公開日:2025年9月15日 最終更新日:2025年9月15日
2025年8月、東京都がエジプト・日本経済委員会と結んだMOUをめぐり「移民受け入れの突破口」との声が広がりました。一方、エジプト労働省は数か月前に「労働力移動分野で協力を進める」と発表しており、日本外務省は未公表のまま。結果的に小池百合子知事だけが矢面に立つ構図となりました。本記事では一次資料であるMOU全文を踏まえ、国と都の広報の非対称性と政策的影響を整理します。
おすすめ記事:外国人受け入れ総まとめ2025 各自治体・国際MOUの動きと課題







背景
2025年8月19日、東京都産業労働局とエジプト・日本経済委員会(EJBC)が「エジプト人労働者の日本での雇用に有益な研修及び情報提供に関する協力合意書」を締結しました。一次資料の合意書には、東京都の役割として「研修プログラム開発への助言」とともに「エジプト人労働者が日本での仕事を確保するための情報提供」が明記されています。つまり、研修協力だけでなく雇用に直結し得る内容が含まれています。
現状データ
この合意書は、両者の法的拘束力はなく、プロジェクトごとに費用負担や契約を別途決めると規定されています(第4条)。期間は署名日から3年間とされ、更新も可能です(第5条)。東京都産業労働局 2025 も「移民受け入れの合意ではない」と説明していますが、一次資料には「雇用」や「仕事確保」という表現があるため、誤解や議論を招きました。
一方、エジプト労働省は2025年2月16日に駐エジプト日本大使と会談し「研修及び労働力移動の分野で協力を活性化する」と公式発表しています。エジプト労働省 2025 によれば、ムハンマド労働相は「労働者を供給する準備がある」と述べ、日本への送り出し意欲を強調しました。
地域・生活への影響
国内では「東京都が移民受け入れを進めた突破口」とSNSで拡散され、小池百合子知事が矢面に立ちました。しかし実態は、エジプト側が労働力移動を前提に発表していた一方、日本の外務省が同会合を公表していなかったため、東京都MOUだけが突出して見えた構図です。この「広報の非対称性」が誤解を強めたと言えます。
関連記事:東京都「移民ではない」と強調 エジプト合意書巡り#TOKYO_CORRECT発信
賛否・中立の三点整理
賛成意見
深刻な人手不足を補う国際協力の一環として前向きに評価できる。特に建設・介護などで人材供給の可能性がある(経済界の見解)。
反対意見
国会・都議会の議論を経ずに自治体が外国人労働者協定を進めるのは危険。情報公開が遅れれば「水面下で移民合意が進んでいる」との不信を招く(市民団体・議員の批判)。
中立的立場
今回のMOUは法的拘束力がなく、即座に制度改正や大量受入れを意味しない。ただし一次資料に「雇用」文言がある以上、透明性を高めて誤解を防ぐ必要がある(研究者コメント)。









まとめ/今後の見通し
エジプト側は労働者移動の用意を公言し、日本大使との協力を発表しました。しかし日本政府は未公表で、東京都MOUだけが表面化した結果、小池都知事に批判が集中しました。今後は国と自治体の外交・労働協力の広報を統一し、国会や都議会で議事録公開や検証を進める必要があります。透明性の欠如は社会不信を招き、日本の移民政策の持続性にも影響しかねません。
コメント