公開日:2025年9月12日 最終更新日:2025年9月12日
東京都が新たに導入した「#TOKYO_CORRECT」発信が注目を集めています。エジプトとの就労協力合意書を巡り「移民受け入れではないか」と批判が広がる中、都は「移民の受け入れ促進や特別な査証発給は想定していない」と強調。しかし、長期滞在が事実上の移民になるのではという懸念も根強く、用語での弁明だけでは議論がかみ合わない状況です。今回の動きは、外国人政策と社会的受容のギャップを浮き彫りにしています。










要旨
東京都は2025年9月12日、SNSで誤情報訂正用のハッシュタグ「#TOKYO_CORRECT」を用いた広報を開始しました。エジプト経済界との間で結ばれた「外国人労働者就労協力の合意書」を巡り、一部で「移民政策だ」との批判が広がったため、「移民の受け入れ促進や特別な査証の発給は想定していない」と発信しました。もっとも、これまでの長期滞在者が事実上の移民となっている現実から、言葉の否定では議論がすれ違う懸念が残ります。
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背景
東京都とエジプト・日本経済委員会は2025年8月に「就労協力に関する合意書」を締結しました。都はこれを「研修や情報提供の枠組み」と説明していますが、SNS上では「移民受け入れではないか」との批判が拡散しました。FAQでは「特別な査証発給は伴わない」と強調されています(東京都産業労働局・FAQ 2025年)。
背景補足:合意書の具体的な内容
今回の東京都とエジプト・日本経済委員会との合意書は、単なる人材受け入れではなく「研修と情報提供」を軸にしています。具体的には、エジプト国内で日本での雇用に必要な基準や技能について研修を行い、東京都がそれに助言・情報提供を行う仕組みです。つまり、就労者を直接送り込むのではなく、事前段階での教育や準備をサポートする枠組みとされています。
東京都はFAQで「本合意書はビザの新設や移民の促進を目的とするものではなく、あくまで雇用に必要な情報の提供と研修支援である」と説明しました。しかし一方で、研修を受けた人材がその後どのような経路で来日し、どの在留資格で就労するのかについては明確な説明がなく、批判や誤解を生む余地が残っています。
また、東京都が外国人労働政策に関与するのは珍しいことではありません。過去にはベトナムやフィリピンなどアジア諸国との人材交流事業に関与した事例もあり、今回のエジプトとの合意はその延長線上と見ることもできます。ただし、これまでの協力先がアジア諸国中心だったのに対し、北アフリカ地域との枠組みは新規性が高く、選定理由や戦略的意図への説明不足が疑問視されています。
このように、合意書は形式上「移民政策」とは区別されていますが、外国人労働力の受け入れに直結する可能性をはらんでいるため、社会的な関心が高まっているのです。
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賛否・中立の三点整理
賛成【東京都/公式立場】
「移民の受け入れ促進や特別な査証を発給することは想定していません」
出典:産経ニュース(2025年9月12日)
反対【批判の声】
「これまで、外国人労働者の長期滞在が事実上の移民になっている」
出典:産経ニュース(2025年9月12日)
中立【記事内論評】
「『移民ではない』と用語で弁明しても、議論がかみ合わない恐れがある」
出典:産経ニュース(2025年9月12日)












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現状データ:在留外国人と東京都の外国人人口
全国の在留外国人(法務省統計)
法務省出入国在留管理庁の発表によれば、令和6年末(2024年12月末)の中長期在留者数は349万4,954人、特別永住者は27万4,023人で、合わせて376万8,977人となりました。前年同期から増加傾向が続いており、日本国内で生活基盤を築く外国人の数は着実に拡大しています。
法務省出入国在留管理庁「令和6年末現在における在留外国人数」(2025年)
東京都の外国人人口(総務省/東京都統計)
東京都の外国人人口は2013年時点で約38万人でしたが、その後増加傾向を示し、2022年に一時的に51万7,881人まで落ち込みました。しかしその後2年で急増し、2024年には64万7,416人に達しました。首都圏における外国人比率の上昇は、地域社会への影響や政策的課題を浮き彫りにしています。
東京都統計「外国人人口統計」 / PRTIMES「東京都の外国人人口データ」(2024年)
これらのデータから分かるのは、東京都だけでなく日本全体で外国人の長期滞在者が増加傾向にあることです。今回の「移民ではない」とする都の発信は、制度上の位置づけを強調する意図がありますが、統計的には外国人の生活基盤が拡大している現実とのギャップが存在していると言えます。
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まとめ/今後の見通し
東京都の「#TOKYO_CORRECT」発信は、政策の誤解を防ぐための新たな試みです。しかし、制度の名称や用語を否定するだけでは、社会の実態に即した議論につながらない恐れがあります。今後は、対象国の選定基準や受け入れ規模、地域への影響を公開するなど、透明性を高めることが課題となるでしょう。さらに、合意書の実施過程や定住化の影響を追跡し、情報が入り次第、詳しく整理する予定です。
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