公開日:2025-10-02 / 最終更新日:2025-10-02。
政府と一部野党は、外国人による土地取得に関し、取得者の「国籍届け出義務化」を柱とする法案を検討している。背景には、国際情勢の緊張や外国資本による土地取得への警戒感がある。現行制度との違い、国益的な狙い、懸念される課題を整理し、今後の展望を提示する。




背景
日本では、外国人も日本人と同様に土地を自由に購入できる。明治期以来の「外国人土地法」は事実上使われず、規制は空白状態にあった。近年、中国や韓国など海外資本が北海道の水源地や自衛隊施設周辺の土地を取得した事例が報じられ、国会でも繰り返し問題視されてきた。
2022年には「重要土地等調査法(重要土地利用規制法)」が施行され、防衛施設・国境離島・原発周辺などで土地所有者・利用者の届け出・調査制度が導入された。内閣府「重要土地等調査法 概要」
しかし、この法律はあくまで限定地域のみを対象とし、全国的な所有者情報の把握には至っていない。こうした課題を受け、国会に再提出されたのが「外国人土地取得規制法案」である。衆議院「外国人土地取得規制法案」案文
現状データ
現行制度と新法案の主なポイントを整理する。
・重要土地利用規制法(2022年施行)=全国で約600区域を指定、防衛施設や離島を中心に利用状況を調査・報告
・外国人土地取得規制法案(2024年再提出)=土地取得時に国籍・住所の届け出義務化、未報告に過料・調査命令を付与
・法務省は2024年4月より「外国人名義の不動産登記にローマ字氏名併記」を義務化済み 法務省 民事局「不動産登記規則改正」
・土地取得に占める外国人の割合=正確な全国統計は存在しないが、国交省調査(2023年)によれば、北海道の一部地域で外国人・外国法人の取得比率が5〜7%に達する地点もある。
地域・生活への影響
制度が導入されれば、以下の影響が見込まれる。
・自治体:国籍情報の把握・管理体制を整備する必要、人的負担・システム改修費用が増大
・不動産業界:契約書への国籍記載義務、顧客への説明負担、違反時の責任範囲拡大
・外国人購入者:プライバシー情報の提出負担、心理的ハードルによる土地取得意欲の低下
・住民:安全保障・水資源管理に安心感を得る一方、国籍による不安視・偏見助長のリスク
・市場:外国資本流入の抑制により、観光地・地方都市の土地価格に調整圧力がかかる可能性
編集部クロ助とナルカの視点から









編集部まとめ/今後の見通し
外国人による土地取得の透明化は、国家安全保障・水資源保全の観点で重要性が高まっている。一方、届け出義務は差別的運用やプライバシー侵害を招く懸念もあり、慎重な制度設計が求められる。
今後、政府・国会で法案が審議される際には「対象を外国人限定とするか、全所有者に拡大するか」「罰則の実効性をどう担保するか」「情報管理・住民理解をどう進めるか」が争点となる。制度の成立可否と運用内容次第で、不動産市場や地域社会への影響は大きく変わるだろう。JP News Focus 編集部としては、公式法案公表後に条文レベルでの解説記事を追補予定である。
FAQ
FAQ
Q1:国籍届け出義務は外国人だけに適用されるの?
A1:現行の議論では外国人土地取得者を対象に想定。ただし憲法の平等原則に配慮し、最終的には日本人所有者を含む「全ての土地取得者」に適用する案に修正される可能性がある。
Q2:届け出を怠った場合の罰則はどうなる?
A2:法案検討段階では「過料(数十万円規模)」「調査命令」などが議論されている。強制収用や売買禁止までは現時点で検討対象外とされる。
Q3:個人情報の取り扱いは安全なの?
A3:届け出情報は法務局や自治体で管理予定とされるが、具体的な運用方法や公開範囲は未定。個人情報保護と安全保障の両立が大きな課題となる。
参考リンク
内閣府「重要土地等調査法 概要」2022 | 衆議院「外国人土地取得規制法案」2024 | 法務省「不動産登記規則改正」2024 | 国民民主党プレスリリース 2024
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