2025年10月から「外国運転免許の切替(外免切替)」が再び厳格化された。短期滞在者でも免許が取れると誤解されがちな制度だが、実際には住民登録と在留資格の確認が義務化され、国内法整備が進んでいる。一方、事故後に帰国してしまう「国外逃亡リスク」や、中国系ライドシェア問題など、制度運用の課題も残る。
制度の概要:「外免切替」とは
外国で取得した運転免許を、日本の免許に切り替える制度を「外免切替」という。これは日本独自の優遇ではなく、1949年のジュネーブ条約や1968年のウィーン条約に基づく国際相互承認制度だ。各国の免許を相互に認めることで、短期的な滞在や留学・転勤者の交通利便を保障する目的がある。
誤解されがちな点:「住所なしで取得できる」は誤り
一部SNSでは「ホテル住所でも外国人は免許を取れる」といった主張が拡散しているが、これは誤りである。外免切替も新規取得も、いずれも日本国内に住民票の登録があることが条件であり、短期滞在ビザでは対象外だ。
外国人が免許を申請する際には、以下が必要になる:
- 日本に住所を有すること(=住民票登録)
- 3カ月を超える在留資格(就労・留学など)
- 外国免許証とその日本語訳(JAFまたは大使館発行)
① 「住所」とは“生活の本拠”である
日本の法律上、「住所」=生活の本拠(民法第22条)を指します。
つまり、
- 日常的に生活している場所
- 継続的に寝起きしている場所
- 生活の中心にしている拠点
であることが前提です。
ホテルは通常、一時的な宿泊施設であり、「生活の本拠」とは見なされません。
したがって、ホテルを住所として住民票を登録するのは例外的な状況を除き不可です。
② 住民登録が可能なのは「長期滞在・実際に居住している場合のみ」
ただし、特殊なケースとして、
- 長期滞在型ホテル(マンスリーマンション・レジデンス型)で、
- 実際に数カ月以上、継続して生活している
場合には、自治体が「生活実態がある」と判断し、住民票を認めることもあります。
たとえば:
- ウィークリーマンションやレジデンス型ホテルで郵便受け・電気契約・生活設備があり、
- 実際に寝泊まり・生活している
と証明できれば、例外的に認められることがあります。
ただしこれは自治体ごとの判断で、短期滞在(数日〜数週間)では認められません。
③ 外国人の免許取得にも「住所(住民票)」が必須
運転免許センターで申請するとき、
「住民基本台帳に記載された住所」を確認されます。
住民票がなければ、外国人も免許申請はできません。
つまり、
- 在留カード
- 住民票(住居が記載されたもの)
の両方がそろって初めて、「日本に住所を有する」として扱われます。
2025年10月の改定内容:「緩和」から「厳格化」へ
2023年以降、一部の自治体で在留資格の確認が不十分なケースがあり、短期滞在者にも免許を交付してしまった事例が指摘されていた。このため、政府は2025年10月1日施行の法改正で運用を是正し、外免切替に際して住民登録・在留資格確認の徹底を義務づけた。
この改正により、「短期滞在者が免許を取得できる」状態は原則として排除され、制度上の“緩み”は修正された。ただし、2023~2025年の間に発行された免許は有効期間が残るため、最大で2028年まで効力を持つ免許も存在する。
課題:国外逃亡とライドシェア問題
一方で、外国人ドライバーによる交通事故や無免許運転、ライドシェアをめぐる問題も後を絶たない。特に重大事故を起こした後に帰国してしまうケースでは、犯罪人引渡条約の未締結国(例:ブラジル、中国など)とは刑事手続が途絶し、結果的に「逃げ得」状態となる場合がある。
また、中国人観光客向けの違法ライドシェアは、道路運送法に反する「白タク行為」として摘発対象である。料金決済がWeChatなど海外アプリで完結するため、資金の流れが日本の監督下にない点も課題視されている。
専門家の見方と今後の方向性
交通法制の専門家は「運転免許制度そのものよりも、国際的な刑事手続と在留管理の連携が遅れている」と指摘する。制度を厳格化しても、国外逃亡後の司法対応が確立されなければ、再発防止にはつながりにくい。
政府は今後、犯罪人引渡条約の拡充と、在留管理情報の共有システム強化を図る方針だ。さらに、観光客の増加を見据えた多言語交通教育の整備も求められている。
クロ助とナルカの視点
新人記者ナルカ








編集部まとめ
- 外免切替の「住所なし取得」は制度上誤り。2025年改定で確認手続が明文化。
- 国外逃亡問題は条約・司法協力の課題であり、運転免許制度の不備とは別問題。
- 外国人運転者の急増に伴い、監督・教育・情報共有のバランスが今後の焦点となる。











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