2026年の福岡市長選で、外国人住民をめぐる政策が争点の一つになりつつある。福岡市選挙管理委員会によると、選挙は11月1日告示、15日投票。現職の高島宗一郎市長は立候補しない。9月29日までに記者会見で出馬を表明した人は12人と報じられ、ほかに本人の発信で出馬を表明している人もいる。ただし、告示前の現段階で「候補者が何人」と確定させることはできない。
福岡市の資料によれば、2026年3月末の在住外国人は約5万8,000人。日本語教育や生活ルールの周知、地域の相談体制をどう整えるかは、次の市長が向き合う現実の行政課題だ。この記事では、出馬を表明した人の発信を比べ、何が提案され、何がまだ明らかになっていないのかを整理する。調査基準日は9月30日。
新人記者ナルカ


外国人住民をめぐる主な発信
| 氏名 | 今回確認した主な内容 | 確認したい点 |
|---|---|---|
| 森健太郎氏 | 「移民拡大ゼロ」を掲げ、子育て支援の対象、外国人への生活保護、国民健康保険の運用を論点にする | 市の権限で変えられる事業と、国の制度改正を求める事項の区別 |
| 吉富景子氏 | 参政党との政策協定で、生活上の約束事の周知、地域への説明、受け入れの実態把握を掲げる | 説明の相手、公開する情報、苦情への対応手順 |
| 永澤幹太氏 | 日本語と生活ルールを学ぶ講座、外国人住民と地域住民が話し合う場などを提案 | 既存施策との違い、実施場所、費用と担い手 |
| 西脇ひろき氏 | 多言語の情報提供と、市民参加による見守り・地域交流を提案 | 安全管理、活動の権限、誤認や偏見を防ぐ仕組み |
| 調崇史氏 | 2018年、介護分野で外国人材の活用に言及 | 過去の発言を今回の市長選でどう位置づけるか |
この表は、候補予定者の政策全体を評価したものではない。外国人住民に関する公開資料で確認できた部分だけを取り出した。とりわけ調氏の発言は2018年の議員活動であり、今回の公約ではない。
森氏「移民拡大ゼロ」――市長は何を止められるのか
日本保守党公認の森健太郎氏は、本人の公約サイトで「移民拡大ゼロ」を掲げる。市の子育て支援策の一部を日本国籍者に限って充実させる考えや、外国人への生活保護を停止し、国保への「タダ乗り」をなくすという主張も示した。一方、ルールを守って暮らす外国人住民を追い出す考えはないとも説明している。
ここで分けたいのは、外国人の在留資格や受け入れ人数を決める国の制度と、市が予算を組んで行う住民サービスだ。生活保護については、外国人に対する措置を定めた国の通知がある。福岡市の国保案内も、一定の条件を満たす外国籍住民には加入義務があると明記する。「停止」や「タダ乗り対策」は強い言葉だけに、対象とする制度、問題を示す市内のデータ、実現のために必要な手続きを具体的に聞く必要がある。「外国人加入者は皆、保険料を払っていない」という意味に読み替えてはならない。
吉富氏――参政党との協定で「地域への説明」を重視
吉富景子氏は参政党の推薦を受け、無所属で出馬する予定だ。党と交わした政策協定には、将来の「外国人住民10万人時代」を見据え、生活上の約束事を見えるようにすること、地域に事前説明を行うこと、問題が起きた際に自治体と警察が連携すること、受け入れの実態を把握・公表することが盛り込まれている。
「10万人」は現在の人数ではない。政策として実効性を判断するには、誰がどの地域に何を説明するのか、学校や雇用主にも役割を求めるのか、公開情報から個人を特定させない仕組みをどう作るのかが重要になる。参政党の国政向けの主張すべてを、吉富氏自身の市長選公約として扱うことも避けたい。
永澤氏・西脇氏――暮らしの現場をどう変えるか
永澤幹太氏は本人サイトで、外国人住民を排除せず、受け入れを無制限に進めることもしないと説明する。日本語とごみ出し、防災、学校、医療などの生活ルールを学ぶ市独自の講座を、夜間や週末にも開く案を示した。住民同士が話す場を設け、相談や苦情を地域ごとに把握する考えも記している。なお、本人は出馬に向けた資金の確保を条件として示しており、立候補届出を済ませた段階ではない。
西脇ひろき氏は、本人の政策記事で多言語による説明と市民参加の見守り活動を提案した。「福岡マッチョ警備隊」は構想を広めるための仮の呼び名で、警察の権限を持つ隊を作るという説明ではない。日本人と外国人がともに参加し、行政は研修や保険、警察との連携を支えるという構想だ。防犯活動の対象を国籍で決めない方針は明確だが、現場での声かけや通報が行き過ぎないよう、運用上の基準は欠かせない。
調氏の介護人材への言及は、今回の公約とは別に読む
調崇史氏は2018年の本人ブログで、介護福祉士の養成機関が外国人留学生を受け入れやすい環境を市が整えるよう求めた。移民政策には否定的な見方を持ちながらも、人手不足が深刻な分野では外国人材の活用を検討すべきだという趣旨だった。
ただし、これは8年前の発言だ。市長選に向けて外国人材、留学生、地域の受け入れをどう考えるかは、最新の公約や本人の回答で改めて確かめる必要がある。
ほかの出馬表明者は「政策なし」と断定できない
テレビ西日本が会見済みとして挙げた12人のうち、上記の森氏、吉富氏、永澤氏、調氏以外は、渡辺久也氏、荒牧明楽氏、新村優氏、阿部秀樹氏、井上潔氏、佐々木彩乃氏、神野元基氏、片山純子氏の8人だ。今回確認した会見報道や公開資料からは、5人と同じ粒度で比較できる外国人住民政策を確認できなかった。
これは政策が存在しないという意味ではない。各氏の公約の追加発表や、告示後の選挙公報を待って比較を更新すべきだ。西脇氏はこの「会見済み12人」の報道には含まれないが、本人は出馬への挑戦を表明している。
福岡市には既に相談窓口がある――選ぶ基準は「何を改善するか」
福岡市は外国人総合相談支援センターを設け、在留手続き、雇用、医療、子育てなどの相談を多言語で受け付けている。市は地域の生活ルールやマナーの周知、相互理解を進める事業も掲げる。候補予定者が「講座を作る」「ルールを伝える」と述べたとき、それがゼロからの新事業なのか、今ある仕組みを届きやすくする提案なのかを見比べたい。
例えば、ごみ出しの問題なら、住民への説明だけでなく、入居時に伝える不動産管理者や外国人材を雇う企業、留学生を受け入れる学校の役割も問える。困りごとを件数で把握し、改善を測る際は、相談しやすさが上がって一時的に件数が増える場合もある。数字の増減だけで住民を責めない評価方法が必要だ。
クロ助とナルカの視点












編集部まとめ
外国人住民をめぐる不安や地域の課題は、選挙で正面から議論してよい。ただ、強い言葉の印象だけで政策を選べば、誰が何を実行できるのかを見失う。福岡市長選で問いたいのは、市内のどの課題を根拠に挙げ、現行制度の何を変え、効果をどう検証するのかという点だ。
生活ルールを守ること、必要な支援を届かせること、制度の不正があれば事実に基づいて是正することは、同時に追求できる。候補予定者が今後公約を更新するたび、市の権限と予算、既存施策との差を照らして確かめていきたい。
出典
- 福岡市選挙管理委員会「福岡市長選挙の選挙期日等を決定しました」
- テレビ西日本/FNNプライムオンライン「福岡市長選に新たに医師(37)が立候補を表明」2026年9月29日
- 森けんたろう氏「公約」
- 参政党「福岡市長選挙における政策協定締結及び推薦決定について」
- 吉富景子氏・参政党「政策協定書」
- ながさわかんた氏「外国人住民と、どう暮らすか」
- 西脇ひろき氏「外国人・移民・治安問題への政策」
- 調崇史氏「介護人材不足と外国人材の活用」
- 福岡市「令和8年度地域の多文化共生推進事業」
- 福岡市「外国人総合相談支援センター」
- 福岡市「国民健康保険にはこんな人が加入します」
- 厚生労働省「生活に困窮する外国人に対する生活保護の措置について」













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