ニュース引用
フィリピン出身のトランスジェンダー女性「Aikoさん」が、難民認定を求めて国を相手取り訴訟を起こし、東京地裁で7月28日に第1回弁論期日が開かれた。彼女は「帰国すれば差別や暴力で命の危険がある」と訴え、難民不認定処分の取り消しを求めている。
出典:弁護士JP
要約
2022年に日本で難民申請を行ったAikoさんは、母国フィリピンでの深刻なトランスジェンダー差別や暴力の危険を理由に、日本での保護を求めている。東京地裁では国側が「プライドパレードの開催や議員の存在を理由に迫害はない」と主張した一方、弁護団は「日常的な差別や殺害事件は多数存在する」と反論。裁判は日本の難民認定制度の限界を問う試金石となる。
解説・考察
フィリピンはLGBTQ+コミュニティが存在感を示す一方、偏見や暴力も根強い。Aikoさんは幼少期から親族や地域での差別にさらされ、性的少数者を狙った痴漢や人身売買の被害に直面したと訴える。弁護団は、2007年以降に少なくとも79人のトランス女性が殺害された事実を提示し、「特定の社会的集団に属することを理由とした迫害」に該当すると主張した。
一方で、国は「社会的に可視化されている存在」を理由に迫害の深刻性を否定。しかし、専門家は「むしろ可視化は差別や暴力の温床にもなり得る」と指摘している。難民認定における「信憑性評価」と「客観的リスク評価」の基準が、日本と国際基準でどこまで乖離しているのかが焦点だ。
統計・データ比較
法務省の統計によると、2024年に日本で難民申請を行ったのは1万4千人超。そのうち認定されたのはわずか303人、認定率は約0.5%にとどまる。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が示す世界平均認定率30%台と比較すると、日本の水準は極端に低い。また、性的指向や性自認に基づく申請は統計上わずかであり、認定事例はさらに限られる。
欧州ではLGBTQ難民の保護が進んでおり、例えばドイツやオランダでは性的少数者を迫害対象と認定した判例が積み重なっている。Aikoさんの訴訟は、日本がこうした国際的潮流に歩調を合わせるかどうかを占う試金石になるだろう。
関係者・地域の反応
支援団体や市民グループは「日本における人権保障の基盤を問う裁判だ」として支援を表明している。裁判期日には傍聴に多くの支援者が詰めかけ、横断幕を掲げて声をあげた。一方、地域住民の中には「制度の悪用を防ぐべきだ」との慎重論もあり、意見は割れている。
SNSでの反応
X(旧Twitter)上では、次のような声が見られた。
- 「迫害から逃れる人を守るのが日本の責務だ」(支援派)
- 「日本はただでさえ難民認定が厳しいのに、性的少数者ならなおさら保護すべき」(支援派)
- 「税金で裁判をするのは無駄。制度を悪用する事例では?」(批判派)
- 「フィリピンは安全だろう。むしろ日本に居座りたいだけでは」(批判派)
- 「統計で見れば日本の難民認定率は異常に低い。国際基準と乖離している」(中立派)
ヤフーコメントでの反応
ヤフーニュースのコメント欄では、支援の声も一部あるものの、批判的な意見が多く見られる。
- 「フィリピンの困った人たちの受け入れ窓口は日本ではない」
- 「自国の警察や司法を頼るべきだ」
- 「難民を名乗るのは他国に安易に依存する姿勢だ」
といった投稿が支持を集めており、日本社会に根強い“自己責任論”や“国内優先”の意識を反映しているといえる。
全国的傾向とデータ
日本の難民認定制度は長年「厳格さ」が特徴とされ、特に経済目的や偽装申請を排除する姿勢が強い。しかし、その一方で人権上の緊急性を持つケースも埋もれてしまう。2024年の法務省データでも、認定率は過去最低水準にあり、多様な背景を持つ申請者の権利保障が不十分との指摘は続いている。今回の訴訟は、日本社会が「迫害の定義」と「人権保障の線引き」をどこに置くかを問う大きな分岐点だ。
関連情報
カテゴリ:移民・在留制度/難民・庇護
タグ:Aiko, トランスジェンダー, 難民認定, フィリピン, 東京地裁, LGBTQ+, 在留資格, 迫害, UNHCR
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