ベトナム紙Tuổi Trẻ(トゥオイチェー)は2026年10月9日、在日ベトナム人が約60.9万人となり、外国人コミュニティーで2番目の規模になったと報じた。人口の増加と、日本で働く人材への関心を結びつけた記事だ。
数字の基になるのは、2025年10月1日時点の国勢調査である。報道された日と人口を数えた日を分け、総務省統計局の表で数値を確認する。
新人記者ナルカ


この記事のポイント
- Tuổi Trẻは、日本で暮らすベトナム人の規模拡大を見出しに掲げた。
- 国勢調査の表では、2020年から2025年にかけて約59%の増加を確認できる。
- 国勢調査と在留外国人統計は、時点も集計の仕組みも異なるため、同じ系列としてつなげない。
今回取り上げるベトナムの記事
| 媒体 | Tuổi Trẻ(ベトナム) |
|---|---|
| 掲載日時 | 2026年10月9日14:37 GMT+7/日本時間16:37 |
| 署名 | NGỌC ĐỨC |
| 記事の種類 | 日本の人口統計を紹介するニュース。本文でNikkei Asiaを参照 |
| 主な着眼点 | 自国出身者の日本での存在感と就労の広がり |
Tuổi Trẻは何を強調したか
同紙は、ベトナム人の人数と順位を冒頭に置き、5年間で59%増えたと紹介した。本文には、専門職に関する在留資格への言及もあり、人口変化を就労との関係から読ませる構成になっている。
編集部の分析では、自国出身者が日本社会でどの程度の規模を占めるようになったかを伝える点が特徴だ。ただし、本文がNikkei Asiaを参照していることも押さえたい。Tuổi Trẻが独自に人口を調査した記事として扱うのは適切ではない。
国勢調査の表で確認した数字
統計局の「令和7年国勢調査 人口等基本集計結果 結果の概要」表Ⅶ-1では、国籍がベトナムの人口について、次の値を確認できる。
| 項目 | 値 | 意味 |
|---|---|---|
| 2020年 | 383,138人 | 比較の基となる前回調査の人口 |
| 2025年 | 609,238人 | 今回取り上げる調査の人口 |
| 5年間の増加数 | 226,100人 | 上記2時点の差を当サイトで計算 |
| 増加率 | 約59.0% | 増加数÷2020年の値×100で算出 |
出典:総務省統計局「結果の概要」表Ⅶ-1(冊子48ページ)。2020年と2025年はいずれも「不詳補完値」である。未回答などの不詳を統計的に補う処理を含むため、回答が得られた人数だけの単純な合計とは区別する。
同表では、中国が923,013人、ベトナムがこれに次ぐ規模で、「韓国、朝鮮」は398,495人となっている。日本側の比較区分は「韓国、朝鮮」であり、本稿でも公式の区分に合わせる。
調査日、公表日、報道日を分ける
国勢調査は2025年10月1日午前零時現在で実施された。結果概要の公表は2026年9月29日、今回のベトナム紙の掲載は同年10月9日である。ニュースになった時点と、人口が示す時点には約1年の差がある。
国勢調査が捉えるのは、国内に常住する人の人口だ。調査概要では、住居に3か月以上住んでいるか、住むことになっている人などを対象と説明している。また、国籍による集計なので、ベトナムにルーツのある人全体の人数を表すわけではない。
「68.1万人」との違いは、統計と時点にある
比較例として、入管庁の2025年末の在留外国人統計では、ベトナムは681,100人と公表されている。今回の国勢調査よりも後の時点で、集計の仕組みも異なる資料である。
| 統計 | 基準日 | 主な対象・作り方 |
|---|---|---|
| 今回の国勢調査 | 2025年10月1日 | 常住人口を調査。ここで使った国籍別の値は不詳補完を含む。 |
| 比較例の在留外国人統計 | 2025年末 | 入管庁が中長期在留者と特別永住者を集計した在留外国人数。 |
参照:入管庁「令和7年末現在における在留外国人数について」、統計に関するQ&A。ここで示した年末値は比較のための例であり、記事公開時点の最新人口という意味ではない。
二つの値の差を、そのまま10月から12月までに増えた人数と読むことはできない。増減を調べる場合は、同じ統計の、同じ定義による時系列を使う必要がある。
人口増加から、日本の生活に関わる何を調べるか
人口の増加は、言語対応、教育、住居、相談窓口などを考える出発点になる。ただし、全国の人数だけでは、特定の地域でどのような支援が必要かまでは分からない。地域や年齢、世帯構成を分けた資料を重ねて見ることが重要だ。
また、人口の表は就労者数を数えた表ではない。日本の産業を支える人材としての役割を検証するには、在留資格や就業状態、職種に関する統計を別に確認したい。5年間の人口の差も、新たに入国した人の総数を示す数字ではない。
編集部まとめ
Tuổi Trẻの報道は、在日ベトナム人の規模拡大を伝える題材になっている。国勢調査の数値と増加率は確認できるが、記事を紹介する際には、人口の基準日と統計の区分を併せて示すことが欠かせない。
JP News Focusは、人数の大きさに加え、地域生活や雇用にどのような変化があるかを資料に沿って追う。受け入れ企業、自治体、本人が担う役割を具体的に考えるためにも、比較する数字の条件をそろえる姿勢を重視したい。
出典
海外の原文記事
- Tuổi Trẻ「Người Việt trở thành cộng đồng nước ngoài đông thứ hai tại Nhật Bản」(2026年10月9日14:37 GMT+7(日本時間16:37)/NGỌC ĐỨC。本文でNikkei Asiaを参照)
日本側の資料
- 総務省統計局「令和7年国勢調査 人口等基本集計結果 結果の概要」(2026年9月29日。表Ⅶ-1=冊子48ページ/PDF50ページ目。調査の時期・対象=冊子52ページ。不詳補完値の説明=冊子54ページ)
- 出入国在留管理庁「令和7年末現在における在留外国人数について」(2025年末時点の比較例。記事公開時点の最新人口としては扱わない)
- 出入国在留管理庁「よくある質問(Q&A)」(在留外国人数の対象と集計時点の説明)
情報確認日:2026年10月16日(日本時間)。翻訳・要約、計算および報じ方の分析はJP News Focusによる。
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