論を経て制度設計を進める必要があります。
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