ニュース引用
日本各地で、無許可で行われる「闇土葬」が問題化しています。火葬が主流の日本では、宗教上の理由で土葬を望む外国人遺族が正式な墓地を見つけられず、非公式な埋葬が行われるケースが報告されています。
出典:さがみ典礼コラム、KICKS BLOG
要約
火葬を基本とする日本において、宗教的理由から土葬を希望する外国人が増加。しかし土葬が可能な墓地は全国で十数カ所程度に限られ、結果として「闇土葬」と呼ばれる無許可埋葬が行われています。地域住民の反発、衛生上の懸念、法的な整備不足といった課題が顕在化しています。
解説・考察
日本の「墓地、埋葬等に関する法律」では土葬そのものは禁止されていませんが、墓地として許可を受けた敷地内でのみ認められます。ところが実際には火葬率が99.97%(2022年、厚生労働省)に達し、土葬を受け入れる墓地は全国でごくわずかです。
イスラム教やキリスト教の一部宗派では火葬を認めない伝統があり、在日外国人や技能実習生らの遺族が土葬を希望するケースがあります。しかし、墓地不足や行政の制度未整備により受け皿がなく、「闇土葬」が行われてしまう実態があります。
地域住民の反応
埼玉県本庄市の霊園では土葬区画を設けていますが、管理費未払い、言語的トラブル、無断埋葬といった問題が報告されています。住民からは「公衆衛生が心配」「地下水が汚染されるのでは」といった声が寄せられています。
大分県日出町で計画されたムスリム墓地は、近隣住民の反発により頓挫しました。宮城県でも同様の整備計画がありますが、SNS上では「理解はするが近所には欲しくない」といった意見が目立ちます。文化的多様性を尊重したいという立場と、地域の不安の間で摩擦が広がっているのが現状です。
全国的傾向とデータ
法務省の統計によれば、2024年末時点で在留外国人数は約322万人に達し、過去最多を更新しました。宗教的に土葬を望むイスラム教徒は推計23万人程度とされ、潜在的需要は小さくありません。
しかし日本全体で土葬を受け入れる墓地は十数カ所しか確認されておらず、外国人増加に制度が追いついていない現実があります。厚労省の調査でも、地方自治体の大多数は「土葬墓地の新設は予定していない」と回答しており、需要と供給のギャップが拡大しています。
海外事例との比較
諸外国では、移民の宗教的背景に対応するための制度が整備されています。例えばフランスでは、全国の公共墓地に「ムスリム区画」を設けることが可能で、イスラム教徒が宗教に則った埋葬を行える仕組みがあります。イギリスでも多文化社会に対応するため、各自治体がキリスト教・イスラム教・ヒンドゥー教など異なる埋葬形態を尊重する制度を導入しています。
一方で日本は、火葬一律の慣習と法律解釈に基づき「例外」を認めにくい構造を持っています。その結果、宗教的多様性への対応が後手に回り、闇土葬という違法状態を助長していると指摘されます。国際的に比較すると、日本の制度は移民社会化の進展に適応できていないことが明らかです。
イスラム協会・NPOのコメント
日本イスラム文化センターは「イスラム教徒にとって土葬は信仰の根幹に関わる行為であり、日本に住む信徒に対しても配慮が必要だ」と強調しています。さらに一部のNPO団体は、遺族が非公式に埋葬せざるを得ない現状を問題視し「制度が未整備であることが違法行為を誘発している」と指摘しました。
また、在日外国人支援を行う団体からは「土葬を希望する家族は必ずしも裕福ではなく、都市部で火葬や永代供養を選ぶ費用を負担できない場合もある」との声が上がっています。宗教と経済的負担の両面から、闇土葬問題が生じている実態が浮かび上がります。
自治体の具体的対応
一部自治体では試行的な対応も始まっています。宮城県内では、外国人住民の声を受けて「多文化共生のための墓地設計」を検討中。自治体が衛生基準を整備し、地域住民との意見交換会を開催しています。
また、埼玉県の一部霊園では行政と連携して「土葬マニュアル」を作成し、埋葬方法や衛生基準を外国語で説明する取り組みを進めています。こうした自治体レベルの対応は、全国的な制度改革の先駆けとなる可能性があります。
まとめと今後の課題
闇土葬問題は、単なる埋葬方法の違いにとどまらず、宗教の自由、地域住民の安心、公衆衛生、多文化共生といった幅広い課題を含んでいます。現状を放置すれば、法的トラブルや地域摩擦が増加する懸念があります。
解決には、①外国人コミュニティとの対話、②行政による受け入れ先の整備、③地域住民への説明と合意形成、④衛生基準の明確化が求められます。外国人受け入れを拡大する日本にとって、葬送制度の見直しは避けられない課題と言えるでしょう。
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カテゴリ:移民・在留制度
タグ:闇土葬, 外国人墓地, 埋葬制度, 多文化共生, 宗教と法律, 火葬率, 移民問題, イスラム協会, 自治体対応
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